第三話 鹿児島からのスタートなのです!

「所で皆、鹿児島ってどんなとこか、知ってる?」


「鹿児島……ってこの地域の事ですよね?確か火山がーとかいうのは覚えてるのです」


「あんまり知らんのう」


「それはへグちゃんがあんまり話を聞いてないからなのです。ロクラエルちゃんはどうなのです?」


「一応、私も火山があるってのは覚えてる」


 ようやっと山奥から舗装された道路に出て最初の目的地へと動き出したキャンピングカーの中、水無月のその質問に三人はそれぞれの記憶にある鹿児島県について述べる。


「あははっ。まぁでも鹿児島って言えば火山なのは間違いじゃないしね、それじゃあ最初の目的地まで時間あるし少しだけ鹿児島についてお勉強しよう!」


「「「はーい」」」


「先ず鹿児島の特徴と言えば、皆も言った通り年中噴火し続ける桜島!広い鹿児島湾の中に浮かぶ火山島でね、鹿児島のシンボルとも言われる名所なんだ」


「あんなヤバそうな場所を観光するなんて……人間とは凄いのです……!」


「ふふっ。でしょう?でも鹿児島はそれだけじゃなくてね、離島の方はいかないから説明省くけど。本土の方はサツマイモの産地としても有名で、その影響だったかな?焼酎の製造も盛んで芋焼酎も名物なんだよ」


「芋焼酎……!あれは銘柄でクセや匂いは凄まじく変わる割に、ベースとなった芋の甘さが堪らん奴だったのぅ。しかも飲み方で風味もまた変わる、飲み比べて飽きない酒じゃな!」


「語るねぇヘグレーナちゃん。でも残念、私が飲みたくなるから長期滞在しない限り飲めないのだ」


「そんなぁ!」


「みーちゃんが頑張ってるから当然なのです」


「ん、当然」


「ごめんねー。でも今ヘグレーナちゃんが言ってくれたみたいにお酒の名所でもあるし、他にも黒豚とか実はうなぎの生産量も日本一だったりする結構特徴の多い県なんだよ」


 お酒が飲めない事に絶望したり、危ないはずの土地をも観光名所にしてしまって居ることに驚いたりする三人に鹿児島について説明した水無月はちらりと時計に目を落とす。


「8時か……確かこの時期ならここでいい物が見れたはずだけど……ノルンちゃん、今日の干潮が何時か調べてもらえる?」


「干潮なのですか?えーっと……14時なのです」


「どうした水無月。何かあったのかの?」


「干潮、何か関係あるの?」


「まぁ目的には関係ないけど、せっかくだしねー…………よし!皆、今からお風呂に行こ!」


「「「えぇ?!」」」


 湾岸沿いに暫く走り、鹿児島湾に浮かぶ少しだけ遠くにある島の見える浜沿いの道路に車を停めていた水無月のそんな唐突な提案に驚く3人を無視し、水無月は再び車を走らせるのだった。


 ーーーーーーー


「いきなり走り出したかと思えば、ここはなんの施設なんじゃ水無月?言われるがまま渡された服を着てはみたが……」


「これ浴衣なのです!かわいいのですー!」


「私達、翼あるから、他の服。羨ましい」


「皆ノリノリだねぇ。えっとここはねー、砂風呂っていう蒸し風呂の1種でね、冷え性肩こり腰痛、続ければダイエットなんかにも効果があるって言われてるんだよ」


「肩こり……!」


「腰痛じゃと?」


「ダイエットにも、なのです……!」


「えっと……皆?なんだか目が怖いよ?」


 翼の有無で多分元は従業員用の半袖半ズボンであっただろう服の有翼組二人と、青色の浴衣に着替えた二人はそんな事を言い合いながら店員の案内で外に連れられていく。


「ではすいませんが、皆様ここに寝転んで頂いて……あ、翼のあるお2人は翼も広げてて頂けると」


「分かった」「こうでいいかの?」


「はい。あ、そちらの竜のお客様は尻尾を真っ直ぐして頂けると……」


「む、ならば少し尻辺りの砂を掘って尻尾の付け根をそこに入れるかの」


「いやー大変そうだねぇ……」


「なのですねぇ……」


「あ!ずるいぞ水無月、それにノルン!お主らだけ先にそんな気持ちよさそうな顔をしおってからに!」


 この中では唯一尻尾のせいで仰向けに寝る事の出来ないへグレーナを他所に、早速体を砂に埋めてもらっていた二人は気持ちよさそうに同時に息を吐く。


「ぐぬぬぬぬ……!ロクラエル!そちからも一言ってあぁ!」


「これは……いい…………はふぅ」


「んな?!ロクラエル、そちまで──────」


「はーい、それじゃあ砂の方かけさせて貰いますので、しばらくじっとしておいてくださいねー」


「あっ、ちょっ?!わ、妾はぁー!」


 ーーーーーーーーーーーーーー


「ったく、本当に一時はどうなるかと……」


「ふふっ♪でも気持ちよかったでしょ?砂風呂」


「まぁ……そうじゃな。それは否定せん」


「アタシも気持ちよかったのです!」


「気持ちよかったけど、私は、もういい」


「ロクラエルちゃんは翼の隙間にいっぱい砂がついてなかなか大変な事になったもんねぇ。っとそろそろ着くよー」


 あれからへグレーナが少しだけ抵抗したりしたものの、たっぷりと砂風呂を堪能した4人は最初にUターンした道を戻っていた。


「そろそろ着くと言われても……元来た道を戻っとるだけじゃろう?さっきの場所に何かあるのかの?」


「ま、それは見てからのお楽しみって事で。とか言ってたら着いたね、ほら皆降りて降りてー」


 水無月に言われるがまま、浜辺付近の駐車場へと停車したキャンピングカーから降りた三人は、さっき来た時とは違う目の前の光景に息を飲む。


「これは……驚きじゃのぉ!」


「凄いのです!まるで神話のお話みたいなのです!」


「凄い、数時間しか経ってないのに」


 そんな三人の前には数時間前には無かった知林ヶ島と呼ばれる鹿児島湾に浮かぶ島へと続く、美しい砂の道が出来ていた。


「ふふふっ♪凄いでしょ。この道はね、普段は海の中にあるんだけど、潮が干いて海面が下がると出てくるんだよ」


「「「へー!」」」


「しかもね、この道があるからなんだけどあの知林ヶ島は縁結びの島、愛の島とも呼ばれてる縁結びに関するパワースポットになってるんだよ」


「そうなのです?でもあんまり縁結びとは関係ない気がするのですが……」


「この砂の道なんだけどね、島と陸地を繋げてるだけじゃなくて、潮の満ち引きで消えても台風なんかでこの道が流失しても、次のシーズンにはまた元通りになるんだよ」


「なるほど。つまり「何があっても必ず繋がる」「陸と島を結ぶ」という所からそんな話が着いたんじゃな」


「なかなか、素敵」


「だよねー!でね、この道には多分知林ヶ島っていう島の名前にも掛けて、ちりりんロードってかわいい名前がつけられてるんだよ」


 水無月達は知林ヶ島を目指し、この砂の道についての色々な話を歩きながら楽しげに語る。


「ちりりんロード!かわいいのですー!」


「ね!かわいいよね!合わせるとハート型になる貝殻とか、鳴らすと幸せになる鐘とかもあるんだよ!私も良い人と逢いたいし、是非とも鳴らさないと!」


「そういった力ある地に願うのは別に構わんが、そちはもう少しそういった方面への努力をだな……」


「よ、余計な事は言わないでいいの!私だってその、きちんとそう言った女子力的なもの磨いてるんだから!」


 そんな風に賑やかに、そして和やかに盛り上がりながら、彼女たちは鹿児島の名所をめぐり始めたのだった。

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