第2話 第1クォーター

「第1Qクォーター、両チーム静かなち上がりです。


 ギャラフトは攻撃オフェンス防御ディフェンスを交互に繰り返して、相手ゴールラインを越えて得点しあうゲームですが、攻撃オフェンスでは規定回数のうちに規定の距離以上前に進むことゲインができれば再び攻撃権を得られます。


 1回目の攻撃で、先攻のSTタイタンズは規定以上進むことができず、そのあとのBEイーグルスも無得点、攻撃オフェンスチーム、防御ディフェンスチームが再び入れ替わります。


 エイクマンさん、ここまでの両チームの闘いぶり、いかがでしょうか?」


「ブレイザーもライアンも、悪くないと思うんですが……両チームの防御ディフェンスチームをめたいところですね。


 ここまで勝ち上がってくるチームというのは、攻撃だけで勝ってきたということはまずなくて、ギャラフトは防御もよいチームが勝ち残るものなんです。


 それにやはり、舞台ステージが『ハイパーボウル』ということで、両チームの選手ともにテンション高いですね。集中できていると思いますよ」


「さあ、ここでブレイザーはパスプレイを選択……パス成功コンプリートですが、しかし、あまりゲインはありません」


BEイーグルスのディフェンスラインのプレッシャーが厳しいんですね。


 ここまでSTのオフェンスラインの選手もふんばっていたのですが、一角がくずれました。


 ブレイザーには、それが見えていたので、近くの選手への短く速いパスでしのいだんでしょうね」


「次のプレイもパスですね……おっとまたBEイーグルスのディフェンスがいい働きをしています。


 ブレイザー、たまらずフィールドに倒れてボールをおさえました」


「危ないですね。あわやQBタックルサックという場面です。


 いくらQBクォーターバックの調子がよくても、ディフェンスラインが崩れてしまってはパスを受ける相手レシーバーを探す時間がありませんよ。


 あまり残り時間がないのでパスで稼ぎたいところでしょうが、走るプレイランを入れて、いちど落ち着かせたいところです」


「おっとここで、ブレイザー、またパスプレイだ!


 あーっ、インターセプト! インターセプトです!!


 攻撃権のあるチームのボールを防御側が奪うのがインターセプトですが、いまのパスは不用意だったでしょうか、エイクマンさん?」


「うーん。いまのプレイは……BEイーグルスの選手は本当に集中していて、ブレイザーがというよりもBEイーグルス防御陣ディフェンスチームめたいところですが……ブレイザーもちょっとらしくないプレイでしたね。


 ブレイザーの肩ならば、十分、得点タッチダウンを狙えた位置フィールドポジションでしたが……」


「リプレイがでますね……」


「あ、これはさわってますね……ブレイザーが投げたとき、ディフェンスの選手が手を伸ばして、これでパスの軌道が変わってしまった……それでレシーバーではなく、BEイーグルスディフェンス選手のところへ飛んでしまったんですね」


「このインターセプトビッグプレイで攻撃権はBEイーグルスに移ります。


 おっと、ただいま、統合情報表示板インテグレーテッドインフォメーションディスプレイに”負傷”の文字が表示されています。


 腕部のようですね。インターセプトしたときにタックルを受けて、倒れて手をついたときに負荷がかかり過ぎたようです。


 打撲扱いであれば戦線に復帰できますが……ああ。どうやら骨折扱いのようです」


「ギャラフトのロボットはプレイヤーの能力だけでなく、肉体もシミュレートしているんです。


 ロボットにかかる負荷や衝撃をセンサで絶えず感知し、人体各部の強度と照らし合わせてAIが判定をくだしているんですね。


 だから、ロボットである分身がプレイしてくれて、いくら本人が怪我をしないからといって、受け身を取ったり防具のあるところで衝撃を吸収する技術は必要なんです」


「いまのは、負傷退場だとAIが判定ジャッジしたということですね。


 インターセプトした選手には気の毒なプレイとなってしまいましたが、これは試合の流れを変える大きなプレイとなりました」


「失点を覚悟していたBEイーグルスが……この残り時間が少ないなか、0点におさえることができたのは大きいです。


 逆に、得点できなかったSTタイタンズの選手たちは、嫌な雰囲気にならないようにしないといけないですね。まだ、失点したわけではないので」

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