第十六話 温泉絶景なのです!

「いやぁー……凄かったのです」


「じゃのぅ……元の世界でも色々と凄まじい景色は見てきたが、全然引けをとらない景色ばかりじゃったのぉ」


「あんな景色、そうそうない」


「ふふふっ見応えあったでしょう?別府地獄めぐり」


 湯布院を楽しんだ翌日、大分にも空間の歪みは確認できず、今日は楽しもうと意気込んでいた四人は地獄めぐりを終え、感想を語り合いながら満足気に別府の街を歩いていた。


「あの血の池地獄、真っ赤な温泉が凄かった」


「妾はやっぱり、あのドロドロのお湯からボコボコ温泉が湧いておった鬼石坊主とかいう地獄が印象に強く残ったのぅ」


「アタシは海地獄っていうあの綺麗で大きな温泉が凄かったのですー」


「皆見事にバラけたねぇ。私はやっぱり鬼山地獄かなぁ」


「「「あれは別枠」」」


「でもお腹減ったのです」


「朝からあっちこっち動き回ったからのぉ。水無月や、ここらにいい店なんかはないのか?」


「ここら辺ならー……あっ!この辺にちょうどいいお店があったはず!確かとり天が有名なお店だから、大分の名物も味わえるよ!」


「おぉ、とり天。名物っていってたやつ」


「わぁ!楽しみなのです!」


「天ぷらの衣のサクサク具合、あれ好きなんじゃよなぁ」


「いいよねぇ天ぷら。唐揚げとかの揚げ物のガッツリ感とはまた違う衣のサクサク具合がまたねーっと、着いた着いた。ここだよー」


 お腹が減ったと言う3人を引き連れて水無月が店へと入り注文をしてしばらく待っていると、四人の前にはお皿の上に沢山盛られたとり天が目を引く美味しそうな定食が並べられる。


「これは美味しそうなのです!」


「思ってたよりも結構盛ってあるのぅ!これは天ぷらでも満足出来そうじゃ!」


「衣サクサク、凄く美味しそう」


「でしょー?さっ、冷える前に早く食べちゃお!」


「「「いただきまーす!」」」


「んん!衣サクサクふわふわ……!」


「はふはふ……!あっついのぉ!でも肉がふっくら柔らかくて美味い!」


「しかも下味がしっかりついててすっごく美味しいのです!これは再現したくなる味なのです〜♪」


「下味が充分着いてるからそのままでも美味しいんだけど、何個か食べてから酢醤油とかポン酢に付けるとすっごく美味しいんだよー!」


 こうして、四人は大分名物のとり天と──────


「お待たせしましたー。地獄蒸しプリンになりますー」


「「「「まってました」!」」」


 デザートの蒸しプリンを堪能したのだった。


 ーーーーーーーーーーーー


「「「おぉー」」」


「でっかいのぉ」


「でっかいのです……」


「でっかい」


「ふふっ♪でっかいでしょ?別府タワー」


 夕焼けをバックにネオンで輝く巨大なユウヒビールと大きな展望台を途中に戴く別府タワーを前に、ポカーンと圧巻されている三人を見て水無月は面白そうにクスクスと笑いながらそう言う。


「でも凄いのぉぅ……こんな大きな建物があるとは」


「まぁこの別府タワーはタワー六兄弟って言われてる日本でも有数の大きなタワーの一つのだからね」


「六兄弟……って事は他にもこれくらい高いタワーがまだあるのですか?!」


「そうだよー。札幌東京大阪……他にも後二箇所、それにその六兄弟を大きく上回る魔王みたいなのもあるよー?」


「それは楽しみ。バベル見てみたかった」


「バベルじゃあないけど……ってバベルってあのバベルの塔?えっ、あれ実在したの?」


「所で水無月や、閉店と書いてあったがまさか本当にこのタワーにも温泉があったのか?」


「ん?あぁ、そうだよー。流石は温泉の街だよねー」


「ここまで来ると流石というより、ヤバいって感覚が出てくるのじゃが……」


 チンッ


「あ、着いた。ほら皆、展望エリアに到着だよー」


「「「おぉー!」」」


 エレベーターの中で楽しくこのタワーについての話で盛り上がっていた所で、タワーの17回である展望エリアに到着した一行は窓際へと駆け寄り、眼下に広がる別府の街を長め声を上げる。


「これは壮観」


「凄いのです!街のあちこちから湯気が上がってるのですー!」


「こんな景色は元の世界でも見る事はできんのぅ。いやはや、絶景じゃ」


「皆目が良いねぇ……まぁ湯けむりが上がる街を見るなら湯けむり展望台って所が一番いいんだけど、まぁやっぱり別府に来たならここにも来ておきたかったしねぇ」


「こんなに綺麗な景色、絶対に守るのです」


「じゃな。妾達はその為にこの国を一周するんじゃから」


「ん、がんばる」


 湯けむりあがる夕日の街を前に、三人はそう決意を改めるのだった。

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