騎士団のはじまり

 冒険者ギルドも活気があった。

 ソロの冒険者やパーティ、ギルドがいたりなどにぎやかだ。洞窟ダンジョンの攻略組がいるわけかな。


「あら、ラスティ様」

「トレニア、元気にやっているかい」

「はい、お陰様で。ラスティ様は視察ですか?」


「そんなところ。でも、そろそろ帝国の状況も気になるかな」

「ドヴォルザーク帝国の戦況ですね。お聞きになりますか?」

「え、なにか知ってるんだ?」

「はい。騎士団に知り合いがいまして随時教えてくれるのです」

「そんな知り合いがいたとはなあ」


「シベリウスという騎士なのですけどね」


 はて……シベリウス、どこかで聞き覚えがある。う~ん……って、ブルースのことか!! そうだ、アイツの名前じゃないか。


 シベリウスは、レオポルド騎士団の門番であり、アルフレッドの息子だ。


 そうか、シベリウスとトレニアに繋がりがあったんだな。


「まさかのシベリウスか」

「御存知だったのですね」

「ああ、結構前に会った。ていうか、俺がドヴォルザーク帝国の第三皇子だった時代の知り合いというか友達というか」


「そうだったのですね! シベリウスは幼馴染なんです」

「それも意外だな。そうか、それで情報提供をしてもらっているんだね」

「そうなんです。情報は力ですから」



 ――となると、派兵されている中にシベリウスがいるわけか。ずっと門番だったアイツがね。


 どういう風の吹き回しなのやら。



「そうか。それで戦地はどうなっている?」

「昨晩、レオポルド騎士団と神聖王国軍が激突し、拮抗。現在は膠着こうちゃく状態のようです」


「マジか。相手は二十五万だろ? 持ちこたえているレオポルド騎士団、凄いな」

「ルーシャス・スナイダー団長のおかげでしょうね。彼は軍師でもありましたから」



 そういうことか。以前、戦った時もかなり強かったし、ルーシャスなら持ちこたえられるだろうな。だけど、それも時間の問題だ。

 結局のところ物量には敵わない。



「ありがとう、トレニア。これで大体の状況は理解できた。そろそろ俺も動く必要がありそうだな。じゃあ、俺は行く」

「また何かあったらいつでもおっしゃってください」

「ああ、頼りにしている」


 俺は、トレニアに手を振って別れた。



 * * *



 城へ戻ると、庭が騒がしかった。

 なんだ?


 近づいてみると、そこには十人ほどの住民と――ルドミラがいた。なにか言っているな。



「このラルゴを守る騎士となって欲しいのです」



「ドヴォルザーク帝国の騎士団長だったルドミラ様は伝説だ」「ああ、かつては勇者とも呼ばれていた」「ルドミラ様の剣は本物だ」「そもそも美人でカッコ可愛い」「なんと麗しい……あのビキニアーマーはたまらん」「あんなお姉様に鍛えて貰えるならアリだ」



 ああ、これは例の『騎士団』か。

 後半、なんだか不純な声も聞こえたが……大丈夫なのだろうか。


 ルドミラは言葉を続けた。



「いいですか、君たち! 私は女である前に騎士なのです! これからビシバシと鍛えてやるのです。覚悟してください!!」



「「「「「うおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」



 男達、めっちゃ嬉しそうだな。

 中には騎士として喜ぶ者もいるが、大半がルドミラ目当てな気が……。



 ……健闘を祈る。



 俺は城内へ戻っていく。

 騎士団はきっとこれから大きくなっていくだろう。ルドミラに任せた。



「おかえりなさいませ、ラスティ様」

「おう、アルフレッド。体は大丈夫か」

「おかげさま――ブハッ!!」


 いきなり吐血するアルフレッド。

 俺は目が飛び出そうになった。


「ちょ、アルフレッド!! 血が!!」

「……だ、だ、だ、大丈夫です。ただの虫刺されです」


「虫刺されで口から血がドバドバ出るわけねぇだろ!? こえぇよ!!」


「すみませぬ、まだ本調子ではないようで」

「無理するなって。アルフレッド、お前は療養するんだ。これは主としての命令だ」

「……ご命令では仕方ありませんね。分かりました」


「それでいい。良くなるまで無茶するなよ」

「ありがたきお言葉」


 アルフレッドは素直に戻っていった。

 本当に大丈夫かなあ……心配だ。

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