超重戦士クラスの男

 結果、俺と同じ部屋になったのは――。



「やった! 勝ちましたぁ!」



 ぴょんぴょん飛び跳ねるスコル。

 じゃんけん最弱のはずのスコルがなんと勝利してしまった。なんの奇跡だ!?


 他の女の子たちは顔を青くして各々の部屋へ戻っていく。



「スコル、おめでとう」

「嬉しいです、ラスティさんと……えへへ」



 ニンマリ笑うスコルは、嬉しそうに俺の腕に掴まる。

 上機嫌でなによりだ。


 ハヴァマールたちには悪いけど、今日はスコルとの時間を大切にさせてもらう。



 二人きりのベッドでゴロゴロして数分。

 雰囲気に押されて、俺はスコルとキスしそうになっていた。



 あと少しでスコルの唇を……。



 だが、事態は急変した。

 外がなにやら騒がしくなった。



「……なんだ? 爆発音みたいな」

「外でなにかあったのでしょうか……」



 気になって大きな窓から外を眺めてみると、街に並ぶ家から煙が上がっていた。……まさか、奇襲か?


 状況を見守っていると、部屋の扉が乱暴に開いた。


 ちょ、誰だよ……って。



「ブレア、息を切らしてどうした」

「大変だ、ラスティ! 神聖王国ガブリエルの奴等が襲い掛かってきた。しかも、たったの三人で……このままでは街が!」


「マジか! 三人が街を……そいつらは幹部クラスかもしれないな。分かった。俺が出よう」


「し、しかし……!」

「いいんだ。鉄のお礼くらいはしたいからね。エドゥ、聞こえてるならテレポートして来てくれ」



 叫ぶと、エドゥが目の前に現れた。さすが大賢者様。察しがいい。



「参りました、ラスティ様」

「よくぞ来てくれた。エドゥ、テレポートで街の方へ向かいたい。俺、スコル、ブレアを運んでくれ」


「お安い御用です。ですが……」

「ん、どうした?」


「スコル様が固まっておられますが」



 よく見るとスコルがカチコチになっていた。

 幸せな時間が一瞬で終わったから、ショックを受けているのだろうな。



「ス、スコル……」

「……うあああぁぁん! やっとラスティさんとイチャイチャ出来ると思ったのにぃ……」


 泣き叫ぶスコル。

 予想通りだったが、無常にもテレポートが始まった。



 * * *



 グラズノフ共和国の街へ出た。

 その瞬間には煙に包まれ、人々が逃げ惑っていた。


 しかも、運が良いのか悪いのか……敵の前に出てしまった。



「……クハハッ! 兄貴、共和国の連中は貧弱ですぜえ!」

「そうだな、我が同胞・オッフェンバックよ」



 凶悪な目つきをした細身でガリガリの男。

 それに、兄貴と呼ばれた巨漢の男。


 なんだこの凸凹でこぼこコンビ。



「お前達がニールセンの幹部で間違いなさそうだな」



 俺はゲイルチュールを素早く生成して構えた。

 コイツ等、殺気しかない。


 殺やる気マンマンじゃないか。




「なんだ、小僧ォ……俺たちを知っているのか」



 ガリガリの男が俺を睨む。



「知っているも何もない。お前達の仲間、ヤスツナとかを撃破した。お前達も平和を脅かしている……共和国の街を破壊しやがって」


「ヤスツナか。ニールセン様の寵愛を一心に受けていたと……身の程を弁えない勘違いをしていた愚者のことかァ」



 仲間をそこまで貶すか。

 どうやら、幹部クラスの中でも醜い争いがあるらしい。



「ガリガリと筋肉の大男……さっさと帰れ。今はドヴォルザーク帝国との戦争で忙しいはずだろ」



 そう言い返すと、巨漢の方が大戦斧を構えた。

 ……な、なんて大きさの斧だ。

 馬鹿でけぇ。

 コイツ、超重戦士クラスだぞ。



「我が名はフェルナンデス。ニールセン様の親衛隊隊長だ。

 ……そうか、小僧……貴様がニールセン様の座を奪ったというラスティだな」


「俺を知っているのか」

「無論だ。貴様を殺すために共和国へ来たのだからな!!」



 大戦斧を振り回すフェルナンデス。

 なんちゅー筋力だ。


 一振りしただけで強風が吹き荒れ、俺は吹き飛ばされそうになった。


 スコルは!?


 ……良かった、エドゥが結界を張ってくれた。ブレアも無事だ。



「そうか、なら……もう街の破壊は止めろ。俺が相手になってやる」

「保証はできんがな。ラスティ、貴様の命……もらい受ける!!」



 一瞬で間合いを詰められ、大戦斧が迫ってきた。


 くそっ、デカい図体だから鈍いかと思ったら、移動速度もありやがる。なんて男だ。



 だが、俺はそれ以上のスピードでゲイルチュールを振るった。



「サンダーブレイク!!!」



 稲妻を放ち、フェルナンデスの顔面に向けた。


 これで!!

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