誰が皇帝になるのか?

「じゃあ、そろそろ帰るよ」

「分かりました。誰が皇帝になるか、まだ定かではありませんが……もしわたくしに出来ることがあれば言ってください。それではラスティ様、ストレルカ様もまたお会いしましょう」


 最後まで見送ってくれるスケルツォ。

 しかも、ワープポータルも出してくれた。

 どうやら、街中の座標を持っているらしく、一瞬で転移できるようだ。こりゃ助かる。


「おやすみ!」

「おやすみなさいませ」


 俺とストレルカは、ワープポータルの中へ飛び込んだ。



 ◆



 街中へ戻った。

 周囲はかなり暗くなっていて、人はほとんどいない。

 思わずアクビが出て、もうかなり遅い時間だと実感した。ストレルカもかなり眠そうだ。


「帰ろう、ストレルカ」

「そうですね、ラスティ様」



 城までは歩いて向かい――到着。

 アルフレッドが城門に立っていて、心配そうな顔をしていた。



「ラスティ様、ようやく戻られたのですね」

「心配かけたな。すまん」

「いえ、それはいいのですが……いったい、どちらへ?」


 俺は、湖の小屋にスケルツォが住んでいたとアルフレッドに話した。すると、かなり驚いていた。


「なんと……あのロイヤルガーディアンのスケルツォが」



 立場上はスケルツォの方が上なのだが、アルフレッドは呼び捨てにしていた。まあ、もう帝国とは関係がないから、そういうモノなのかな。



「俺も驚いたよ。まさか島国ラルゴに移住しているとは」

「なにかあったのでしょうか」

「聖戦の影響だってさ」

「そういうことでしたか……」


 納得するアルフレッド。


「俺はもう寝る。ストレルカの方を頼む」

「分かりました。それでは、おやすみなさいませ」


 ストレルカのことはアルフレッドに任せた。


「おやすみなさい、ラスティ様」

「ああ、ストレルカ。今日はありがとう」

「いえいえ、また誘ってくださいませ」


 素敵な笑顔を向けられ、俺は眠気が吹っ飛びそうになる。

 ストレルカは本当に気品にあふれ、上品だな。


 俺は部屋へ戻った。


 扉を開けるとスコルが走って向かってきた。



「ラスティさん!」

「お、おっと……スコル。起きていたのか」

「ふと目を覚ますとラスティさんの姿がなくて……どこへ行っていたんですかぁ!」


 涙目で飛びついてくるものだから、俺は受け止めるしかなかった。アルフレッドと同様に、心配させてしまったか。


「すまない。ちょっと街を回っていた」

「街を、ですか」

「ああ、でも収穫があった。なんと湖にスケルツォが住んでいたんだよ」

「え……!」


 さすがのスコルも驚いていた。

 俺はスケルツォがパティシエさんだったこと。聖戦のことも含め、詳しく説明した。


「――というわけなんだ」

「えぇッ! パティシエさんって、スケルツォさんのことだったんですね!?」


「って、スコルは会っているはずなんだけどなぁ」

「ごめんなさい。本人だとは思わなくて……」



 ソックリさんか何かかと思い、気づかなかったわけか。

 てか、ハヴァマールのヤツも気づいていなかったようだがな。

 おかしいな、一瞬は顔を合わせているはずなんだけど。


 ニールセンとの戦いの時は、交流会とかしている暇もなかったからなぁ。


 仕方ないと言えば仕方ないのだろう。



「ともかく今日は寝よう。聖戦の日も近いし、一度帝国へ向かう必要があるかもしれない」

「分かりました。わたしに出来ることならなんでもします」

「ありがとう、スコル。一緒にいてほしい」

「……はい、ラスティさん。……す、好きですよ」

「お、おう。俺もだ」


 抱き合うようにして、俺はスコルの存在を感じた。

 小さくて可愛くて、良い匂いがして……俺の心の支えだ。

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