第十三話 宮崎の神秘なのです!
「皆ー。朝だよー」
「んんぅー……おはようございますなのですぅー……」
「んぐぅ……もう朝か」
「むにゅう……」
スイーツに浜辺にと宮崎県の南国雰囲気を堪能した四人は、宮崎市のホテルにて一晩を過ごし、宮崎県観光も2日目を迎えていた。
「朝ごはんは外で食べるから、お着替えだけ済ませて忘れ物ないか確認してねー」
「「「はーい」」」
「でも良かったのです。宮崎には歪みがないみたいで」
「鹿児島で歪みを見つけたおかげで、夜になれば一つの県くらいの範囲なら歪みがないか探す事が出来るようになったからのぅ」
「私とヘグレーナの能力と魔法を組み合わせれば、見逃すなんてありえない」
「えーっと確か、ヘグレーナちゃんが空間の歪み検知に優れてて、それをロクラエルちゃんの魔法で広域化してるんだっけ」
「そんな感じじゃな。妾の能力がほぼ夜限定で申し訳ないのぅ」
「その代わり性能が凄く高いんでしょ?なら何にも問題ないよ。次の県でもよろしくね?」
「うむ。任せるのじゃ」
こうして、宮崎観光2日目の幕が上がった──────
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「で、今日も海だと張り切っておった妾達の期待を裏切って木々の豊かな山の中を突き進んでおるが、一体どこへ向かっておるのじゃ?」
「確かに海に行かないって先に言ってなかったのは謝るけど、でも今から行く所も海に引けを取らないすごい場所だよー?」
「相当すごい場所じゃないと許さないのです」
「期待を裏切った代償は、大きい」
「大丈夫!大丈夫だから!あっ、ほら着いたよ!宮崎随一のパワースポット高千穂峡!」
「「「高千穂峡?」」」
三人の楽しみにしていた海とは真反対に山の中を走る事数時間、不満いっぱいの三人に目的地へと到着した水無月はそう言うと三人を先導し遊歩道の方へと歩いていく。
「ゴタゴタ言っておったが、来てみるとこれはこれでいいものじゃの」
「空気が瑞々しくて美味しいのですー」
「外は暑かったから、涼めてちょうどいい」
「でしょー?お、最初の見所についたね」
「最初の見所なのです?」
「とは言っても小さな橋がかかっておるだけではないか。どこが見所なんじゃ?」
「ふふっ。下だよ、下」
「「「下?」」」
そう言って水無月に言われるがまま、下を覗いた三人は下に広がる思ったよりも深い小さな渓谷を目にし思わず飛んだり橋の真ん中に退避したりしてしまう。
「な、ななっ!びっ、びっくりしたのですっ!」
「あはははは。ノルンちゃんは怖がりだなぁ。まぁ、思わず飛んじゃった怖がりさんも居るみたいだけど」
「し、仕方ないじゃろう!こんなに深いとは思っておらんかったんじゃから!」
「あははっ!」
「でもこれ凄い。壁が柱みたい」
「お、ロクラエルちゃん良いとこ気付いたねぇ。
これは柱状節理って言ってね、溶岩って冷えて固まる時にちょーっとだけ体積が小さくなって固まるんだけど、その時に五角形だったり六角形のひび割れが出来て、それが水に侵食されたり地震で隆起して地上に出てくるとこんな不思議な景色になるんだよー」
「「「へぇー」!」」
「で、この高千穂峡っていう場所はそういったちょっと不思議で綺麗な景色がいっぱい見れる場所なんだよ!さっ!いつまでも槍飛にいちゃ他を楽しむ時間が無くなっちゃうよー!」
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「という訳で、続きまして右手に見えます岸壁は仙人の屏風岩で、そのちょっと奥に見える縄が巻いてある岩が鬼八の力石になりまーす」
「あ!これさっきいってた柱状節理ってやつなのです!」
「こりゃまた凄まじいのぉ!岩肌が全部柱になっとる!」
「途中から植物が生えてるけど、それがいい味だしてる」
「ロクラエルちゃんの感想がなかなか渋い感じに……」
槍飛から歩く事少しだけ、対岸に見える巨大な柱状節理の壁である仙人の屏風岩を見て、三人はついさっき習った自然現象の更に凄い版だとはしゃぐ。
「それで、あの岩が鬼八の力石じゃったかの?」
「あのポツンと川岸にある黒めの岩がそうなのです?」
「そうそう。えっと確か、高千穂一帯を荒らしてた鬼八が退治に来た高千穂神社の祭神に投げて力自慢した岩だったかな?」
「神様に岩を投げつけるとか、不敬」
「ロクラエルちゃんがそう言うと説得あるなぁ」
「でも実際何キロくらいあるのです?」
「約200トン……とかだったかなぁ?」
「200トンか、妾は無理じゃがあやつなら軽々持ち上げられそうじゃな」
「え、何?ヘグレーナちゃん鬼八と知り合いなの?」
「んなわけなかろう。妾の知り合いの大地を司る水晶の竜が馬鹿力なんじゃ」
「へぇ。どんな子なの?」
「普段はおっとりしてて可愛いやつなんじゃがのぉ。女の子扱いしたり怒ると怖いぞー?」
「二人共ー!写真撮ってなのですー!」
「おっと、二人共早いなぁ」
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「り、陸地じゃあ……」
「ふふっ。ヘグレーナちゃんお疲れ様」
遊歩道を歩き終え、最後に今度はボートで高千穂峡の中からの景色を堪能した四人は、長時間ボートに揺られていたせいか少し覚束無い歩き方になっていた。
「いやぁ、まさかヘグちゃんがあんなに船を怖がるとは、思ってもいなかったのです」
「し、仕方ないじゃろう!あんなちっちゃいボートいつ転覆するか……」
「転覆より、沈没の方が可能性、ある」
「なんか言ったか?ロクラエルよ」
「特に何も」
「ふふふっ♪仲良しだねぇ皆。っとそうこうしてたら車に着いたね。さっ、それじゃあ皆ー、最後の一枚行くよー。はい、チーズ!」
パシャリと高千穂の自然豊かな風景を後ろに、それぞれポーズを撮る三人を撮り、こうして宮崎の旅は幕を閉じた。
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