風属性魔法・サンダーブレイク二連撃
敵モンスターの水属性攻撃『クラウドバースト』が雨のように降り注いできた。……やべぇ、こんなの船に落ちたら沈むぞ。
だが、船に到達するより前に透明な壁が阻んだ。
「――スプレンディッドフィールド!」
エドゥの“大賢者”の魔法スキルか。
どうやら守護結界を展開するようだな。さすがだ。
「ナイス、エドゥ!」
「これくらいはお安い御用です」
おかげで砲弾のような豪雨を防げた。もし、落ちてきていたら船が沈むどころではなかった。木っ端微塵になっていたな。
「よし、この隙に畳みかける。エドゥ、結界を解除できるか?」
「了解しました。結界……解除!」
攻撃のチャンスは今しかない。
俺は体をバネにして、思いっきり振りかぶった。
「穿て、聖槍・グングニル!!!」
魔力の塊を放つ。光は一直線にシーサーペントの腹部を貫いた。
『――グアァァァアァァァ……』
断末魔の上げ、海へ沈んでいく。なんだ、楽勝だったな。
「ラスティさん、あの大きな蛇……」
「ああ、もう倒した。安心してくれ、スコル」
「はい、お疲れさ――」
しかし、その時だった。
シーサーペントの巨体がいきなりニョロニョロと動き出した。……な、なんだ!?
「兄上! あのシーサーペントはまだ生きているのだ!!」
「なに!?」
直後、シーサーペントは体を再生して復活した。
馬鹿な! 再生能力だと……!
「あれは自己再生スキル『リペア』ですね。また動き出しますよ」
[リペア][Lv.3]
[魔法スキル]
[効果]
上位の自己再生スキル。
体の破損した部位を再生し、体力を半分回復する。
Level.1 :部位再生・体力回復 50%
Level.2 :30秒間回復速度 50%アップ
Level.3 :60秒間回復速度 50%アップ
Level.4 :90秒間回復速度 50%アップ
Level.5 :120秒間回復速度 50%アップ
エドゥがそう解説してくれた。そうか、あれはスキルだったのか。SS級ボスっていうのは伊達じゃないらしい。
やがてシーサーペントはほとんどを回復して襲い掛かってきた。なんてヤツ!
ならば、俺は万能つるはし『ゲイルチュール』で応戦する。
無人島開発スキルで予め作っておいた『鉄の杭』をアイテムボックスから取り出し、それを放り投げてゲイルチュールで打った。
杭を見事に打撃して、シーサーペントに向けてた。
「おぉ、その発想はなかったです!」
珍しくエドゥが驚く。
これは随分昔にアルフレッドが教えてくれた異国のスポーツを真似たものだ。
杭はそのままシーサーペントの体に命中。しかし、たいしたダメージは与えられていない。……いや、だがこれでいい。
「兄上、あれでは倒せぬぞ!」
「大丈夫だ、ハヴァマール。あの杭には『猛毒』を塗布してあるんだ」
いつだったか、アレクサンダーとかいうヤツから
一気に広まる猛毒は、シーサーペントの体を侵食していく。効いているじゃないか。まさか、こんなに強力だったとはな。
だが、それでもトドメには至っていない。
なら、俺の
聖槍を使用した反動で魔力はあと僅かだが、これを使うくらいの余裕はある。
「ラスティさん、わたしも支援します! キリエとグローリアです!」
俺のステータスは更に上昇。
これで決める!!
「くらえええええええ、サンダーブレイク!!!」
ゲイルチュールの穂先から風属性の稲妻が走る。強烈で最強のヤツだ。だが、シーサーペントも最後の抵抗を見せた。闇属性攻撃・ブラックアウトだ。
周囲が真っ暗になって夜になった。……そうか、これは“深海”ということか。
闇属性で海の底を具現化し、赤い稲妻を発してきた。
「兄上、加勢するのだ!!」
「ハヴァマール!」
ぴょんと飛び跳ねるハヴァマールは詠唱を開始した。
「怒れ、怒れ、怒れ。終焉の約束、神々の黄昏……新世界の
轟雷の渦がシーサーペントを飲み込む。これで活路は見出せた。ナイス、我が妹。俺は残りかすの魔力を使ってもう一発お見舞いした。
「これで最後だ!!! サンダーブレイク!!!!!!」
二発目の稲妻を力いっぱい放出し、シーサーペントに激突させた。
『――グォォォォォォォォッッ!!!』
物凄い衝撃波が広がり、ついにシーサーペントは倒れた。
「…………」
空は晴れ、元の青空。
だけど、あまりの事態に沈黙するしかなかった。
「ふぅ、今度こそ倒したようだ」
汗を拭っていると、スコル、ハヴァマール、エドゥ、ストレルカ全員が俺に飛びついてきた。またかーっ!
「ラスティさん凄いです!」「さすが兄上えええ、愛してるのだああ」「ラスティ様のお力は偉大です」「もう皆さんずるいですよ。わたくしだって船を守っていたのです」
こうみんなから飛びつかれては……うん、しばらくこうしていよう。
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