第十五話 温泉街なのです!

「ふぉぉぉお!異世界みたいなのですぅー!」


「凄い、めっちゃファンタジー」


「異世界みたいだったりファンタジーだったりというのは賛同するけど、皆にとっては事実ここが異世界だって考えると何とも言えない気分になるなぁ……」


 まるで絵本の中のようなメルヘンな世界をテーマにした、イギリス・コッツウォルズ地方の村を再現している湯布院のフローラルヴィレッジへと四人は訪れていた。


「自分の生まれ育った里から出たことがないノルンちゃんとかロクラエルちゃんはともかく、ヘグレーナちゃんは落ち着いてる様子だけど、もしかしてそこまでだった?」


「いやぁー……確かにテンションは上がるんじゃが、そのー……元の世界で割と見慣れた光景なんじゃよなぁ」


「あー……ヘグレーナちゃんって元の世界が中世みたいな感じなんだっけ」


「そういう事じゃ。まぁ、実際はここまでメルヘンに振り切っておらぬから、これはこれで見応えがあるのぉ。看板一つ一つがオシャレじゃし、明かりもデザインが凝っておるなぁ」


「二人とも二人とも!フクロウの森だそうなのです!」


「フクロウを手に乗せたり出来るらしい」


「へぇー……!面白そうじゃない。行ってみようか!」


 この後四人は可愛らしいフクロウを手に乗せたり一緒に写真を撮ったり愛でたりと、フクロウとの一時を楽しんだのであった。


 ーーーーーーーーーーーー


「はいお待たせ!チーズコロッケ四つ熱いから気をつけな!」


「ありがとうなのです!」


 ホカホカのコロッケが包まれた袋を両手に抱えふりふりと尻尾を振りながら、ホカホカと湯気を上げている風呂上がりの皆の元へノルンは戻る。


「お待たせなのですー!みんなの分も買ってきたのです!」


「あらありがとうノルンちゃん」


「ふふふ……温泉のお客さんにオススメされたので絶対買おうと思ってたのです!」


「いいねいいねー!やっぱり旅行といったら上等なお店の料理だけじゃなくて、こういった食べ歩きも楽しまないと!」


「それはいい事聞いたのぅ。このコロッケはとても美味しそうじゃ。しかし、温泉街と聞いてこうテレビで見たような和服でウロウロするような場所を想像しておったが、意外と現代的な感じなんじゃな」


「和風だけど、現代的な感じ。不思議」


 そう言いながら四人の歩く湯布院の温泉街の街並みは、三人がそういうように、和風ながらも現代的な街並みであった。


「でも雰囲気はあるし、純粋に全部和風ってよりは普段に近い感じでリラックスできるからいいんじゃないかな?」


「言われれば確かに……っと、コロッケ冷めちゃうのですっ!んんっ!ほいひい!」


 ーーーーーーーーーーーー


「おぉー!湖なのです!」


「湖の中に鳥居が立っておるぞ!」


「自然豊か」


 コロッケを食べ終え、道なりに色んなお店を眺めながら歩いていた四人は、辿り着いた湖を前にそう盛り上がる。


「ここが湯布院の有名な湖、金鱗湖だよ」


「「「金鱗湖?」」」


「そ、湯布院盆地自体が湖だった名残とも言われていてね。この湖で泳ぐ魚の鱗が夕日を受けて金色に輝くのを見た人が金鱗湖って名付けたんだ」


「へぇー……!オシャレな名前なのです!」


「金の鱗を持つ魚でも泳いでおったんじゃろうか」


「でも特に変わった所はない。ほんとに名所?」


「ふっふっふっ……この金鱗湖の名所たる所以はね、朝方の方にあるんだよ。とはいえ、今は時期が合わないから多分見れないけど」


「朝方?何かあるの?」


「この金鱗湖は実は水だけじゃなくて温泉も湧き出してる湖でね、そのせいで一年通して水温が高いおかげで秋冬には湖から霧が立ち上る幻想的な光景が見れるんだよ」


「ほぉ、それは是非とも見てみたかったの」


「寒い時期限定だったのですか……ちょっと残念なのです」


「でも季節限定だからこそ、いい」


「ねー。いつでも見られる景色もいいけど、条件が揃った時にしか見れない景色はまた一味違うもんだよ」


 寒い時期にまた来よう、そう約束をしながら四人は湯布院の観光を楽しんだのだった。

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