最強合成武器『+10覚醒ヴェラチュール』

 聖槍・グングニルとニールセンの闇が激突。


「こ、このォ!!」

「我が闇は、世界聖書に保管されていた『魔王ドヴォルザーク』の力を利用している。この意味が分かるか、ラスティ!」


 そうか、やっぱりニールセンの闇は……魔王の力を利用していたものだったのか。


「お前、魔王になるつもりか」


「そうだ。支配とはつまり、魔王になることに他ならない。だが、私はただ世界を暗黒に染めるだけではない。人類は皆、我が奴隷となるのだ。これで真の平等の世界が生まれる。王など私だけで十分なのだ」


 闇を強めながらも口元を歪ませるニールセン。コイツの目的は、俺だけじゃない。世界と全人類の支配だ。

 早く世界聖書を解読しないと大変なことになる。未来は、スコルに託された。聖女であり、エルフである彼女が唯一のカギだ。


「スコル、このままでは世界が……」

「もう少し、もう少しです……。このラザロの書き記したという第五章十一節“永遠のいのち”を解読できれば――」


 それは、守護聖人聖ヴァーツラフ・ズロニツェが……そうか、分かったぞ。ニールセンが心臓を世界聖書に埋め込んだのは“不老不死”の応用であり、神器エインヘリャルの力に限りなく近いモノだったんだ。


 そういえば魔王の力も、ラザロが編み出したモノだとか。なるほど、全ての辻褄が合った。世界聖書すらも、彼の所業だったのかもしれない。


 世界聖書は、スコルの父ヴァーツラフ・ズロニツェが作り出した神器なのだ。


 だから、スコルは聖書を読めるんだ。


「大丈夫だ。スコルなら出来る……君を信じている。そのまま続けてくれ!」

「ラスティさん……はいっ、がんばります!」


 闇の勢いが増す中、俺は踏ん張って耐えた。けど、ニールセンも決死の覚悟だ。俺も同じだが、それ以上に守るものがある。


 ここは絶対に死守する。絶対にだ。



「貴様は……貴様は、ラスティ……貴様はどうして私の全てを奪った!!」

「辛いのは自分だけだって!? ふざけんな! 俺だってな、帝国を追放された過去がある。不幸だったのはお前だけじゃない。俺は何もないところから無人島生活を始め、長い期間をかけてやっと居場所を手に入れたんだ」

「それがどうした!! 貴様の痛みなど所詮、蚊に刺された程度――笑止! 私は最初から何もなかった。赤子の私は、どうしようもない男に拾われ……育てられ、五歳でその男を殺した。それからも血を血で洗う世界だけだった」



 闇が強まる。コイツ、これほどの“負”を糧にしていたのか。くそっ、奴の不幸が邪悪なエネルギーに変換されて強さを増していく。このままでは押し切られる。



「謝れとでも言うのか!」

「謝罪などいらぬ。お前の命さえ奪えればそれでいい……! ラスティ、お前はここでそのエルフの女共々消滅するがいいッ!」


「…………ッッ!!」


 なんて力だ。闇がどんどん増幅していく。これが魔王の力か。――いや、ただの馬鹿力だ。憎悪の塊だ。


「さあ、もう後がないぞラスティ!」

「ぐっ……このォォ!!」



 やべえ……あと少しで闇が迫ってくる。このままでは!!



「てやああああああ!!」


「「!?」」



 突然、女の声がして物凄い聖属性攻撃が闇を押し返した。な、なんだこりゃ!? なんちゅう魔力だ。

 気配の方向を探ると、そこには――。



「助太刀いたします、ラスティくん!!」

「ルドミラ!!」

「元来、魔王を倒すのは勇者の役目ですが……ここは協力で」

「心強い。勇者ルドミラがいれば百人力だ」


「ありがとうございます、我が主……!」

「よし、やっちまえ」



 黄金の槌『覚醒アマデウス』を強振するルドミラ。まてまて、とんでもない魔力だぞ……やべぇッ!




「ガグンラーズ――――――!!!」




 恐ろしくも美しい白い光が闇を押し返す。なんちゅうスキルだ。これは大魔法を超える大禁呪スキルだぞ。



「これなら!」

「待って下さい、主様。ハヴァマール様からこれを伝えるように言われました」

「なんだ?」

「あなたの持つ『ゲイルチュール』と『聖槍グングニル』を無人島開発スキルで合成してくださいとのことでした」


「なに!? ゲイルチュールとグングニルを!?」

「早く!」


 くそっ、どうなってやがる。そんなことをしたら、ゲイルチュールが壊れてしまうんじゃ……いや、考えている暇はない。ハヴァマールが言うのだから、きっと間違いはないはずだ。俺は妹を信じる!



「無人島開発スキル発動!!」



 元に戻した『ゲイルチュール』と『聖槍グングニル』を合成した。するとアイテムが変形して、新たな武器を生み出した。


 こ、これは……!


 ウソだろ、こんな武器が合成できるなんて思わなかった。信じられん。



 [+10覚醒ヴェラチュール]

 [物理攻撃力:50000]

 [魔法攻撃力:50000]

 [効果]

  この世の開闢を導く大いなる槍。

  この武器は破壊されない。

  任意スキル【ダークエネルギー】を発動すると三分間全てのステータスが100%上昇する。

  攻撃速度と移動速度を10倍増加させる。

  武器装備時、三分間の無敵時間が発生する。

  装備者の三回までの自動リザレクションが発生する。蘇生後、体力と魔力を全回復する。

  全種族に対する追加ダメージ100%。追加クリティカル攻撃が発生。攻撃命中時、対象は全ての状態異常に掛かる。

  装備者の体力が瀕死になった場合【ラストジャッジメント】スキルを強制発動させる。この大魔法は、大量の彗星を降らす無属性攻撃であり、あらゆる生物を大量絶滅させる効果がある。発動させたくない場合、装備を解除すること。

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