エルフの国・ボロディンの聖者
「もういい……トルクァート! お前はここで沈め!」
これで本当の最後だ。
トルクァートも察したのか、逃げるように背を向ける。そうか、最後の最後に逃げることを選択したか。
「ダークエルフは終わらん! この世界を闇に包むまでは!」
「闇ではない。あるのは光だけだ!」
最後の魔力を込め、俺はグングニルの光を解放した。
それは瞬く間にトルクァートに追いつき、背後から飲み込んだ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……!!!」
光によって闇が消えていく。
トルクァートの体も浄化していった。
これで……終わった。
ヤツの黒い気配も消えてなくなっていた。
「ラスティさん、やったのですね……」
「ああ、トルクァートは消滅した」
その後、俺はセインを捜索した。ユーモレスク宮殿がほとんど崩壊しているせいで、どこにいるやら……。
……お、セインの気配があった。
「あ、セインさんです!! あそこに倒れているようです」
スコルの指さす方向、庭にセインが倒れていた。あんなところに!
駆け付けて容体を見てみた。
「大丈夫か、セイン!」
「…………っ」
よかった、息はある。
「スコル、大至急でヒールだ!」
「分かりました!!」
スコルは直ぐにヒールを施してくれた。セインの傷が治癒していく。
よし、これで安静にしていれば回復する。
一緒に戦ってくれたエルフたちもスコルに任せ、治療を任せた。
その後、セインが回復して意識を取り戻した。
「……ラスティ様」
「セイン、終わったぞ」
「さすがです。これでボロディンに平和が訪れるのですね」
「ああ、もうダークエルフもオークもいない。残りはエルフたちが討伐してくれたからな」
「良かった……」
セインを連れ、ユーモレスク宮殿の外へ出ると――街のエルフたちがこちらに歩いて来ていた。凄い人数だ。
「ラスティ様万歳!!」「オークとダークエルフが倒されたと聞いた!!」「ボロディンは救われた、ありがとう!」「ラスティ様のおかげです!!」「スコル様もありがとう!!」「さすが聖女様!!」「これでもう安心だ!」「助かった! 本当に助かった!!」
多くの歓声が俺の耳に届く。
そんな群衆の中のひとりがこう叫んだ。
「偽の聖者・トルクァートは死んだ! となれば、ラスティ様、あなたこそがボロディンの王に相応しい! どうか、我々を導いて欲しい」
「おいおい、待ってくれ。俺は人間だぞ」
「その通りです。ですが、あなたは英雄だ。島国ラルゴと同盟が組めれば未来は約束されたも同然。反対の者はいないはず! そうだろう!?」
エルフがそう周囲に賛同を求めると、連鎖するように同意が広まっていく。
いや、だが俺ではない。
そうだ、共に戦ってくれた彼こそが王に相応しい。
「聞いてくれ、みんな! 俺の隣にいるこのセインが本物の“聖者”だ。彼はハーフエルフだが、エルフの血も流れている。彼こそボロディンの王に相応しい」
俺がそう紹介すると、みんな騒然となっていた。
「あの少年が!?」「ハーフエルフか……いや、もう差別の時代ではないな」「確かに、スコル様と同じ雰囲気を感じるな」「あのオーラは間違いない。聖者だ」「聖人に認められたってことか」「となれば彼がボロディンの王じゃね?」「ラスティ様も認めている」「彼も活躍したと聞く」
どうやら好感触のようだな。
「セイン、彼等は君を認めてくれた」
「ぼ、僕ですか!?」
「ああ、君は聖者だ。これからボロディンを率いて欲しい」
「……ですが」
「頼む。でないと人間の俺がボロディンの王にされちまうよ。それはちょっと違うだろ」
「ラスティ様がそこまでおっしゃるのなら……分かりました」
少し納得がいかないのか、それでも了承してくれたセイン。これからは彼がボロディンの王にして、真の聖者だ。
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