ギルドの計画

 イリュージョンが性懲りもなく『幻覚』を放ってくる。けれど、スコルが無効化してくれた。助かった。もう効かないぞ。


「そんな幻覚で俺たちを倒せると思うなよ!」

『……おのれ!』


 今だ、ここで魔力を最大限の高め、槍を!



「穿て、聖槍・グングニル!!!」



 思い切りグングニルを投げつけ、イリュージョンの右手に激突させた。するとイリュージョンは槍を食い止めようと必死に掴もうとする。

 けれど、グングニルの勢いはそれを上回った。



『な、なんだこの槍は……!』

「それは魔力の塊だ。ただの槍じゃない」



『クソォォォォオ――ギャアアアアアァァア……!!』



 抵抗虚しくイリュージョンの右手は、グングニルによって貫かれた。これで片方を潰した!

 左手の方もルドミラとストレルカの激しい攻防によって、だいぶ押していた。あれなら、左手も潰せそうだ。



「観念なさい、イリュージョン!」

『ルドミラ……貴様だけは許さん!』

「まだそんな世迷言を」

『貴様だけでも道連れにしてやるッッ!!』



 冷静なルドミラは、覚醒アマデウスの一撃を放った。



「クオド・エラト・デモンストランダム!」



 一直線の伸びる膨大な魔力。光の柱がイリュージョンの左手に命中するや、消滅させていく。な、なんて威力だ……。こんなスキルがあったのかよ!


 しばらくしてようやくスキルが収まった。


「ルドミラ、凄いな」

「いえ……これを使うとしばらく反動で動けなくなるのが玉に瑕で……」


 彼女の言う通り、ルドミラは痺れて動けなくなった。これが欠点というわけか。けど、あの一撃を放てるのなら安い代償だ。


 おかげでイリュージョンを撃破した。


 更に付け加えると――。



「兄上、凄いのだ! あのイリュージョンが『古代の魔法石エンシェントストーン』を落としたのだ!!」


 ハヴァマールが石を拾って見せてくれた。

 この七色の石こそ『古代の魔法石エンシェントストーン』だ。



 [古代の魔法石エンシェントストーン]

 [効果]

  このアイテムは消費しない。

  転移スキルなどの触媒が不要になる。

  所持者の魔力を高める。

  詠唱時間を減少させる効果もある。



 そうか、あのイリュージョンが持っていたんだ。

 これでやっと目的達成っと!


 もう幻影ダンジョンに用事もない。さっさと島国ラルゴに帰って、トレニアさんにこの『古代の魔法石エンシェントストーン』をプレゼントしてあげよう。


 遺跡の風景に戻った部屋。

 出口も現れたので俺たちは出口を目指そうとした――のだが。



「やっとイリュージョンを倒してくれたか!」

「待ちわびたぜ、ラスティさんよォ!!」



 ぞろぞろと部屋に入ってくる男達。

 あれはダンジョン前にいたアンナプルナか!


 フランクとアンノウンが俺たちを取り囲む。こいつら、どうやって幻影ダンジョンに入ってきた!?


「ラスティ様、これはいったい……」


 ウォーターウォールを張っていたはずのストレルカが焦っていた。そうだ、ストレルカの魔法スキルで侵入できないはず。なのに、コイツ等はどこから……?



「驚いているようだな、ラスティ」



 アンノウンがニヤリと笑う。

 もしかして“別ルート”があったのか?



「この機会を待っていた、というわけか」

「そうだ。お前達がイリュージョンを倒すと確信していた。見立て通り『古代の魔法石エンシェントストーン』をゲットしたようだ。あとは分かるな?」


「横取りとはダセェ真似してくれるな」

「なんとでも言え。……なぜなら、俺たちは殺人ギルド・・・・・なんだからなァ!!」



「――な!」



「モーリスとグレイが世話になったようだな。だが、ヤツ等のことはどうでもいい。どうでもいいが、貴重な情報を寄越してくれた。……そう、島国ラルゴのことさ。ラスティ、お前の島もいただくぜ!!」



 そうか……最初から計画していたんだ。コイツ等!!

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