紅蓮の騎士

 スコルはブレアの部屋に運ばれた。

 異常事態を察したハヴァマールやエドゥ、ストレルカが駆けつけてくれて、スコルを見舞ってくれた。


「兄上、これはどういうことなのだ!?」

「ニールセンの幹部が紛れていたんだ。風呂で襲撃に遭った」


「なんと……。それでスコルは?」

「大丈夫だ。気絶しているだけだ。でも、一応誰かに診て貰いたい」


 俺が要望を出すと、エドゥが手を挙げた。


「自分は医療の心得もあります。お任せください」


 エドゥは大賢者。

 何百年の経験・知識があるはず。

 彼女に任せよう。


「頼んだ、エドゥ」

「ええ。自分も治癒魔法が使えるので、ひとまずは『ヴァイスヒール』いたします」


 ベッドに横たわるスコルの体に掌をかざすエドゥ。次第に、白い魔力が流れていく。これはスコルのヒールとはちょっと違うのか。


 大賢者専用のヒールらしいが……。


 見守っていると、直ぐにスコルは目を覚ました。



「……っ。ここは…………え。皆さんなんでここに!? え、え!?」



 混乱するスコルの手を俺は握った。


「敵襲があったんだ。でももう大丈夫だ」

「……あ、そうでした。思い出しました。急に襲われて……それで気を失って……」


「今はブレアの部屋を借りてる。しばらく安静にしているといい」

「でも……」


 申し訳なさそうにするスコルだが、ブレアは優しく微笑んで気遣ってくれた。


「なぁに、我らはもう同盟関係だ。スコル様を守るのも仕事のうち。それに、敵の侵入を許してしまったことを詫びねばならない……」


 責任を感じているのか、ブレアは唇を噛んでいた。

 そういえば、この城の警備はかなり厳重だったはず。なのに、オッフェンバックがいたということは……ヤツのスキルがそれほど強力なのか。


 それとも、手引きした裏切者がいるのか……?


「ブレア、敵の侵入の件なんだが、気になる点がある」

「ラスティもそう思うか。私も疑問を感じていてね……警備は万全だった。城には何百もの騎士が警備にあたっている。しかも、どの騎士も高レベルで聖騎士に匹敵する」


 けれど、そんな中をオッフェンバックは侵入したのか。なにか……なにかおかしい。


「なるほど、分かった。もし何かあったら直ぐに情報を共有する」

「助かる。では、このことを父上にも報告せねばならない。行ってくる」


 マントを翻すブレアは、部屋を出ていった。

 そういえば、マーカス将軍の姿がなかったな。街があんなに襲われていた時さえも。……まさかな。



 * * *



 スコルは、エドゥに任せた。

 俺にできることは……ないからな。


 そんなわけで俺は別の場所にあるという風呂へ向かった。


 この城、お風呂いくつあんだかな。


 馬鹿広い城内を歩き回っていると、曲がり角で何かが衝突してきた。



「うわ!?」

「きゃ!!」



 それは尻餅をついて――スカートらしきものが捲れてパンツ丸見えだった。……女の子か。



「ごめん。君、大丈夫かい?」

「……うぅ。すみませ――はぅ!!」



 バッとスカートを押さえる騎士っぽい女の子。腰に剣を携えているし、騎士なんだろうな。にしても妙な剣だな。



「ごめん。でも見てないから」

「そ、それならいいですけど! それより、あなたはブレア様のお客様ですよね」


「ああ、俺はラスティだ。よろしく」

「あたしはストラと申します。ちょっと変わった『紅蓮の騎士』というクラスを拝領しています」


 紅蓮の騎士……聖騎士とは違うのか。


 でも、紅蓮に似つかわしい赤い髪をしているし、装備も赤色が多い。それに、ルビーのような赤い瞳。ネイルも赤だし、ほとんど……いや、全部が赤色だ。


 パンツも赤だったな。


「そうか。……ああ、そうだ。さっき侵入者がいたよ。俺が倒したけどね」

「えっ、あなたが! もしかして街を救った英雄というのも?」

「英雄は言い過ぎだけど、俺だ」


「わぁ、凄い。マーカス将軍が言っておりました。グラズノフ共和国と同盟を結んだラルゴという国があると。……そっか、その主の名はラスティ様ですね」


 尊敬の眼差しみたいなのを向けられ、俺はむず痒くなった。なんだか、今までの女の子とは違う明るいタイプだ。


 こういう可愛らしい騎士もいるんだな。

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