深夜の世界ギルド

 テレポートで帰還を果たした。

 これで殺人ギルドによる海底ダンジョン不法占拠事件は解決だ。


 拠点のお城へ戻り、ブラッドレイを床に寝かせた。


「スコル、彼を治癒してやってくれ」

「分かりました。ではヒールを施します」


 瀕死のブラッドレイに対し、スコルはヒールを発動。すると、凄まじい回復力で彼の傷が癒えていく。

 これが万能の聖女の力。


 傷は癒えたが、ブラッドレイは意識を失っている。


「彼は私の植物が運ぼう」


 テオドールの植物モンスターがブラッドレイの体を持ち上げて運ぶ。なるほど、あの人型の植物が運んでくれるのか。少女のようだけど力持ちだな。


「その植物は?」

「彼女はドリアード。パワー型なので、かなりの力持ちなんだ」

「へえ、凄いな」

「うん、実はドリアードは私のお気に入りでね。最近は召喚していなかったんが、たまにこうして使ってあげないと拗ねるのでね」


 それで今は使ってあげているわけか。

 あのドリアードに任せて、俺はいったん部屋へ戻った。


 スコルとルドミラはお風呂へ行ってしまった。なので、俺は珍しくひとり。

 たまにはいいさ。


 フカフカのベッドに身を預けて眠りたい。


 久しぶりに自室へ入り、俺はベッドへダイブした。


 うん、最高。

 このまま眠ろう。

 最近まともに眠っていないし、随分と疲労が溜まっている。



『…………』



 ふと目を覚ますと、暗闇に包まれていた。どうやら、夜になってしまったらしい。

 スコルたちが起こしにこないなんて……ああ、そっか。そっとしといてくれたのかもしれない。


 部屋を出て廊下を歩く。

 帝国製魔導ランプのおかげで視界は良好。


 腹が減ったので一階のキッチンへ向かった。


 なにか余りものがあればいいんだけどなぁ……。


 到着すると果物がいくつかあった。これでいいや。


 お、いつしかの『ドラゴンフルーツ』が余っているんだな。これ、甘くて美味しいんだよな。

 ナイフで食べやすく加工していく。

 形を整えて刻んでいった。

 ……こんなところか。


 さっそくドラゴンフルーツを食べてみる。


「うまっ! 脳が回復していく……寝起きには丁度いいな」


 夢中になって食べていると気配を感じた。

 誰か来たらしい。


「……おや、ラスティ様」

「ん、なんだ、アルフレッドか」

「はい。なにやら気配を感じ気になったもので」

「心配するな。城内には警備の為のゴーレム兵とアクアナイトがたくさんいるからな」

「そうですね。ところで、ラスティ様はお食事のようですね。せっかくですし、なにかお作り致しましょうか」


「んや、このドラゴンフルーツでいい。美味いな、これ」

「それはグラズノフ共和国から贈られてきたものです。ブレア姫からの贈り物ですよ」


 ああ、これはブレアが。そういえば、彼女に挨拶していなかった。近い内に共和国へ向かい、一度お礼を言わねばな。

 グラズノフ共和国の同盟があったから、この島は守られていた。


「もっと欲しいな。輸入してくれ」

「では、頼んでみましょう」

「頼む」


 ドラゴンフルーツでお腹が満たされた。

 これは回復力もあるし、栄養価も高いし素晴らしい食べ物だ。このラルゴにも流通させよう。


 満足したところで俺は席を立った。


「ラスティ様、お部屋に戻られますか?」

「いや、俺は夜のラルゴを歩いてみようと思う」

「では、私もご同行を」

「分かった。たまには二人で散歩も悪くないかもな」

「ええ、それにラスティ様の身が心配ですから」


 心配性のアルフレッドを連れ、俺は城を出た。思えば、アルフレッドが蘇生してから、こうして二人きりで過ごすのも久しぶりな気がする。


 外へ出ると煌々とした月明かりが迎えてくれた。


 夜道を歩き、ラルゴの中心街へ。

 深夜であるせいか、灯りはそれほどない。

 ただ、冒険者ギルドはオープンしていた。そういえば、あそこは朝も夜も関係なく営業しているようだ。世界ギルドとはそういうところだと、以前にトレニアさんから聞いたことがある。


「アルフレッド、冒険者ギルドへ行こう」

「分かりました」


 ギルドに入ると、さすがに疎らだった。

 五人もいないか。


 受付嬢がひとり。

 あとはギルドがいるだけか。


 ――って、あの受付嬢は!


「トレニアさん、こんばんは」

「あら、ラスティ様ではありませんか。珍しいですね」

「いやいや……こっちのセリフだよ。こんな夜遅くまで勤務かい?」

「いえ、私は交代で今から仕事なんです」


 つまり夜勤ってことか。立派だな。


「そうか、世界ギルドの為に頑張っているんだね」

「といいますか、ラルゴの為です」

「え?」

「ラスティ様に認められたくて……なんて怒られますかね」


 少し申し訳なさそうにトレニアさんは笑った。


「そんなことはない。島の為なんて主として嬉しい限りだよ。ありがとう」

「……よ、良かった。そうです! こんな時間に会えたのも何かの縁。お茶を淹れますね」


「仕事は大丈夫かい?」

「ええ、この時間帯は冒険者がほとんど来ませんので大丈夫です」


 そう言ってトレニアさんは奥へ行ってしまった。

 しばらくテーブル席で待っていてと言われたので、そうすることにした。


「いや~、ラスティ様。トレニアさんは相変わらずお美しいですね」

「ああ、そうだな。おかげで冒険者ギルドの看板娘というか、だいぶ人気があるらしい」


 日々男性ファンも増えているのだとか。ちょっと心配だな。

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