第13話 お買い物

「ソーラー、起きてーー」

「きゅう」


 朝っぱらから、ティナとシロの大きな声で目が覚める。


「今日は、お買い物の日だよぉー」

「おはようティナ」

「あのね、ティナも、テトちゃんも、モコちゃんも、シロちゃんも買いたいものあるんだー」

「わかったわかったって。買いに行こうな」

「うんっ」


 テトモコシロも嬉しそうにしっぽをふりふり。


「まずご飯を食べに行くぞ」

 

 俺たちは昨日食べた食事処へと向かう。


「昨日は焼いたお肉だったから、今日はお野菜がいっぱいなの食べるの」

「にー」

「わふーん」

「きゅうきゅー」

 

 みんな思い思いの食べたいもののイメージを伝えてくる。

 シチューとかグラタンなどもあるんだな。

 ここは日本ではファミレスみたいな品ぞろえをしている。

 パスタとかもあるし、以前にきた異世界人が広めたのかもしれない。


 従魔が泊まれる宿の横にあるので、需要があるのか、従魔用に皿も用意してあり、なんともいいお店である。

 この街にいる間はお世話になろう。


 食事を終えたので、買い物をしていこう。


「まず初めにティナの服だね、これは必須」

「ひっすー」


 大通りを歩いていると、服屋さんを発見したので、入ってみる。

 外から見る限り子供服もあった。

 もちろん、店に入る時はモコが小さくなり子犬に。


「すみません、この子の服が欲しいんですけど」

「あら、いらっしゃい、かわいい子だね。でも、うちにはその子が着るような服はないよ。貴族街にお嬢ちゃんが着ているような服はいっぱいあるさね」

 

 おばあちゃん店主が、ティナをみて申し訳なさそうに言ってくる。


「あー、大通りにあったから入ってみたんだが、ワンピースとかはおいていないのか?」

「置いているよ。でもお貴族様だろ?大通りに面しているのはスレイロンでは庶民向けの店が大半じゃよ。ヴァロン帝国の辺境だから貴族の数は少ないが、貴族街には貴族様専用の服屋さんがあるよ」


 おばちゃんがやさしく教えてくれる。


「見てみてっ」


 デーンと自分の冒険者カードを見せるティナ。


「お嬢ちゃんは冒険者もしてるんだね。すごいね」

「でしょでしょ。それでね、外でも着れる動きやすい服がほしいの。ワンピースは走れないからいらなーい」

「それならうちにもあるさね。こっちにおいで」


 ティナは呼ばれておばあちゃんについていく。

 そのあとをシロテトモコの順番でついていっている。

 モンスタートレイン。

 そんなバカなことを考えている間にも、プラチナブロンドが視界で行ったり来たり。

 テトモコシロも意見をいっているようで、ティナもそうだよねーと悩んだり、考えたりしている。

 おばあちゃんは服をティナの前に並べ、うちの子たちが会話しているのを楽し気に聞いている。

 

「どれぐらい買っていいの??」

「んー、十着ぐらいあれば足りるんじゃないか?」

「そうするー」


 三匹と一人で決めたのか、上の服十着と、下のズボン五着ぐらいをきめていた。


「魔物がいるところにいくのなら、防具屋で、ローブか、コートを買っときなよ」

「そうするよ。ありがとな。おばちゃん」

「ありがとっ、おばあちゃん」


 ちゃんとお礼が言えるうちの子えらい。

 俺はうちの子が選んだ、衣服をすべて買い収納に入れていく。

 ここは服の修理もしてくれるみたいなので、またこよう


 おばちゃんの店をでて、おばあちゃんおすすめのヴァロン帝国随一の大商会ベクトル商会に向かっている最中に伏兵が現れた。

 大通りに展開されている屋台通りだ。


 屋台では魔物の肉をシンプルにやいた串やスープ、ウインナー、団子。

 日本で見られる屋台が並んでいた。

 屋台にはのれんもあり、一つ四百円とかの値で売られている。

 絶対転移者のせいだな。

 食事チートの大盤振る舞いだ。


 もちろん、テトモコシロの反応はものすごかった。

 肉串をニ本ずつ買ってやり、ベクトル商会へと歩いていると、近くの屋台から声がかかる。


「おたくの従魔が並んでるのだけど、買うのか?」

「……買う。」

「まいど」


 ティナが教えたのか、ちゃんと律儀に列の最後尾でお座りしている。

 しかもティナの手にはお金が握られている。

 あいつらティナに買わせる気満々だな。

 欲しがっていたスープを買い、少し道の端へとよる。


「みんなよく聞いてね、欲しいものは買っていいのだけど、一応俺にも聞いてほしいかな。ティナだけだと騙されるかもしれないだろ?」

「……うん」

「まあ、大通りに面している屋台は人目もあるし、ティナだけで買うのは許すけど、知らない店に入って、勝手に買っちゃだめだよ?」

「うんっ」

「にゃー」

「わふ」

「きゅう」


途端に元気になるうちの子たち。


「ティナの財布買おうね。でも、いつもはテトかモコの影収納に入れておくこと」

「わかったぁー。買いに行こう」

 

 そしてようやくベクトル商会にやってきた。

 大きな扉をあけ、店に入る


「あら、いらっしゃいませ。うわさの坊ちゃんとお嬢ちゃん」


 赤髪でドレスをきた女性に声をかけられる。

 

「どうも」

「こんにちはっ」

「いきなりだが、どうゆううわさか聞いてもいいか」

「黒と白の魔物をひきつれる可愛らしい幼い兄弟。あなたたちのことでしょ?」

「そうだね」

「昨日は騎士に連れられていたけど、大丈夫だったのかしら?」

「従魔登録につきあってもらっただけだよ」

「それならよかった。悪い大人につかまっちゃったのかと思ったわ」

 

 ほっとしたように息を吐く女性。

 美人な人だな。立っているだけで絵になるってこのことか。


「名乗っていなかったはね。ベクトル商会の会長をしているミランダ・ベクトルよ。」

「どうも、ソラとティナ、黒猫がテト、黒犬がモコ、白キツネがシロだ」

「あら。みんな可愛いらしい名前ね。で、今日はなにを買いに来たのかな?」

「日用雑貨と、俺とこの子の財布だよ。できたらこの糸でティナ、ソラって名前を入れてほしいのだけどできる?」

「これはサイレントスパイダーの糸ね。高価なものだけど大丈夫?」

「まだいっぱいあるからいいよ。どれぐらい必要?」


 手づかみで糸を見せる。


「こんなに要らないわ、二本あればできるわよ。それより、余っている糸を売ってくれないかしら」

「まだ使うかもしれないから、売れる分だけかな」

「どれぐらい売ってくれるのかしら」

「これの五倍くらいかな」

「じゃー金貨五枚でどうかな?」

「んー、価値がわからないしそれでいいよ」

「それでよろしくね。今日買うやつはその金額に含めさせてもらうわ」

 

 それは助かるな。

 俺はほいほいと日用雑貨を箱に入れていく。

 その間にティナはお財布選びだ。お財布といっても、袋みたいなものだが、

 俺は黒色で染められたシンプルなものを。

 ティナは白と黒で染められた。かわいらしいデザインのものを選んでいた。


「テトモコシロは他に欲しいものはあるか?」

「わん」


 テトはクッション、モコは絨毯、シロは花の匂いがする瓶入りの砂をすでに買っている。

 テトモコシロは大丈夫みたいだ。


「ソラ。このスカーフ買いたい」


 ティナが持っているスカーフは水色、赤色、茶色、黒色、白色の五色の五枚だった。


「スカーフ好きなのか?」

「好きだけど、ティナだけのじゃないよ?こうするの」

 

 ティナはシロの首にスカーフを巻き付ける。


「かわいいでしょ?」


 シロも可愛いけど、発想が可愛いよ。

 男だからかもしれないけど、スカーフなんて気にかけてみたこともなかったよ。

 それかお貴族様の教育なのか?

 それならなんとなく想像がつく。

 シロも大きな耳を立て、しっぽふりふりしているので気に入ったのだろう。


「じゃーみんなの買うか」

「えーと、テトちゃんは水色で、モコちゃんは赤色、シロは茶色で、ソラは白色、ティナは黒色だよ」

「テトモコシロは目の色か、俺は?どちらかというと黒のイメージだけど」

「ソラの色つけたいの。だめ?」

「よし、このスカーフの在庫すべてください」

「まって、そんなにいらないよ。無駄づかいはだめ。記念日とかにおしゃれするの」


 うちの天使が天使すぎる件について。

 テトモコは黒をつけたいのか見ているが、お前たちに黒をつけても、全然目立たないからね。シロも同様に。

 ティナのいい提案で、とりあえず五枚と、白黒を三枚ずつ買ってテトモコシロ用にする。

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