聖女と世界聖書の力

 スコルのおかげで目が覚めた。

 どうやら、聖女には幻覚が通じないらしい。それとも世界聖書が守ってくれたのか。どちらにせよ、スコルがいなかったら心が破壊され、永遠に幻の世界の中だったかもしれない。


「安心してください、ラスティさん。皆さんも直ぐ起こしますので」

「出来るのか?」

「はい、わたしと世界聖書の力があれば」

「分かった、頼む」


 闇の中でスコルは力を発揮する。

 白い光があふれてくる。

 物凄い凄い魔力だ。


 そうか、二つの力が合わさっているんだ。


 次第に、ハヴァマールやルドミラ、ストレルカの姿が現れた。幻覚に囚われていた皆が帰ってきた。


「……む。こ、ここはどこなのだ?」

「気づいたか、ハヴァマール! 俺たち、イリュージョンに幻覚を見せられていたんだ」

「幻覚!? そ、そうか……あれは幻だったのか」


 いったいどんな幻を見ていたんだか。

 それから、ルドミラとストレルカも目を覚ました。


「こ、ここはどこです?」

「気づいたか、ルドミラ。スコルが幻覚を解除してくれた」

「そういうことですか……」


 あとはストレルカだが――。


「気分はどうだ?」

「お気遣い感謝します、ラスティ様。ええ、大丈夫です」


 みんな何とか大丈夫そうだ。

 となれば、あとはイリュージョンをぶちのめすだけだ。



「おい、イリュージョン! どこかで聞いているんだろ。お前の幻覚はこの通り、綺麗さっぱり消えてなくなった!」


『おのれ……我が幻影スキルを打ち破るとは。まあいい、幻覚が効かぬのなら直接貴様たちを地獄に送るまでよ』


 また手が現れ、俺を蚊のように潰そうとした。けれど回避して、俺はイリュージョンにヴェラチュールの斬撃攻撃を加えた。


「くらえッ!!」

『こ、小賢しい真似を!!』


 右手と左手が自由自在に動き回り、今度はルドミラとハヴァマールに襲い掛かった。そうくると思ったぜ!


 瞬間で移動して俺はハヴァマールを庇った。


「あ、兄上!! すまんのだ!」

「構わんさ! てか、大切な妹に手を出すんじゃねえ!!」


 サンダーブレイクを放ち、イリュージョンにダメージを与えた。だが、こほんの僅かに傷を負わせた程度だった。ダメか。


 一方でルドミラが覚醒アマデウスを振るい、左手と交戦していた。あっちは任せよう。

 俺は右手を対処することに集中する。


「ラスティさん、再支援しますね!」

「ああ、頼む」


 スコルからキリエ、グローリアの補助支援してもらい、パワーアップ。基本的な能力と移動速度が上がった。


「では、わたくしはルドミラさんを補助します!」

「分かったよ、ストレルカ。そっちは頼んだ」

「はいっ」


 二手に別れることになった。

 これなら少しは戦いやすい。

 俺はヴェラチュールをいったん収め、聖槍・グングニルを構えた。これでいく……!


 この一撃で決めてやる。

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