幇助犯、追放処分
家の扉をノックする。
反応は――ない。
「不在か……?」
「出かけているのでしょうか」
「うーん、微かに気配は感じる。居留守の可能性もある……ちょっと強引だが、開けてしまおう」
「カギを開けられるんですか?」
「まあね。俺はこの建物を作った張本人であり、島の管理者だからね。だからマスターキー権限がある」
「カギを開けられるんですね」
「そうだよ、スコル。見てて」
俺はドミニクの家の扉の前に立ち、手を
「ほら、開いた」
「す、凄いです! さすがラスティさん」
「褒められると照れるな。……さて、それよりもドミニクだ。スコル、俺の傍から離れるなよ」
「了解です!!」
慎重に家の中へ入っていく。
薄暗くて、やや埃っぽい。
……なんだ、あんまり整理されていないのか。
キッチンへ向かうと、食器が落ちる音がした。
「く、来るなァ!!」
「ドミニク! やっぱりいたのか」
彼は包丁を持っていた。
その手はブルブル震えていて、怯えているようにも見えた。
「わ、私を島から追放する気か!! そうはさせないぞ!!」
「ドミニク、お前はどのみち追放だ。ヤスツナの脱走を手伝っただろ」
「私ではない!!」
「惚けるな。あの時、お前しか怪しい人物はいなかった。それに、俺に貴族にしてくれだの、奴隷をくれなど……とても信頼できるとは思えない振舞いだった」
「そ、それに関しては謝ろう!! つい、欲が出てしまったのだ……許してくれ!!」
「百歩譲っても許さん。ヤスツナを逃がした罪は重い。おかげでスコルが人質になったんだからな」
「だから、私ではないのだ!! 騙されて……それで!!」
「醜い言い訳を。もういい、ドミニク、お前を追放する」
「やめろ……やめてくれええええええええええええ!!!」
包丁をブンブン振り回し、発狂するドミニク。もはや、コイツの常識を是正するのは難しい。この島国ラルゴには必要のない人間だ。
無人島開発スキルのスキルツリーにある『国外追放』を選択。
俺は権限により、住民のドミニクを追放処分にした。
瞬間、彼の存在は消え去った。
今頃は帝国あたりに放り出されているだろう。
「……ふぅ」
「お疲れ様です、ラスティさん」
「初めて追放なんてしたから、ちょっと緊張した」
そういえば、俺も前に帝国を追放されたことがあったな。まさか、こうして追放する側になろうとは……。
けれど、これも国を守る為。
平和の為でもある。
俺がしっかりしないと、秩序は保てない。
「帰りましょう、ラスティさん」
「そうだな。そろそろ帝国の方も気になる。俺が動く時かもしれん。だけどその前に国の防衛強化をしておかないとね」
「わたし、お手伝いしますね」
「ああ、頼む」
空き家を出て、俺とスコルは城を目指した。
道中、こんな噂話が聞こえた。
『ドヴォルザーク帝国と神聖王国ガブリエルの戦争が激化してるってさ』『マジ~? 大丈夫なのかなあ』『俺ァ、元故郷だからちっとばかし心配だ』『まぁ、このラルゴにいる限りは平和さ』『ここは島国だからな。他の国と接していないから、そう簡単には攻めてこれない』『しかも防衛兵器があるんだってさ』『騎士団も結成したらしい』
――なるほど、みんな何だかんだで世界情勢が気になるようだな。俺もだけど。
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