第20話 貴族はつっかかることがお仕事
昼前に目を覚ますことができ、ギルドへと向かう。
ギルドに入ると、いつもとは違う喧噪につつまれていた。
「なぜ、俺たちがCランクになれなかったんだ」
「ですから、厳正なる試験の結果、今回は栄光の輝きがCランクになることは叶いませんでした」
「うるさい、あんなもの試験ではない。不意打ちだ。そんな卑怯をしてまでギルドは俺様を昇格させたくはないのか」
受付で怒号をあげている金髪のイケメンがいた。
真っ白な鎧をつけており、その鎧のところどころに赤色の宝石がちりばめられている。
んー。それ目立たないか?
騎士と言われればそれっぽくも見えるが、絶対に冒険者向きの防具ではないな。
「おーい、ソラこっちへこい」
いつもどおりギルドマスターのおじいさんに呼ばれる。
そこ、うるさいやつの隣なんだけど……
何回も名前を呼ぶのでしかたなく、ギルドマスターの受付へ行く。
ギルドマスターと話していたおじさんは、会話を終えたのか、横に避け、受付を開けてくれた。
「ソラ達はまた大量の解体を頼んだらしいの。グスタが喜んでおったぞ。手当をだせと元気にいってきたわ」
それ喜んでないな。
ごめん、グスタさん。
今度うちの子をモフらせてあげるね。
「狩ったやつが残っていたしね。手当だしてあげてよ」
「ギルドが潤って助かるわ、また頼むぞ。ほれ、冒険者カード」
「ほい」
ギルドマスターに冒険者カードを渡す。
「今回ので、Cランクの試験が受けれるようになるが受けるか?」
「静かにして、今話「おい」すのはやめて」
右隣から声が聞こえる。
「こんなガキがCランク試験だと?なめているのか」
ほらー、うるさいやつが反応しちゃったじゃん。
それにその話ピンポイントに突き刺さるからね。
俺は小声でテトモコにティナを守るようにお願いし、手を出すなと伝える。
モコはティナを乗せ、椅子がある場所まで下がる。
「おい、ガキ、聞いているのか?」
「聞いているよ。声がうるさいんだけど、静かにできないの?大人でしょ?公共の場では暗黙のルールってものがあってね。別に決められてないけど、誰もが守っていることがあるんだよ?」
「貴様なめているようだな。俺様が誰か知らないのか?エルドレート公爵家次男 エルク・エルドレートだぞ。平民がなめた口をきくな」
「なめてないでしょ?事実を教えてあげただけ。周りに騒いでいる人いないだろ?」
「うるさい、お前に意見を求めてない」
「じゃーなんで、声をかけてきたんだよ」
「なぜ、貴様なんかがCランク試験を受ける資格があるのだ」
いや、詳しくは俺もしらないよ。
そう思い、助けを求め、ギルドマスターに視線を向ける。
「おい、じじぃ。なんでこいつに資格があるんだ。納得できる理由を言え」
その人ギルドマスターなんだけどな。
それに、お付きの従者は慌てているみたいだぞ?
「ほう、活きのいい青年だな。では教えてやろう。ソラ達、天使の楽園は死の森の中心で四か月ほど滞在し、そこで狩った魔物の素材を依頼として納めておる。依頼数などの詳しい情報を教えることはできないが、Aランク依頼のキリングベアーの素材を納めているといえば納得できるか?」
「死の森だと?それにキリングベアーの素材を納めた?ギルドもバカになったようだな。そんなもの嘘に決まっておるし、素材はどこかで買って納品しているに決まっているだろう」
「これでも納得せんのか。では決闘でもして確かめてみるか?」
「おい、おじいさん。勝手にそんなこと決めないでよ」
「それでいいだろう、貴様がCランク試験を受ける資格があるか見極めてやる。魔物は殺しても問題ないよな?」
「おじいさんその決闘やろう。決闘では人は殺してもいいのか?ダメならどこまで許される?腕一本?四肢全部?」
「ソラ、落ち着け。魔力を抑えろ。冒険者には気をかけなくていいが、受付嬢にはさすがに堪えるだろうが」
「あー、すまない」
無意識に魔力があふれ出ていたようだ。
ティナの方を見るが、椅子に座って、テトモコシロと楽しそうにお話ししている。
よかった。ティナには影響がでていない。
となりの金髪はすこし、顔をゆがめているが。
「き、貴様。さっきの魔力はなんだ?」
「うるさい。話すな。殺したくなるだろう。おじいさんはやくやろう。ルールは?こっちは俺一人でいい。そっちは五人まとめてかかってこい」
「ルールは殺人、再起不能の傷を負わせることを禁ずる。要望通り天使の楽園からはソラのみ、栄光の輝きは全員の五人での参加とする」
「再起不能とはどうゆう状態だ?回復魔法や、ポーションでどうとでもなるだろ?」
「エリクサーでも、脳の損傷、精神的な負荷は治しづらい。それにエリクサーなんてものは買おうとして買えるものではない。セイクリッド教の聖女であれば治せるだろうが、そんな簡単に依頼できるものではない」
「じゃー、四肢を切り離すのは?」
「ダメだ。せめて一本だ」
「ならそうしよう」
話のわかるおじいさんだ。
しかたがないから利き腕だけにしてやろう。
公爵家とかいってたから、どうせ優秀な回復魔法士を雇っているだろう。
「その決闘とりやめていただくことはできませんか?」
銀髪のオールバックで眼鏡をした従者が話しだした。
「最初に承諾したのはそっちなんだけど。いまさらびびってやらないとか言わないよね?金髪さん」
「あ、ああ。ジルドもやめろ。一度決めた決闘を取りやめることはエルドレート家の恥となる」
「ですが……わかりました。エルク様、無理をなさらないようにお願いします」
従者のジルドと呼ばれた男性はうかない顔をしているが、話を見守っていた周りの冒険者はお祭り騒ぎだ。
決闘でどっちが勝つかを話し合い、仲間うちで賭け事をしているところも見える。
「あ、キロ。いいところにいるじゃん。ティナを孤児院に連れていって遊んでてくれないか?」
「それはいいけど。これから決闘だろ?大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ。ティナに決闘をみせるわけにはいかないからな。それとルイみてないか?」
「ルイって騎士のルイ・クロードさん?」
「そうそう。そのルイ。ティナの護衛を頼みたいんだ」
「騎士に依頼するの?受けてくれるのか?」
「たぶん受けてくれるはず。んー。色々含めて三十分ぐらいかな?ルイには金貨一枚。キロには大銀貨二枚でどう?」
「金貨一枚は破格だぞ?俺には金なんていらないよ。昨日助けてもらったしな」
「それでいいよ。ティナに何もなければ安いもんだ。それに、これは依頼だ。金をうけとってくれ」
「過保護だな」
「否定しないよ」
依頼の内容を確認したあとに、キロはすぐに詰所にいきルイを連れてきた。
金髪たちは作戦をたてているのか、固まって話している。
「いきなりなんだ。ソラ。オレは騎士だぞ?俺に護衛の仕事なんか依頼すんなよ」
「強い知り合いがルイしかおもいつかなかった」
「それは……やってやるよ」
「助かる。見守ってくれるだけでいいから」
ほいっと金貨一枚、日本円で百万を渡す。
「お前は……そこまでいくとすがすがしいな」
「だろ。だからまかせたぞ。一応モコシロも一緒にいるからさ」
「オレいらないだろそれ」
「念のためだって。人間が必要な場面があるかもしれないだろ?」
「三十分ぐらいでそんな状況があるとは思えないが。わかったよ。働いてやる」
「ありがとう」
なんやかんや結局引き受けてくれた。
ルイはやっぱり優しいやつだな。
俺はティナたちが話しているところに向かう。
「ソラ終わった?」
「あー、金はまだだけど。ちょっとやることができたからティナはキロ達と孤児院で待っててくれないか?すぐ終わるからさ」
「……忙しい?」
「ぜんぜん。ちょっとしたお仕事だ。モコシロも一緒にいってくれ。テトは俺と行動な」
「にゃー」
シロはよくわかっていなそうだが、テトモコは話を聞いていたのか、了解とすぐに行動に移してくれた。
優秀な従魔たちだ。
ティナは話しかけられたキロ達と何をして遊ぶかを話し合いながらギルドをでた。
「またせたな。じゃー殺ろうか」
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