12月25日③
12月25日
久しぶり。手紙はちゃんと届いているよ。とんでもなくラグがあるけれど。おかげで今、僕は愛する家族に冷たい目で見られながら必死にこうやって返事を書いています。ああ、勘違いしないでほしい。義務感とかじゃないから。僕がやりたくてやっているだけ。
今回はアイさんのお話だね。僕は会ったことが無いけれど、きっといい人なんだろう。僕が言えた義理じゃないが、君も人付き合いが得意ではないからね。そんな君と仲良くしてくれる彼女だ。できれば、僕も会ってみたかった。
それに、彼女の恋人も有深度情報ベースにアクセスできるということは、もしかしたら僕と同じ仕事をしているのかもしれない。そうでなくとも、きっと近しい仕事だろう。もしかしたらすれ違ったことぐらいはあるかも。
名前がわかれば、すぐに調べられるけれど、よしておく。もし、その彼に会ったとしても、僕はかける言葉を持ち合わせていないからね。僕がどんなに言葉を取り繕っても、彼の傷口を開くことになる。もう癒えているのかもしれないし。でも、アイさんと短いながらも長く一緒にいた君になら、その資格もあるんじゃないかな。なぜなら、君の語る言葉は彼のためのモノじゃない。アイさんのための。あるいは、アイさんから託された言葉。死者への追悼を含んでいるはずだから。もし、その機会を君が得ようとするなら、僕は協力するよ。僕の仕事はその側面もあるから、意外と早く見つかると思う。
君が僕の知らない人の話をするなら、僕は君も知っている人の、君の知らない話をしよう。
ミフネ教官のことだ。君も知っての通り、ミフネ教官はけっこうな齢だったからね。君が最終決戦へ出発してから2カ月後に亡くなった。大きな病気もせず、穏かに眠りにつけたのは幸いだったかもしれない。こう思うのはエゴかもね。君が僕の生きる目的をくれた人だとしたら、ミフネ教官は、僕に生きる道を示してくれた人。
間違いなく、僕の恩人だから、苦しまずにこの世を去ったことを良かったと考えてしまう。
さて、ミフネ教官は実に様々なことを教えてくれた。地下都市に引きこもり、紀年法を
この兵器は人類史上使われたのは4度しかないそうだ。しかも、そのうち同じ2回は同じ国家、同じ年に落とされた。そして、最後の2回はそれぞれ一国ずつも滅亡させたらしい。第6深度情報ベースを漁ってみても、この歴史は確認できるけど、兵器の名前までは確認できないから、僕たちの先祖はどうやっても忘れたかったらしい。
実は、僕はこの兵器の名前を知っている。そう、ミフネ教官に教えてもらった。あの人は、僕より深い情報ベースに入り込めたんだろうね。ただのおじいちゃん先生だと、僕たちは笑っていたけれど、実は凄い人だったのは確かだ。
また、お互いが知らない思い出話をしよう。
それでは、お元気で。
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