全員集合の朝

 スコルと少し話をしたり、なんだかんだしていれば眠気に襲われた。

 ベッドに寝転がってゴロゴロしていれば、いつの間にか寝落ちしていた。


 ふと目を覚ますと、外は明るく日が昇っていた。

 起き上がるとスコルの姿はなく、恐らく朝支度へ向かったのだろうと推察。


 俺は部屋を出て、これからのことを考える。


 ……聖戦に誰が参加するか?


 自分が出てもなぁ……皇帝になる意味もない。

 誰か代わりを探さないと。


 城内をぐるぐる歩いていると、誰かとぶつかりそうになった。



「……っと、ごめん」

「あ、こちらこそ」

「って、スコルじゃないか」

「ラスティさん。おはようごじゃます」


 なんか噛んでるし。

 頭にタオルを乗せ、体が火照っている。風呂上りっぽいな。

 それにしても、いつものシスター服ではなく……可愛らしい寝間着ネグリジェだ。体のラインはクッキリ。純白がまぶしいな。


「おはよ。朝ごはん食べよっか」

「はいっ! みなさんも来る頃合いかと」

「よし、食堂へ向かうか」

「了解ですっ」


 スコルは楽しそうに俺の腕に抱きついてくる。

 一緒に食堂へ向かう。


 少しして到着。


 中へ入ると――え?


 なんか……いるな。


 俺もスコルも足を止めた。

 いや、俺はスコルを庇うようにした。


 なんで部外者がここにいるかな。

 しかも、コイツは前に帝国へ帰ったはずだ。



「……よう、ラスティ」

「よう、じゃないよ、グランツ」



 椅子に座り、机に足を投げ出しているグランツの姿があった。例の刀も大切そうに持っている。あれはテレジアが化けている。


 彼女がグランツを帝国へ連れていく手筈だったが、失敗したか。



「ラスティ! てめぇとの戦いはまだ終わっちゃいねぇ! まだ負けてないんだ」

「てか、元老院議長の息子がこんなところでウロウロしていていいのかよ。聖戦だってもう始まるぞ」


「うるせえ。ロイヤルガーディアンが定住しているんだろ。なら、いいじゃねぇか」



 なんでスケルツォのことを知っているんだよ、コイツは。

 昨晩見ていたのか……?



「――で、用件はなんだ?」

「お前との再戦……は、望まない」

「望まないのかよ。じゃあ、なにしにきた」

「テレジアがうるせぇからな。戦いはしないが、この島国ラルゴのことを知りたい」

「なんだそりゃ。聖戦は放っておいていいのか? 誰かが皇帝になっちまうぞ」

「むろん、皇帝には俺がなる。だが、今はラスティ……お前のことが気掛かりだ」

「なんだ気持ち悪いな」

「う、うるせぇ! とにかく、お前が何者なのかを見極める必要がある」

「意味わからん」


 なにがしたいんだコイツは。

 俺を襲ったり、かと思いきやラルゴに滞在するようかのような口ぶり。


 けど俺を襲うことはしないらしい。

 テレジアが強く言い聞かせているようだが、信用していいのかなぁ。彼女も元老院のひとりなんだがね。


「あ、あの、ラスティさん、こちらの男性は?」

「そっか。スコルはあの時いなかったんだよな。この妙な男はグランツだ」


 そう紹介するとグランツは机を叩いた。


「おい、終わりかよ!」

「当たり前だ。なんで他人のことを細かく紹介しなきゃならん」


「ふざけんな! 俺は元老院の最高議長の息子……グランツ・ヴァンデルハート様だ! レオポルド騎士団の元騎士団長アルフレッド・スナイダー卿から直々に剣術を習い、剣技を極めた」


 自慢気に話すグランツ。

 コイツ、アルフレッドから剣を教えてもらっていたのか。

 結構強いと感じたが、そういうことか。



「わー、すごいですー!」



 ぱちぱちと拍手するスコル。

 たぶん、優しさ100%だろうな。



「さ、さすがエルフは分かっているな。ふ、ふふ……」



 グランツはまんざらでもないと満足気だった。それでいいのかよ。

 しかし、厄介な客が増えたな。

 どうしたものか。


 そんな中、みんなが続々とやってきた。


 ハヴァマールにストレルカ、ルドミラやエドゥ、珍しくテオドールとアルフレッド、ルサルカさんも集まった。


 これ、説明しないといけないよなぁ――。

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