ライトニングボルト Lv.5

 俺はゲイルチュールを召喚した。


「オッフェンバック、一度しか言わない……スコルを放せ」

「それは無理な相談だ。それに、お前と戦う意味もない。このまま逃げさせてもらうぞ」


 ニヤリと笑うオッフェンバックは、黒い影に飲まれていく。こ、これは……あのニールセンの渦にそっくりだ。闇属性魔法か。


 あれで逃げる気か。

 そうはさせない。



「くらえ、ライトニングボルト……!!」



 サンダーブレイクの下位互換スキルである、ライトニングボルトは対象のみにダメージを与える魔法スキル。



 [ライトニングボルト][Lv.5]

 [魔法スキル]

 [効果]

  風属性魔法の基本スキル。

  風属性魔法を放つ。


  対象一名に風属性魔法のダメージを与える。



 ライトニングボルトをオッフェンバックに放つ。

 バリバリと走る稲妻はヤツの頭上に落ちた。



「なッ、馬鹿な!! ぎゃああああああああああ!!」



 今のうち俺はスコルを救出。

 ……よかった、ぐったりしているだけだ。

 俺はスコルを抱えたままバックステップしていく。


 よく見るとオッフェンバックは“身代わり”を使って別の場所に移動していた。野郎、姑息な手を!



「オッフェンバック、どこに!!」

「ラスティ、貴様よくも!!」



 上か……!

 いつの間にか飛び跳ねていたオッフェンバック。毒ナイフを向けてくるが、俺はゲイルチュールで防御した。


 ナイフの威力こそないが、この毒を受けたら……即死っぽいな。



「……ッ!」

「いいか、ラスティ。このナイフの毒は『キロネックス』という超猛毒だ。少し触れただけで、あの世逝きさ」



 そんな猛毒を使っているのか。

 やばすぎるだろ、それ!!


 くそ、オッフェンバックに近づかないよう倒すしかない。


 なら、遠距離攻撃だ。



「ライトニングボルト!!!」

「はんっ、その技はもう見切っているんだよ」



 余裕の顔で回避するオッフェンバックだが、俺は連続で攻撃を繰り出した。そうだ、技はいくらだってある。



「無人島開発スキル――落石!」

「なっ、石が降ってきやがった!?」



 雷と落石のダブル攻撃だ。これなら回避できまい。



「これでッ!!」

「くそおおおおおお、身代わりの術ぅ!!」



 それでもオッフェンバックは、身代わりで脱出した。面倒臭いスキルだな……。

 しかも、俺はスコルを抱えながらだ。守りながらだから、これ以上の連続スキルはスコルに負担をかけてしまう。


 そろそろ決めないと!



「なら、これでどうだ!!」



 俺はアイテムボックス内の材料を使って即席の大砲を生成、設置した。これは自動で敵を捕捉して狙うのでスコルを守りながらでも戦える。



「た、大砲だとぉ!? き、貴様……奇妙なスキルを持っているんだな!」

「身代わりなんて異質なスキルを使うお前に言われたくねぇよ。大砲、発射開始……!」


「く、くそおおおおおお!!」



 直後、ドンッと凄まじい音と共に大砲の弾がオッフェンバック目掛けて飛んでいく。

この速度だ。さすがに身代わりは間に合わないはず。



「これで終わりだ!!」


「おのれえええええ!! 身代わりの……ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」



 大爆発が起きてヤツは城の外に吹き飛んでいった。


 オッフェンバックの気配は完全に消えた。


 それから、しばらくして衛兵とかブレアが駆けつけてきた。



「な、何事だ!? ラスティ!? なぜ大浴場に……む、スコル様も」

「敵襲に遭った。詳しく話すよ、ブレア」


「なんと……まだニールセンの刺客がいたのか。しかし、なぜこの城に入ってこれた。警備は厳重だったはずなのに」


「分からん。とにかく、スコルを頼む」

「あ、ああ……このままでは風邪を引いてしまうからな。任せろ」


「ありがとう、ブレア」



 あのオッフェンバックのせいで、お風呂に入れなかった。

 だが、別の場所にも風呂はあるようなので、後で改めて入り直すか。


 今はスコルの容体が心配だ。

 大丈夫かな。

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