うちの天使に近寄るな～影と風に愛された死神はうちの子を守りたいだけなんだ～

第15話 指名依頼

　朝、宿をでて、お金を受け取りにギルドへとやってきた。

「おう、ソラこっちにこい」

　きれいなお姉さんの受付に並ぼうとした俺たちを止めるギルマスのおじいさん。

「受付に並ぼうとしたんだけどな」

「ここがあいておるだろ、わしがいるときはわしのところにこい」

「はいはい、わかりましたよ」

「それでなんのようだ？依頼をうけるのか？」

「金をとりに来て、また解体をお願いしようかと。依頼みたけど、俺らが受けれる依頼で面白そうなのなかったからな」

「なんだ面白くないとは。それで生活しておる冒険者がおるんだぞ」

「いや、まあ、今のところお金に困ってないしさ」

　街のお手伝いの依頼やゴブリン討伐、薬草採取などする気がおきない。

　ギルドカードを渡し、お金を受け取ろう。

　金貨三二枚だ。おおー、前回と合わせると一億三千二百万だ

「そういえば、ソラ。Dランクに昇格じゃ」

「え？なんでだ？一つも依頼をこなしてないぞ？」

「死の森の魔物素材はあまり手が入らなくてな、坊主の素材を依頼品として処理した。Aランク依頼が五件、Bランク依頼が十五件、Cランク依頼が二五件だ。それだけでDランク試験への推薦ができる」

「試験を受ければいいのか？」

「ソラはよい、Dランクからは魔物の群れと戦える戦力が求められる。もともと、E、Fランクで魔物を倒した経験があり、調子にのっているやつらの力を評価するために行われるようになった試験だ。死の森の魔物を狩ってくる坊主の力を疑う必要がない」

「それはありがたい」

「……ティナは？」

「嬢ちゃんは悪いがGランクのままだ。どれだけ、従魔が強かろうと、幼い子供一人で外の依頼をさせるわけにはいかないんだ」

「ふーん、残念」

「お前たちはパーティー登録しておるから、嬢ちゃんもソラのランクの依頼を受けることができるぞ」

「いつのまにパーティー登録したんだよ」

「カードを作った時だ。そういえばパーティー名はどうする？」

　パーティー名か。どうしよう。

　うちの子たちをみる。天使であるティナと黒と白のもこもこ三匹。

　三匹と一人が名前を考えているのか会議をし始めた。

「天使の楽園」

「それにするのか？」

「あー、とりあえずそれでいいよ。あまり殺伐とした名前では俺たちのイメージに合わないしな」

「えー、ティナたちも考えてたのに」

「きゅうきゅう」

　抗議の声をあげるうちの子たち。

「なんかいいのが思いついたのか？」

「ソラと愉快な仲間たち」

「却下で」

「えー、なんで？？かわいいじゃん」

「それだと俺が前面に出すぎだ」

　ブウブウ言っているが断固として却下だ。

　パーティー名で自分の名前をいれるなんて痛すぎる。

　しかもうちの子たちは愉快な仲間たちでいいのかよ。

　テトモコシロは俺の意見も有りらしく、結局俺たちのパーティーは天使の楽園できまった。

　そうだよな。俺たちの中でティナは天使と解釈が一致してる。

　ティナは「天使ってなんで？」っと言っているが、「君が天使だよ」とは言えず、みんなかわいいだろ？とごまかした。

　解体倉庫へ行き、グスタさんにまた解体を頼む。

　引きつった顔をしていたので、この三日間大変だったのだろう。

　今度は受け取りを四日後にし、解体倉庫を後にした。

「そうだ、お前たちに指名依頼がきておったんだった」

　ギルドを出ようとしていると、ギルマスに引き留められる。

　このおじいさん暇なのかよ。

　いつまで受付にいるんだ

「指名依頼？俺たちまだ、冒険者登録して三日なんだけど」

「普通なら断るんだが、依頼内容が特殊での、おまえさんたちしかできんのだ」

「マスター、ここからは私が説明します。奥の部屋を使いますので、ソラ様とティナリア様はついてきてください」

「あ、エレナさんこんにちは」

「ティナリア様こんにちは」

「わしが説明するぞ？」

「マスターは早く仕事に戻ってください。受付にいられると迷惑です。マスターのところにくる冒険者なんて古株の人だけなのですから、若い受付嬢に代わってください」

　ハキハキとギルドマスターに指示をだすエレナさんって何者なんだろう。

　俺たちは黙って、エレナさんについていく。

　ソファーに腰かけ、依頼内容についてエレナさんから聞いていく。

「今回の使命依頼なのですが、ソラ様、ティナリア様の従魔と一日娘をふれあわせたいとのことです。依頼料は大銀貨十枚で、依頼主はスレイロンの領主をされているエド・ラキシエール伯爵でございます」

「領主様？いやいや、どうしてそうなった」

「みなさま、お知りになりませんか？街では結構噂になっているのですが」

「黒と白の魔物をひきつれる可愛らしい幼い兄弟だろ？それは知っているけど」

「はい、それに加え、街中でティナリア様を乗せて歩くモコちゃんや、屋台の食べ物をおいしそうに食べるテトちゃん、シロちゃんも話題に上がっております。街の女性や子供は一目みたいと屋台通りにいき、ここ二日の屋台売り上げがあがったそうです」

　ここの屋台は賑わっているんだなと思っていたが、原因は俺たちか。

　まあ、話題にはなるか。みんな可愛いし、いい子たちだもんな。

「受付嬢も話してみたいようですが、マスターが対応されるので困っていたんですよ」

　なるほどな。

　さきほどからエレナさんは俺から目を離さず話しているが、お菓子で釣ったシロを膝にのせ、撫でている。

　エレナさんも触ってみたかったのか。

　あ、テトモコも行ってしまった。

　ティナも隣でお菓子を口に頬張っている。

「依頼の内容は理解したよ。で、受けた方がいいんだよね？」

「そうですね、みなさまに不満がなければ受けた方がいいですね。ラキシエール伯爵はいい意味で貴族らしくないので断っても支障はないと思いますが。それに冒険者もされていた方なので、冒険者を下に見ることはありません」

「なるほど、冒険者に理解がある領主様なんだな」

「スレイロンに来る人は冒険者がほとんどですからね」

「向かう日はいつになるんだ？」

「早ければ早いほどよいと伺っております」

「じゃー、明日向かうよ」

「わかりました。そのように伯爵様にお伝えします」

「どこにいけばいいんだ？」

「ギルドにきていただければ、馬車でラキシエール伯爵家の屋敷にお連れします」

「ありがとう、テトモコシロもそれでいいか？」

　OKと鳴いているが、三匹ともおやつに夢中だ。

　指名依頼の話が終わり、ギルドを出る。

　いきなり、領主様、伯爵様との面会か。緊張するな。

　まあ、隣にいるティナは公爵令嬢なんだけど。

　俺たちは適当に屋台で食べ物を買い、公園へとやってきた。

　確かに、視線は感じるな。

「ねえねえ、明日は依頼だけど、ティナはなにするの？」

「あー、領主様の娘さんと一緒に遊べばいいんじゃないか？」

「うんっ、そうするー」

　元気に答えたティナは何して遊ぶかを、うちの子会議で話し始めた。

　おにごっこ、かくれんぼ、石投げ、まったりタイム、おしゃべり。

　どんどんと明日の予定を決めているみたいだが、おしゃべりはティナとしかできないからね。

　あと、もふもふの毛に埋もれて寝ることをまったりタイムと言うのは初耳だ。

　今日は、テトモコシロをブラッシングして、ふわっふわのもっこもこにしないとな。

　俺の服装はいつも通りでいいか。

　スーツなんてないし、高い服ももってないからな。

　価値的にいえば、神様印のローブに勝てるものはないだろう。

　ティナはワンピースで。テトモコシロはスカーフをまいておめかししていこう。

　明日やらかさないか心配になる。