犯人を捕まえろ
部屋へ戻ろうとするとエドゥと鉢合わせた。
「ラスティ様」
「どうした、エドゥ」
「この度は大変なご迷惑を……」
「ん? ああ、ヤスツナの脱獄か。それなら気にするな」
「しかし……」
「エドゥにどこにいたんだ?」
「自分は国の防衛の為に各地を視察に」
いつもの業務か。最近、エドゥには島を回ってもらっている。防衛兵器をどこに設置するか決めて貰う為だ。だから出掛けていたのだろう。
「国の為に尽くしてくれていたのなら、それでいい。城内であったことは俺の責任でもあるからな」
「……ラスティ様、そう言っていただけて嬉しいです」
「じゃあ、俺は戻るから」
「待って下さい」
「どうした?」
「実は……脱獄を手伝った者を発見したのです」
「なんだって!?」
脱獄を手伝った者……それはつまり、あのヤスツナを牢から出した協力者がいるってことだ。そうだよな、あの牢は特殊なものだった。
なのに、ヤスツナは堂々と出られていた。
……つまり、裏切者がいるってことか。いや、そんなわけはない。もしかしたら、どこかのタイミングで侵入された可能性もある。
となると……覚えのある人物はだいぶ絞られてきている。
だが、エドゥの答えを聞こう。
「言いますね」
「頼む、誰なんだ」
「彼の名は“ドミニク”といいます。城付近をウロついており、怪しいと思い自分は彼を尾行していました。事が終わると怯えた様子で逃げだしていましたが」
ドミニク!
あの貴族になりたいだの、奴隷が欲しいだの言っていた男か。アイツがヤスツナを……しかし、トラップとかどうやって切り抜けたんだ。
城の関係者以外にも発動はする。
そういう脱獄を手助けする輩が現れないとも限らないと考え、俺は罠を仕掛けていたんだがな。
「そうか。ヤツがね……分かった。後は俺が何とかする」
「自分も手伝いましょうか?」
「いや、エドゥには引き続き視察業務を続けて欲しい」
「分かりました。なにかあれば言ってください」
エドゥは丁寧に頭を下げて去っていく。……さて、俺はドミニクを探しにいくか。
再び城の外へ向かう。
その途中でスコルと会った。
「ラスティさん」
「スコル、もう終わったのか」
「はい、修行は終わりました。それより、どこかへ?」
「ああ、ちょっと野暮用でね」
「わたしもついていきます」
「う~ん……」
「ま、まさか……女の子との約束とかではありませんよね!!」
ぐっと顔を近づけてくるスコルは、疑いの眼差しを俺に向ける。……まずい。誤解されそうだ。その前に俺は本当のことを言った。
「ヤスツナを逃がした男に会う」
「え……今日あったあの事件ですね」
「ああ、そうだ。協力者が分かったんだ」
「分かりました。では、わたしもついていきます」
「危険だぞ」
「それでもです。もう足手まといになりません」
「……分かった。俺もスコルを守るよ」
そう俺が断言すると、スコルは顔を真っ赤にして煙を上げた。
「…………は、はぃ」
あ……照れてる。
こういうところが可愛いな。
* * *
城の外へ出て街へ。
エドゥによれば、南にある露店街にドミニクの家があるという。
それにしても、少し顔を出すだけで俺に注目が集まるな。すっかり有名人だ。
「確かこっちの方か。スコル、俺から離れるなよ」
「はい、魔力の準備をしておきます。いざとなれば、聖属性魔法で……」
「分かった。行くぞ」
ドミニクの家らしき前に到着。
……さて、ヤツはいるのかな。
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