第十一話 マンゴーが有名な県なのです!

『この先10km、宮崎県に入ります』


「お、遂に宮崎県に入るねぇ」


「宮崎県なのです?」


「そうそう、九州の右側にある少し縦長の県だね。本名カナリーヤシだったかな?フェニックスって呼ばれてる木に因んだ名前のリゾートとかがあったりするよー」


「へー!」


 日本の最南端、佐多岬より出発した一行は、そのまま海岸沿いに北上する事数時間、宮崎県の目と鼻の先にまで来ていた。


「そのフェニックスっていう木が南国っポイ植物でねー。なんて言ったらいいんだろ?南国情緒が豊かって言ったらいいのかな?」


「ほぉ。となるとあれかの?宮崎県は海の近くが一番の見所って感じになるのかの?」


「ふふふっ、それがそうとは限らないんだよヘグレーナちゃん。行くのは後になるだろうけど、内陸の方に高千穂って地域があってね、そこの景色が凄いんだー」


「名前がなんかかっこいい」


「でしょ?でもヘグレーナちゃんが言ってた通り海沿いも賑やかなのは確かだよ。特にサーフィンなんかは国際大会が開催されたりするレベルだし、なんだかスポーツチームが多い印象があるね」


「サーフィンというとあの波に乗ってノリノリ!なやつなのです?」


「そうそう。海水浴場の近くとか通るし、もしかしたら見られるかもよ?」


「それは楽しみなのです!」


「あれ、テレビで見てて凄く面白かったから、楽しみ」


 水無月にスポーツが盛んだと聞いた運動大好きなノルンとロクラエルは、興奮したような面持ちでそう反応する。


「でもさっきも言ったけど高千穂みたいに内陸の方にもいい景色がある場所も多くてね、今向かってる県境の霧島山脈にも色々と観光名所があったりもするんだよー」


「ほほぉう、それは楽しみじゃな。所で、宮崎県ではどんな食べ物が有名なんじゃ?」


「宮崎県と言えばやっぱりマンゴーだね!宮崎のマンゴーとかキンカンは完熟な物が多くてね、甘くて蕩ける様ですっごい美味しんだよー!高いのだと1万円超えたりとかするけど、それでも1度は食べてみる価値はあるね!」


「へぇ、そこまでみーちゃんが言うなんて珍しいのです!」


「いや、あれは本当に美味しいよ。高いマンゴーはなかなか手が出せないけど、それでも一般向けのでも充分美味しくてね、舌で押し潰すだけでとろけるように瑞々しい甘さが最高なんだー」


「それは是非とも食べてみたいもんじゃのぉ!」


「でもマンゴーが頭1つ抜けて有名だけど、やっぱり有名所で言うならそれくらいチキン南蛮が有名だね」


「チキン南蛮っていうと、あの施設で時々出てたですよね?唐揚げみたいなのにタルタルソースがかけてあるやつなのです」


「そうそう。実際発祥の地だから宮崎県民のソウルフードとも言われててね、ボリューム満点ながらも口当たり軽くて女の人でもペロッと平らげられるんだー」


「おぉ!それは是非とも食べてみたいのです!そしてそのレシピを再現してやりたいのです……!」


「あはははは……後は地鶏とか宮崎牛とか、お肉でも結構有名所が多いね。それに実は宮崎は隠れたうどんの名地だったりもするんだよ?後はやっぱり海鮮だね!少し時期が早いから出てないかもだけど伊勢海老が美味しいんだ」


「海老か!あれは美味しかったのぉ……もし食べれるなら食べてみたいもんじゃ」


「ステーキ、食べてみたい」


「ふふっ♪なら道中見かけたらぜひとも寄らないとね。っとそろそろ宮崎に入るよー!」


 皆が食べたいものを言い出したのを聞き、微笑ましさに笑顔を浮かべた水無月はそう言うと車を飛ばして宮崎県へと入るのだった。


 ーーーーーーーーーーーー


 山道を走る事約数時間、宮崎県に入る前にはあんなに盛り上がっていたのにも関わらず、水無月達は漸く県境を過ぎてすぐの所で車を停めて居た。


「それで、何故ここで停るんじゃ?流れ的に一気にグルメ巡りをする流れじゃったろうに」


「まぁまぁ、やっぱり自然を楽しむ事も大事だよ」


「確かに、凄く空気が良くて気持ちいいのです。ここはなんて言う所なんです?」


「えびの高原って言うところでね、冬には屋外スケート場が解放されて人がいっぱい集まるんだよー。近くには大きな火口湖があってね、今は初夏だけど秋なんかにくれば凄く綺麗な紅葉が見れるんだ」


「ほぉ、それは是非とも見に来たいもんじゃな。所でえびってついておるが、この湖ではエビが取れるのかの?」


「ヘグレーナ、それは食べ物に執着し過ぎ」


「い、いいじゃろ少しくらい!食べる気満々だったんじゃから!」


「あはははは……えっと確かねぇ。昔この辺り一帯は火山ガスがよく噴出してて、その影響かそこら辺一帯はススキがよく生えてたらしくてね、そのガスのせいでススキが「えび色」になったからえびの高原って名前が着いたんだったかな?」


 えーっと確かと思い出しつつ水無月はそう言いながら、三人とすぐ近くの登山道を暫く登った所で、少しずつ山頂が見えてくる。


「さっ、着いたよ!ここがえびの高原でもトップクラスにいい景色を誇る、韓国岳だよ!」


「「「おぉー!」」」


「すごい、雲が近くにある」


「緑が青々としてて……栄えるのぉ!」


「あ!桜島が見えるのです!凄いのですー!」


「こ、この景色が見せたくて最初にここまで来たまであるからね!はひゅう……」


「み、水無月?!」


「だ、大丈夫なのです?!」


「あはは……普段運動しないのに、張り切るもんじゃないねぇ……」


 そう言ってガクッとノルンの腕の中で水無月は力尽きるのだった。

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