帝国の終焉と上級監督官の誕生

 ドヴォルザーク帝国と神聖王国ガブリエルの戦争は終わった。

 俺たちは戦場から撤退。

 帝国へ戻った。


 スターバトマーテル城へ帰還すると、スケルツォが出迎えてくれた。


「ご無事でなによりです、ラスティ様」

「もう耳に届いているかもしれないが、戦争は終わった」

「ついに終わったのですね」

「ああ、後の処理はルーシャスに任せる」


 納得するスケルツォ。

 俺は明日にはラルゴへ戻ると伝えた。


「そんな、ラスティ様……皇帝になられるのでは」

「この国に皇帝は必要ない。このシベリウスを上級監督官に任命する」


 俺が指定すると、シベリウスは驚いて声を上げた。絶叫さえしていた。



「なにいいい!? この僕が!?」

「この国はもう帝国ではない。お前が統治するんだ」

「な、な、なぜ……ラスティが相応しいだろ!」

「俺には島国がある。それで十分なんだよ」

「しかしだな」


 焦りまくるシベリウス。

 確かに、門番ばかりやらされていたコイツには荷が重すぎるかもしれない。けど、親友だからこそ頼みたいと思った。

 なによりも、あのアルフレッドの息子だからな。


「お前になら出来るはずだ」

「……分かった。そこまで言うのなら、僕が受け持つ」

「頼んだぞ、シベリウス」


 全権をシベリウスに託した。きっと彼なら良い国にしてくれるはずだ。なぁに、スケルツォもいるし実際の仕事は彼女がほとんどやってくれる。


「スケルツォもよろしく頼む」

「それがラスティ様の望みであるのならば」

「期待しているぞ」

「……はい。ところで、ルドミラをお借りしたいのですが」


 ビクッと反応するルドミラは、一歩引いていた。なんだ、スケルツォと顔見知りだったんだ。それもそうか。もともとルドミラはドヴォルザーク帝国の騎士団長をしていたんだから。



「きゃ、却下です! 私はもうラスティくんのモノですから」

「つれないですね、ルドミラ。以前はあんなにも――」

「それ以上言わないでいただきたいっ!!」


 顔を真っ赤にするルドミラは、スケルツォの口を塞ごうと必死になる。なんだか、訳ありのようだな。


「あの~、ルドミラさんってスケルツォさんと何かあったんでしょうか?」


 俺の耳元で囁くスコル。

 あったんだろうな~。

 察するに深い関係が。



 * * *



 疲れたので俺は温泉へ。

 ずっと動きっぱなしで疲労が溜まっていた。

 ゆっくりと露天風呂に浸かっていると、扉から人の気配が。……って、誰か入ってきた!


「お邪魔するのだ、兄上」

「ハヴァマールか。おいおい、男の俺が入浴中だぞ」

「兄妹なのだから何も問題ないのだ!」

「それもそうか」


 ラルゴ産の水着を着ているし、これなら大丈夫だ。

 安心していると隣にハヴァマールがやってきた。

 猫耳をピョコピョコさせて上機嫌らしい。


「そ、その、兄上……お疲れ様なのだ」

「ありがとう、お前のおかげだ」

「余は何もしていない。兄上にもう少し貢献したかったのだ」


 残念そうにしているハヴァマールだが、それは違う。


「ハヴァマールの力がなかったら、俺はニールセンに勝てなかった」

「え……」

「無人島開発スキルも、聖槍グングニルも……そして、新たな武器・ヴェラチュールもお前がくれたものだ。だから、ありがとう」


 感謝を伝えるとハヴァマールは、顔を真っ赤にして湯の中へ。ぶくぶくと湯を吹かしていた。ま、まさか照れた?


「…………」


 こりゃ、しばらく戻って来そうにないな。

 どうしようか悩んでいると扉の向こうから、更に来客が。

 あれはスコル。それにストレルカやルドミラまで。



「お邪魔しますね、ラスティさん」

「おぉ、可愛い水着だな」

「えへへ~」


 花柄のビキニとは素晴らしいアイテムだな。

 防御力はかなり低いけど、それがいい。

 やはりスコルは素晴らしいスタイル。

 エルフは美に富んでいる。


 けど、ストレルカもさすがだ。

 貴族出身だけあって優雅だ。

 気品あふれるボディは、男を魅了する。

 気持ちが落ち着かなくなるな。いい意味で。


「私はいかがでしょうか」

「いや、ルドミラはいつもと変わらないじゃん」

「そんなッ!」


 ショックを受けるルドミラだが、お前はいつもビキニアーマーだろう。だから、新鮮味がなさすぎて反応に困った。



「残念でしたね、ルドミラ様。やはり、わたくしのような優雅さないと。そうでしょう、ラスティ様」


 目の前に素晴らしい谷間モノを強調してくるストレルカ。……うっ、鼻血が出そうだ。

 俺は鼻を押さえて耐えた。



「――ぷはぁっ、限界なのだぁ~!」

「うわ!?」



 そういえば、ハヴァマールがいたの忘れていた。



「ハヴァマールさん! いつの間に」

「おぉ、スコル。余は先に兄上とお風呂に入っていたのだ」

「そうだったんですね。姿が見えないと思ったら……」

「スコルたちも入るのだ。兄上を囲むのだ」


 みんなが露天風呂に入ってくる。

 ハヴァマールが言ったように俺を囲んできた。

 これでは逃げられないではないか!


 いや、けど……これは嬉しいというか。

 ご褒美的な?



「ラスティさん、肩をお揉みします」

「あ~、スコルさんずるいです。わたくしだって、ラスティ様の腕とかマッサージしますから」


 スコルとストレルカが俺を巡ってマッサージをし始めた。これは気持ちいな。

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