共和国が狙われている

「驚いたか、ラスティ」


 じわじわと距離をつめてくるアンノウンたち。このギルドはずっと前から、俺たちをハメる気でいたんだ。

 どうして気づかなかったんだ……!


「ひとつ聞かせろ、アンノウン。お前たちはどうやって、ここまで来た?」

「この幻影ダンジョンの至るところに“落とし穴”があったはずだ。あれは他の場所にも存在する。ここに通じる穴もあるわけさ」


 そうか!

 ダンジョンに入って直ぐに落とし穴に落ちたっけ。ああいう穴がたくさんあるんだ。

 だからここに辿り着けたんだ。


「俺たちをわざと先に行かせたのか!」

「ああ、あのイリュージョンというバケモノは、我々のメンバーを七人も殺した。行き詰っていたところ、お前の噂を聞いてな」


 俺たちの力を利用したわけか。

 なんて卑怯な。

 ルドミラも同じように怒りを滲ませていた。


「……許せません! ラスティくん、このギルドは潰さないと今後も被害者が出てしまいます」


 そうだ、その通りだ。

 殺人ギルドなんて存在しちゃいけない!

 コイツ等は自分のことしか考えない身勝手で、人のモノを奪うことしかしない犯罪集団。壊滅させるべきだ。


 ゲイルチュールを握り、俺は殺人ギルドに立ち向かった。



「アンノウン! フランク! お前達まとめてぶちのめしてやるッ!」

「まあ、まて。古代の魔法石エンシェントストーンを寄越せば命は取らないでやる。それでどうだ?」


「ふざけんな!!」


 コイツ等と交渉する価値なんてない。

 くれてやるのは天誅だけだ。

 グラズノフ共和国の為にも、俺は正義の鉄槌を下す。


 地面を蹴り、俺は瞬時にアンノウンの前へ。



「チッ……噂通り早いな! だが、この為に俺様はボディを鍛え上げた……! 刮目せよ、『鉄壁の肉体フルボディ』を!!」


 俺は構わずゲイルチュールを振るったが、アンノウンの肉体が異常に固かった。な、なんだ……まるで鋼みたいに!

 コイツ、防御力特化か!


「……っ!」

「ふははは、どうだ。俺様の肉体は傷つけられないだろう。お察しの通り、防御力に全振りしている」


「じゃあ、火力はたいしたことねぇよな! 攻め続ければ勝てるさ!」



 シグチュールに変え、俺は槍を突き立てようとしたが――フランクが珍しい武器を使い、俺の武器を弾いた。


 こ、これは……!


 両腕に装着する『カタール』か!


 腕にはめ込まれた剣というのか。

 穂先が鋭く尖っていているだけではない……あの先には毒も塗ってあるな。危険だ。



「ヒヒヒッ! ラスティ、この武器を見るのは初めてだろう! このカタールは攻撃速度も高いんだぜ!! オラオラオラオラ!!」



 とてつもないスピードでフランクが攻撃してくる。な、なんて素早さだ。目で追うのが精一杯だぞ。

 気づけば、ルドミラたちも他の殺人ギルドメンバーと交戦していた。


 せめて、スコルは守らないと!!



「スコル!」

「だ、大丈夫です。わたしだって戦えますから!」



 焦りながらもスコルは魔法を唱え始めた。そうだな、信じよう。


 俺はシグチュールを保ったまま、フランクのカタール攻撃をさばいていく。



「フランク、お前は良い奴だと思ったんだがな」

「人間には必ず裏の顔が存在するものさ。簡単に人を信用するもんじゃないぜ!」

「そうだな、よく学んだよ。この殺人鬼野郎が!」

「なんとでも言え。我々は古代の魔法石エンシェントストーンを手に入れ、グラズノフ共和国を乗っ取ってやるんだからな!!」


「なに!?」



 コイツ等の狙いは、共和国なのか……!

 なら、ここで食い止めないと、せっかく復興した共和国が再び酷いことに。



「させません! ホーリークロス!!」



 スコルの聖属性魔法が飛んできた。それはそのままフランクに激突。かなりの距離を吹き飛ばした。



「ぐおおおおおおおおおお!?!?」



 ナイス、スコル!!

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