第14話 装備の新調

 

 次はこれまたおばあちゃんのおすすめ、ワコツ商会へと向かう。

 ワコツ商会は主に装備品と、武器などを置いているらしい。

 鍛冶屋と提携しており、売り場を提供してもいるし、ダンジョン産の武器や防具も売っているらしい。


「おおーー、ファンタジー」

 

 店に入ると、左に武器系統、右に防具系統ときれいに陳列されていた。

 うちの子たちはあまり興味を示していないが、俺はテンションあげあげだ。

 人間の街にきて一番異世界を感じている。 

 剣、ナイフ、槍、盾、弓、ハンマーなど様々な武器に目がいく。

 欲しい。けど、俺使えないんだよな。

 二年間で練習したのは手元にあった料理用ナイフのみ。

 でも、欲しい。

 いや、ただ単にかっこいい武器が欲しいだけじゃないんだ。

 この体になって、俊敏のステータスはかなり高くなっているし、特訓で体力もかなりついた。

 だが、力?腕力といったステータスが低い気がする。物理攻撃力が低すぎるんだ。

 

 以前、フォレストタートルとの戦闘で痛感した。

 あいつの甲羅、硬いだけじゃなく、魔法防御も高く攻撃がぜんぜん通用しなかった。

 カメが口を開けたすきに、エアブラストを発動してなんとか倒せたが、危うく影世界に逃げだすところだった。

 魔法防御が高い生物を俺一人で対処するのは危険だと感じたよ。

 だから物理攻撃力を上げるために武器が欲しいんだけど……

 

「なにかほしいの?」

「あー、武器をどれにしようかなーって」

「にゃーー」

「わふー」


 テトモコがまかせろーと店を走り回りだした。


「あんま走るなよ。迷惑になるぞ」

「んー、どれがいいかな……」

 隣でティナシロがふむふむ言ってるが、俺の武器だからね。

 数分ほど、剣を見て、槍も見てみたが、善し悪しなんてさっぱりだ。


「にゃー」

 

 遠くからテトが俺を呼んでいる。

 テトが鳴いたところに行くと、モコもお座りしていた。

 その前にはケースに入れられた一本の黒い大鎌がある。

 おおー、大鎌か。

 

「坊主それは使えないからやめとけ。大人二人がようやく持てるぐらいの重量だ」

「大鎌ってそんなに重いのか」

「いや、他の大鎌はそんな重かねー。それは、Aランクの漆黒の闇と呼ばれるダンジョンの中層で見つかったものだ。そのダンジョンは光がなく、魔物が強いため、探索難易度が高い。鎌自体の性能はいいんだがな、なんせ重くて使えるやつが現れなくて、ずっと店を転々としてるんだ」

「なるほど。使えないんじゃしょうがない」

「にゃにゃ」

「わふわふ」

「持ってみろって?」

 

 俺は大鎌に手をかける。


『影の魔力を感知しました。使用者設定を行いますか?』


 なんだ、頭の中から声がする。

 何の特徴もない、無機質で中性的な声だ。


「する」

 

 そんなものするに決まっているだろう。

 大鎌に選ばし、影魔法の使い手。ふむ、カッコいい。


『魔力をささげ、血の盟約をかわせ』

 

 血の盟約?血もささげろってことか?

 俺はナイフで自分の手を切り、大鎌を握る。

 そして、魔力を注ぎ込む。


「ソラっ」

「きゅー」


 ティナたちが慌てているが、ちょっと待っててくれ。


『使用者設定を完了しました。使用者ソラ・カゲヤマ あなたに影の導きがあらんことを』


 何事もなく、頭の中の声が消える。

 大鎌を手放し、手を見てみるが、手の傷もない


「なにしているんだ。よごれるではないか」

「ソラ、なにしてるのっ」

「お兄さんごめん、この大鎌買うよ。ティナたちも驚かせてごめんな」

「いや、坊主、どうやら大鎌も汚れてないみたいだし、使えないもの買う必要ないぞ」

「買いたいんだ。それに使えるから大丈夫だよ」


 俺は大鎌を手にし、片手で持ち上げる。


「ぼ、坊主?どんな腕力だよ」

「ふふ。腕力が取り柄なんだ」

 

 平然と嘘をついてみる。

 盟約やら、設定を話すつもりはない。


「金貨六十枚だが払えるのか?」

「お兄さん、どーせ置いてても売れないんでしょ?四十枚でどう?」

「高難易度のダンジョン産の武器だ。さすがにそんなに値切れない。五十五枚」

「もう一声」

「もうひとこえっ」


 テトモコシロも声をあげる。


「金貨五十枚だ。これ以上はしないぞ」

「それで、ありがとお兄さん」

「こっちも、売れ残っているやつが売れたんだ。ありがとな坊主」


 金貨五十枚、日本円にして五千万。やばい買い物をした気がするが後悔はない。

 テトモコに収納してもらっている袋から金をだし、支払いを終える。


「にゃー」

「わふわふ」

「そうだな。テトモコありがとね。いい武器を見つけれたよ」


 どうだーと胸を張っているテトモコを撫でる。

 今日の晩御飯はデザートもつけよう。


「そうだ、この子のローブも欲しいんだけど、サイズがありそうか?」

「んー、ないね。十歳ぐらいの子のサイズはあるんだけどね」

「作ってもらうことは可能か?」

「作れるぞ、どの素材がいい?」

「素材の良し悪しがわからんな、とりあえず、頑丈で重くないもの」

「それだと、ワイバーンが手っ取り早いな」

「ティナね、白色がいいの」

「白ならホワイトワイバーンの皮を使う」

「あとね、テトモコシロの絵入れてほしいの」

「そんなことできるのか?」

「できるぞ。貴族が家紋を刺繍したり、花を入れたりするからな」

「なるほどな。じゃー、シロの耳みたいなものをフード部分につけれるか?」

「やったことはないが、綿などをいれればできると思う」

「お耳?なんで?」

「フードをかぶったらティナがシロみたいになるぞー。可愛いだろ?」

「シロみたい……可愛いよそれ。シロになれる」


 フードをかぶった自分を想像したのか、あふれんばかりの笑顔でこたえるティナ。

 テトモコがなんで自分の耳じゃないんだと訴えているが。


「シロはティナの従魔だろ?テトモコは俺の従魔だ」


 なら、と俺につけろと言ってくるが、絶対にごめんだ。

 可愛いのはうちの子たちだけで十分だ。

 それに、俺がテトかモコ、どちらかを選ぶなんてできるわけがないだろう。

 どっちも大切なうちの子だし、そこに優劣なんて存在しない。

 そう説明すると、照れて納得したのか、しかたなさそうに諦めた。

 俺たちは制作を依頼し、大銀貨十五枚を先払い、店をでた。

 

「こんなもんかな?」

「にゃん」

「あのね?本も買いたいの」

「なら本屋さんを探そうか」


 本屋を目指して、大通りを歩いていく。


「あ、あそこじゃない?」


 ティナが指さしているところを見ると、店前に本が積んである、小さなお店があった。

 扉をあけ、店内にはいる。


「ティナね、魔物がかいてある本が欲しいの」

「なんで欲しいんだ?」


 ティナは近づいてきて小声で話しかける。


「あのね、ティナ魔物と話せるでしょ?もしかしたら仲良くなれる子がいるかもだから、魔物の好きな食べ物とか知りたいの」


 なんとも可愛いらしい理由だ。

 おそらく好きな食べ物なんて載っていないだろうが。


「そうか、いっぱい勉強しような」


 俺は魔物図鑑と書かれているものと、子供が読むような絵本を買ってやる。

 魔法書と呼ばれる魔法について書かれている本もあるようだ。

 ここの店には二冊しかなく、水と火魔法しかなかった。

 影と風があれば買ったんだけどな。

 二年間自己流でできることを探したが、やはり、先人の知恵はかりたい。


「買い物はこんなもんかな」


 一日でこの前稼いだ額の半分以上使ってしまったが、どれもいい買い物だった。


 買い物を終え、またまたおばあちゃんおすすめ従魔が入れる、肉料理が有名なレストランへと向かう。

 やはり、どの世界でも、おばあちゃんは偉大だな


 一番高いワイバーンのステーキを全員分頼み、食べていく。

 牛もいいが、ワイバーンも恐ろしいほど、いい味を出している。

 うちの子たちは黙々と食べ進める。

 最後のデザートのケーキを食べ俺たちは満足した。





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