第21話 さあ、殺し合いの始まりだ

 

 ギルド中を進み、ギルドの闘技場へとやってきた。

 俺とテトの二人だけなのは少し違和感があるな。

 

 闘技場の周りには決闘を聞きつけた冒険者が話しながら始まりの合図を待っている。

 俺は入り口から離れた闘技場の壁の近くで待機する。

 俺の後に続き、栄光の輝きのメンバーが闘技場に入ってくる。

 見物している人たちは大はしゃぎだ。

 様々な声が聞こえてくる。

 金髪貴族の悪口を言っている声も聞こえるが、ばれても知らんぞ。


「ではこれから決闘を行います。審判はスレイロン支部の副ギルドマスターである私、エレナ・スカールズが務めます。参加者は天使の楽園から一名。栄光の輝きから五名です。ルールで殺人、再起不能の傷を負わせることを禁じます。また、降参、戦闘不能と私が判断した場合はその場で決闘の終了を宣言します。それでよろしいですか?」

「大丈夫です」

「こっちもそれでいい。ガキに調子のった代償を払わせてやる」


 金髪が何か言っているが、そんなことより。

 エレナさん副ギルドマスターだったのか

 そりゃー、おじいさんに文句言えるわけだ


 栄光の輝きのメンバーは従者の四人が前に出ており、その後ろに金髪がいる。

 あんなに威張り散らしていたのに恥ずかしくないのかな?

 まあ、おそらく銀髪のジルドって人が考えたんだろうが。


 あの人は五人の中で唯一、俺の魔力に最初から気づいている感じがあった。

 だから、魔力が暴走した時にもあまり驚いていなかったように見えた。

 人の強さなんてあんまりわからないけど、あの中では一番強いだろう。

 要注意人物だ。


「では、開始します。はじめ」


 始まりの合図とともに俺は風魔法を発動し、風玉を従者四人へと飛ばす。

 風玉は一人当たり五つだ。

 避けれるものなら避けてみろ。

 相手側も開始と同時に決めるつもりだったのか、従者の二人が剣握り、こちらに向かってきていた。


「なっ」

「バカよけろ」


 後ろから戦闘をみていた金髪が従者へと指示を飛ばすが。


「俺の風はそんなにおそかねーよ」


 前方にいた四人の従者の内、三人が風玉の直撃を避けられずダメージを負う。

 近寄っていた二人は頭へ風玉が直撃し気絶しているみたいだ。

 もう一人は足にあたり、うずくまってもがいている。

 骨折でもしたかな?風の刃でなくてよかったな。足とおさらばしていたぞ。

 

 最後の従者ジルドは三発を避け、二発は剣で切り落としていた。

 ほぉー、剣で魔法って切れるのか。面白いな。

 なるほど、剣に魔力を通しているのか。

 剣が少しだけ発光しているように見える。

 魔力を入れた武器だと魔法を切れるってことだな。大鎌でも試してみるか。

 

 そんなことを思っていると金髪の声が聞こえた。


「ホーリーレイ」


 突如、俺の頭上に五本の光の剣が生まれた。 

 そして俺を突き刺すかのように降り注ぐ。


「派手な魔法だな。だが遅いし、脆いぞ」

 

 無駄に光り輝く、剣を見上げ、冷静に分析する。

 影収納から大鎌を取り出し、光の剣をすべて切り裂く。

 光の剣は切り裂かれると、光の粒子へとなり、地面へと落ちる。


「くそが、これでもだめか」

「エルク様、お任せを」


 ジルドが声を出すと、地面に落ちようとしていた光の粒子が、再度、剣の形を帯び始める。

 そして、角度をかえ、俺に向かって襲いかかってくる。


「人の魔法を操るのか。スキルか?」


 俺はそう言いながら、風を纏い、襲い掛かってくる光の剣はじき返す。


「だめですか……ではっ」


 ジルドは俺に向かって走り出し、剣を振りかざす。

 そうくるよな。 

 明らかに、大鎌が剣と打ち合うのは不利に見えるだろうし。

 リーチの長さが有利になる時もあるが、接近してしまえば取り回しが難しくなるものだ。


「ごめん。できれば避けてくれ」

 

 近づいて剣を振りかざしているジルドを剣ごと薙ぎ払いにかかる。

 取り回しが悪くなるのは確かだが、この大鎌は重量百キロ超えであり、取り回しとか関係なく叩きつけるだけでも凶器なのだ。

 しかも、俺にとってこの大鎌は木の棒のように振り回せる。

 

 ジルドは大鎌を剣で防ごうとするが、剣はあっけなく切断される。


「く、硬化」


 大鎌の刃は剣を切断し、そのままジルドの体へと進んでいる。

 そしてジルドが装備している鎧に刃が当たる。

 ほぉー、少し硬いか。

 

 ジルドは硬化と言った瞬間から回避行動をしていた。

 大鎌の刃が鎧を完全に切り裂く前に、体をそらし、肉体に刃が刺さることから免れた。

 追撃しようと大鎌を構えるが。


「私は降参です。これ以上してしまうと殺されてしまいます」


 半分の長さになった剣を落とし、両手をあげるジルド。


「おい、ジルド、降参とはなんだ」

「エルク様申し訳ありません。これ以上私は無理です。お早い降参を推奨いたします」

「くっ、こんなガキに降参なんてありえない」

「へぇー、うれしいよ。降参しないでくれて」


 俺はジルドと金髪が話している隙に金髪へと近づき声をかける。


「おまっ、ぐっ」


 大鎌の刃とは逆の部分で軽く首に攻撃を当てる。

 軽くだが、人間に全力パンチくらったぐらいだろうか。

 もちろん狙ったのは喉潰しだ。

 こいつはうちの子たちを殺すといった。絶対に五体満足で済ますわけにはいかない。

 降参してもらっては困るのだ。

 

「声がでないか?」


 ぜぇぜぇと息をはく金髪。


「あー、楽しいな。そうだろ?」


 顔のにやけが止まらない。 

 金髪はどんな気分なんだろう。

 試してやると大声で言っていたが、この様だ。

 恥ずか死ね。


「まずは利き腕だよ」


 下から、相手の右わきめがけて大鎌を振り上げる。

 スピードについてくることができずあっさり、切断することができた。

 右腕切断完了。


 ここからは時間との勝負だ。

 エレナさんに止められる前に、一つでも多く攻撃を加える。

 続けざまに、左手を切断。

 右足の健をきり、左足は足の指を切断。

 つぎは……顔。


「終了です。戦闘をやめてください。これ以上攻撃を加える場合、罰則を科します」

「え?残念……」


 エレナさんの声で止められてしまった。

 先に目をつぶせばよかったか?

 でも、見えないとなにが起こったかわからないだろ?

 それだと死を味わわせてやれない。


 大鎌を影収納にいれ、周りを見渡す。

 あれ?思ったより盛り上がってないな。

 ちゃんと瞬殺せずに盛り上げようと魔法の威力も抑えたのに。

 始まる前は祭りのように楽しんでいたじゃないか。


「痛っ」

「やりすぎだ。ソラ」


 後ろからギルドマスターのおじいさんに頭をたたかれた。


「やりすぎ?あいつはうちの従魔を殺すって言ったんだよ?殺してないだけマシじゃん」

「それでも限度というものがあるじゃろ」

「じゃー、今度からうちの子たちに危害を加えようとした人はこっそり殺すね」

「それだとお前が犯罪者だ」

「ばれないから大丈夫」

「はぁー。もうよい。お前たち聞いたな。こいつらのことを知っていると思うが、絶対に手を出すな。命の保証はない。ソラはおそらく本気で殺しにくるぞ。」


 周りを囲っていた冒険者は冷や汗を流しながら、真剣にギルドマスターの話を聞いている。 

 冒険者って荒くれものが多いのに、ちゃんとギルドマスターの話は聞くんだな。

 さすが、街の英雄さんだ。

 でも、助かるな。これでうちの子たちに手を出してくる奴が減ればいいけど。


 栄光の輝きには救護班が駆け寄っており、手当をしているみたいだ。

 金髪の周りには五人ほどいるが、そいつは死んでもいいから治療しないでほしい。

 

「にゃー、にゃにゃーにゃー」

「かっこよかっただろ?テトモコのおかげだよ。ありがと」


 テトが近寄ってきて、興奮気味に俺をほめる。 

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