12月25日④

12月25日

 久しぶり。あけましておめでとう。

 アイさんのことは残念に思う。僕がどんな言葉を綴っても、君には空虚に響くだけだろう。言葉は薬だと言うが、即効性は期待できないから。

 それでも、いくつかは君に伝えようと思う。君のために、あるいは君と一緒に過ごしたい僕のために。


 確か以前にも、君は月経が必要ないと言っていたね。よく、覚えている。あの時から、僕たちの関係は変わっていったんだ。

 僕たち人間の体は様々な方法で不調を訴えてくる。その最たる例が痛みだ。だけど、月経は不調とは違う。言い切ってしまうと怒られてしまうけど、それは病気ではない。痛みがあり倦怠感があり、生活に支障を寄越すが、その期間を抜ければ、またいつもの調子に戻る。だから、だろうか。僕ら人類は女性だけのその月一回の痛みに対して、深く考えてこなかった。「女性特有の、人類が忘れてはいけない生理現象」。そんな風には考えられていた。噂の域に近かったけど。


 うん、本当は答えを知っているんだ。第7深度情報ベースまでのアクセス権限保持者と、人口管理調整課 ジーグン の課長のみが覗ける地下都市運用計画のとある項目に記されていた。ここに、答えを書くつもりはないよ。本当に僕が君に伝えたいことではないし、君もそのうちわかることだからね。

話を戻そう。


 本音を書いてくれて。僕に会いたいと言ってくれてありがとう。悲しみ、痛みに苦しむ君には申し訳ないが、君の望みに少しでも僕が現れたのは、僕にとって名誉であり光栄であり、最大の安心と幸福をもたらしてくれる。

 また、顔を合わせたら君の望みを聞かせて。できれば、素直に。僕も最大限、願いの成就に協力するから。だって、この返事を書いている日はクリスマスだ。

 それでは、君もお元気で。

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