第7話 これから
「少しは落ち着いたかの」
「あー、ティナはぐっすり寝ているよ」
「違うわ。ソラのことじゃ。禍々しい魔力が抑えられておらんぞ」
俺のことか。
なるほど、魔力は感情によっても変化するのか。
ドラゴンさんにはお見通しってわけね。
「俺の方も大分落ち着いてきたよ。」
「それならよい。ソラは生まれて二十数年ぐらいだろう?そうやすやすと感情は抑えられるものではない」
「ありがとう。なんかおばあちゃんと話しているみたいだ」
「人間と比べたら長生きじゃからの」
あれ?
今さっきこのドラゴンはなんていった?二十数年といわなかったか?
異世界からきたことは言ったが、年齢なんて言ってないぞ。
ましてや今は子供の姿だ。
「どうして俺が二十数年しか生きていないとわかった?」
「魂をみれば一発じゃ、そやつが悪人か善人かなどもわかるぞ」
「ちなみに、俺はどっちだ?」
「もちろん、いい奴じゃ。じゃないとここにティナを入れてはおらん」
ドラゴンさんのお墨付きをいただきました。
社会に出て荒波に飲まれるまでよかったよ。
もしかしたら悪人になっていたかもしれない。
「魂ってどういう風に見えるんだ?」
「悪人の魂は黒い塊のようなものが見える。逆に善人では白い塊じゃの。白一色というのは大人になれば少ないの。多少なりとも暗い考えをもっているものじゃ」
どの世界でも変わらないのだな。世知辛い世の中だ。
「気になっていたんだが、ティナとドラゴンさんはどうゆう関係なんだ?
「関係というほど深いものはないの。一年前に小さいサイズでアストラ王国を見て回っている時に、モンフィール家の庭でティナに会っての。その時にクッキーをもらったのじゃ。それがうまくての、感謝の印として、呼び声の笛を渡して困ったら呼ぶように言ったんじゃ。そして、呼ばれてみれば従者のような者に殺されようとしておるし、連れ出したはいいもののどこに行けば良いかわからず、ここに来たというだけじゃ。」
「俺がいなかったらどうしていたんだ?」
「前は我もはいれておったからの。ここでティナと過ごすか、人間の街にティナを連れていくかじゃな。まぁ、それもソラがいるから安心じゃ、ティナをまかせたぞ」
「ちょっっっとまて、なんでそこに俺がでてくる?」
「何を言う。嫌なのか?」
「嫌ではない、ただ俺は転移者だぞ?この世界について、死の森以外何も知らないんだぞ?」
「子供なんてそんなもんじゃ、それにソラ達ならティナを悲しませることなんてないだろうと確信しておるからの」
このお気楽ドラゴンめ。
簡単に言いやがるが、子育てってそんな簡単じゃないだろう。
しかも今俺は子供の姿だ。はたから見たら兄弟のように見えるだろう。
「ティナはどう思っているんだ?何か聞いてないのか?」
「どこか行く当てがないかを聞いたがわからないと言われたよ」
わからないか。
まあ、普通五歳ぐらいの子が家以外で行く場所なんてわかるわけないか。
考えつづけていても、煮詰まりそうなので晩御飯の支度を始める。
今日はティナもいるしハンバーグにしよう。
せっせと肉をこね、焼いていく。
部屋に充満する肉のにおいにつられたのか、テトがちかくにやってきた。
「ティナの様子はどうだ?」
「にゃーにゃ」
もう起きたのか。
テトの返事のあとに、モコにのって部屋から出てくるティナが見えた。
「よく眠れた?」
「うん」
「よし、なら食事にしよう。今日はテトモコの大好きなハンバーグだぞ」
「にゃー」
「わふ」
泣いてすっきりしたのか、目は少し腫れているが、笑顔をみせている。
「ん……おいしい」
初めて食べるハンバーグはよほどおいしかったのか。
あふればかりの笑顔で口にハンバーグを運んでいる
「いっぱい食べていいからね、ティナのためにも多く作ったんだから」
「……ありがとっ」
やっぱり笑っているティナは天使だ。
あー、カメラがないことが実に残念だ。
神様今度こそ……。
ダメですよね。
諦めます。
そうこうしているうちにみんなが食べ終わりまったりタイムに。
ドラゴンさんは死の森を探索しに出かけて行った。
ティナはベットの部屋でテトモコとじゃれている。
時々、モコにのってリビングまでやってきたと思ったら、リビングを一周し帰っていく。
何をやっているんだろう。
たしか、遊園地や動物園に動物型の乗り物があったな。
あんまり乗った記憶がないが、子供たちがいっぱい遊んでいた気がする。
まあ、ティナが楽しければいいか。
テトモコがティナをケガさせる心配もないし。
今後のことについて考えているとテトが呼びに来た。
どうやらティナが睡魔の限界らしい。
今日一日疲れただろうからな。
ティナが寝転んでいるベットの横に入り、俺も寝るとする。
翌日、目が覚めると、俺の横に天使がいた。
「ここが天国か……」
寝息を立てているティナの頬っぺたをつんつんしていると、テトモコに強制シャットダウンをくらった。
「なにお前たちやきもちか?」
「にゃー」
「わふ」
声をだした俺を責めるように、口元にテトモコの前足があたる。
ご褒美か?
違うらしい。うるさいと怒られてしまった。
「テトモコ、おはよ。……ソラ、おはよ」
朝のじゃれあいを行っている間にティナは起きてしまったらしい。
「ティナおはよ」
「にゃーにゃー」
「わふわふ」
ちゃんと朝の挨拶を交わす。
ソラって呼んだ。俺のことソラって呼んだぞ。
頭の中でファンファーレが鳴り響いている。
「痛っ」
テトにたたかれてしまった
はいはい。朝ご飯食べようねー。
全員が食べ終わり、これからの話をしていこう。
「ティナ、今すぐに決めるわけじゃないけど、これからについて話そう」
「……わかった」
「初めに聞くけど、家にはもどりたい?」
「いやっ」
即答か。こんな天使なティナが嫌がる家とか最悪だな。
モンフィール公爵家物理的につぶしてやろうか。
「じゃーどこか行くところはある?」
「……わかんない」
ドラゴンさんの話どおりだな。
俺はこれには反対だ。子供の行く当てなんておそらく親戚、友人ぐらいだろう。
すぐにティナの居場所がわかってしまう。
誰が敵であるかも定かでないし、リスクの方が大きい。
「じゃー俺とテトモコと一緒に旅をするってのはどうだ?」
「……ドーラは?」
「我はいかんぞ。」
「ドラゴンさんってドーラっていうのか」
「ティナがそう呼んでおるだけじゃ」
ドラゴンだからドーラね。
単純だけど可愛いらしい名前だ。
そうしている間にもティナはんーんーうねりながら考えている。
「今決めなくてもいいぞ。決めるまで俺はここをでないし、もし嫌ならドーラがここで世話してくれるらしいぞ」
「うむ、ティナが大人になるまで我が面倒みてやる」
「……嫌じゃないよ。テトちゃんモコちゃん好き……ソラも、でも……ドーラいないのさみしい」
「さみしくなったら、笛で呼べばよかろうに」
「何回も呼んでいいの?」
「頻繁に呼ばれてもこまるが、何回でもよいぞ。それに安心せい。ソラとテトモコがおるじゃろう。楽しい旅になるぞ」
「うんっ」
悩んでいた顔が明るくなり、元気のいい返事をするティナ。
「あのね……ティナわからないこと……いっぱいあるの。だからね、ソラにいっぱい教えてほしいの」
「わかったよ。俺もわからないことばかりだ。一緒に勉強していこう」
「うん」
俺の目には満開の笑顔の天使が映っている。
この笑顔を守っていかないとな。
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