11月29日

11月29日

 久しぶり。お元気ですか。返事は来ませんが、手紙を送ります。補給は届いているし、物資班曰く、ちゃんと荷物は届けていると言っているけど、本当かな。もし、本当だとしたらアナタが私の予想通り、手紙を読んでいないだけ? もしそうだとしたら、怒るから。


 なんてね。他の人も返事が来ていないから、届いていないか、もしくは返事を出してくれていても私たちのもとには届けてくれていないのでしょう。私はアナタのことを信じます。


 今日は、私の友人アイについて話をします。何度か名前を出しているけど、ちゃんと紹介するのは初めてよね。

 彼女は私と同じ班に配属されて、そのおかげで移動もベッドも隣通しになることが多いの。髪は綺麗な金色、それこそこの前手紙で書いた月みたいな色をしている。


 それに、彼女はとってもいい人よ。いい人の定義は迷うけど、よく周りに気が付いて、救いになろうとしている。私たちは、地下都市から外に出たと言っても、閉鎖的な集団生活を送っています。それこそ、軍規も厳しくて、地下都市より狭い空間に閉じ込められている感覚だからね、どうしてもいざこざが起こっちゃう。そんなとき、彼女は誰であってもまず話を聞きに行くの。話を聞いて、それとなくどちらも得をして損をする案を出して、その場を収めてしまう。


 気が付いても見て見ぬふりをしようとするアナタとは違うね。つい、手が出てしまう私とも違う。私たちには持っていない優しさを彼女は持っている。あ、勘違いしないでね。私のことだけは面倒ごとにも突っかかってくれるのは知っているから。うん、今回は私とアナタの話じゃないからこれでおしまい。アイの話に戻すね。

 アイにも、地下都市に残した恋人がいるそうです。その人とは婚約もしていて、戦争から戻ったら結婚して、人口調整管理課 ジーグンに二人の子供の出生予約を取り付けるみたい。うん、ちゃんと順序を選んでて偉いね。どこぞの私たちとはやっぱり大違い。


 でもね、アイがもし帰れずに死んでしまったら、その恋人は何も得られないのよね。そう考えたら、私たちの選択は間違っていなかった。半ば勢いだったから、人口調整管理課が非推奨とする、【性行為から24時間以内の遺伝子情報の提出】を思いっきり抵触したけど。問題なく、出生可能と予約できたからセーフ。仕方ないよね、その3時間後に招集かかっていたんだし。

 

 一応、出生予定日は作戦終了から帰投時期に間に合うようにしているから、大丈夫だとは思うけど、もしものときはお願いね、●●≪ここは黒塗りで塗りつぶされている≫。やっぱり、まだアナタと呼ぶことにする。


 アイと話をしていると、アナタを思い出して、熱が入っちゃう。本当はもっと彼女のことを知って欲しいのに、アナタと私について確認しちゃう。

 うん、わかってると思うけど、私にしては珍しく甘えてるんだからね、これ。

 もう少し早くアナタに対して素直になっとけばよかったとそう思います。帰ったら取り返す勢いで。

 それではお元気で。

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