深海のSS級ボスモンスター

 朝食を済ませ、いよいよ出発。

 城を出てストレルカの船へ向かった。

 街を抜け、少しすると立派な港が見えてきた。


「ラスティ様、予定通りのメンバーでよろしいですね?」

「ああ、俺、スコル、ハヴァマール、ストレルカ、エドゥで行く」


 ハイオークの件が気になるが、きっとルドミラが排除してくれるだろう。そのことは出掛ける前に伝えておいたし。


 防衛力も十分高めておいた。


 なにかあれば、切り札・・・を使う手もあるだろう。



「では出発しましょう」



 船に乗り込み、少しすると出航した。目指すはグラズノフ共和国。最速で一日というところだろうか。



「……島が小さくなっていきますね」



 俺の隣で上品に髪を押さえるスコル。金髪がなびいて美しい。……しかし、そうだな。故郷を離れるのは久しぶり。移住者も増えたから、心配はないと思うけど。


 今はルドミラ率いる騎士団もいるし。


 信じよう、民たちを。



「寂しいか、スコル」

「はい、少し。でも、ラスティさんがお傍にいるから……不安はありません」


 そう身を寄せてくれるスコル。柔らかい体で俺を包んでくれる。


「スコル……」


 俺は思わずスコルの腰に腕を回した。頬を赤らめ、嬉しそうにしてくれて俺も顔が綻びかけた。すると、ハヴァマールとエドゥが突撃してきた。

 


「あー! スコルばかりズルいのだ。余も混ぜるのだ!」

「自分もラスティ様とイチャイチャしたいです!」



「そ、そんなには無理だ!」



 三人から押し倒され、俺は困るしかなかった。嬉しいけど!


 ワチャワチャしていると海の方から気配を感じた。それはストレルカも察していたようで叫んだ。



「ラスティ様! オケアノスによれば、深海のモンスターが現れたようです!! 皆様、ご注意ください!!」


「マジかよ」



 こんな場所に深海モンスターだって?

 ――いやだけど、この周辺はそういう海域だって以前ストレルカが言っていた。怪物が現れてもおかしくはない。



 俺は船首へ向かい、様子を伺った。



 ……なんだ、あの黒い影。

 とんでもない大きさだぞ。



「こいつは一体……」



 海面を観察していると、それは飛び上がってきた。



『――――ッ!!』



 ……ウソ、だろ。

 巨大なニョロニョロが現れた。……蛇?



「兄上、このモンスターは大変なのだ!!」

「ハヴァマール、これはなんだ?」

「コヤツは深海のボスモンスター『シーサーペント』なのだ。詳細を出す」



 [シーサーペント]

 [属性:水/闇]

 [種族:動物]

 [詳細]

  深海に棲むSS級大海蛇。全長三十メトル級。非常に高い体力HPを持つ。水属性攻撃『クラウドバースト』は広範囲に破壊的ダメージを与える。体力が僅かになった時、闇属性攻撃『ブラックアウト』を発動する。



「なんでこんなのがいるんだよ!」

「分からないのだ。とにかく倒すしかないのだ」


「倒すって……どうやって」

「聖槍を使うのだ」


「……まあ、それしかないよな」



 俺は身構えつつも、聖槍・グングニルを生成。魔法の槍を手にした。敵の出方を伺っていると、ストレルカが焦ってこう言った。



「ラスティ様。このまま船を攻撃されれば沈没します……どうか討伐を」

「なんだって! そりゃ一大事だ。俺に任せろ」

「お願いします。オケアノスは船の方で魔力を使っているので動かせないのです」


「それなら仕方ないさ」



 みんなを守るは俺の仕事だ。

 シーサーペント、恐ろしく禍々しい様相だが――そこを通してもらう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る