危険な大浴場

 いったん会議は終わり、俺はルドミラから街の様子を聞いた。


「ラルゴはどうだい?」

「あれからお店を経営する者が増えました。経済が回り始めています」


「国らしくなってきたな」

「ええ、魔法学校も出来ましたし、どんどん豊になっていますよ」


 例のマットの学校か。

 彼がいれば自衛の為の戦い方とか教えてくれそうだ。いざ侵攻を受けた場合に自分の身を守れるし、マットには期待だな。


「そりゃいいな。明日にでも街へ繰り出してみるか」

「そうですね、一度見て戴いた方がよろしいかと」


 ドヴォルザーク帝国の危機を救う前に、まずはラルゴの方を見ておかないと。


「ラルゴの防衛兵器ももっと増産しないとな」

「現状では、神聖王国ガブリエルから攻められた場合……守りきれるか微妙なところです。兵器の他に騎士団も結成された方がよろしいかと」


「騎士団か。そうだな、これだけ人も多くなったしアリかもしれない。考えておく」



 俺はルドミラと別れを告げ、大浴場へ向かった。今日一日の疲れを癒したい。



 * * *



 誰もいないことを確認して、俺はひとり風呂へ入った。

 たまにはのんびりするのも悪くない。


「……ふぅ」


 ドヴォルザーク帝国の危機か……。

 どうすればいいんだ。

 どうやって侵攻を食い止める?


 考えていると、脱衣所の方から気配がした。……え、あれ!? 使用中にしているのに誰か入ってきたぞ。



「……ラスティさん」

「そ、その声はスコル!?」

「はい……わたしです」



 振り向くとバスタオルに身を包むスコルの姿があった。



「ちょ、どうしたんだ……」

「一緒にお風呂に入りたくて」

「だ、だけど……」

「だ、大丈夫です、タオルを巻いていますし……」


 俺の隣に入ってくるスコルは、肩まで浸かって微笑んだ。……可愛い。じゃなくて!!

 こ、これは参ったな。

 抜け出すわけにもいかないし、どこを見ればいいんだ。

 少し視線を落とせばスコルのあふれそうな谷間があった。


「そ、その……」

「ラスティさん、どこ見てるんですか?」

「ど、ど、どこも見てないよ! 胸とか見てないし!!」


「やっぱり胸が気になるんですね。ラスティさんのえっち」

「んなっ……」


 動揺していると、スコルは耳元でこう囁いた。


「見たいですか?」

「……ッッ!!」


 俺は心臓がバクバクになって頭が真っ白になった。

 今日のスコル、どうしちゃったんだ。

 いつもより大胆だ。


「いいですよ、ラスティさんなら」

「い、いいのか」

「はい。ただし、わたしをどう思っているか、ハッキリ言ってくれなきゃイヤです」


「そ、それは……分かった。俺はスコルのことが――」


 スコルが真っ直ぐ見つめてくる。

 気づけばキスできる距離に顔があって――『ざぶうううぅぅぅ~~~ん!!!』――と、なんかお湯の底から複数の気配が現れて――って、何事ォ!?



「ちょっと待った!! 余もいるぞ、兄上!!」

「ハヴァマール!!」


「抜け駆けは許しませんよ、スコルさん」

「ストレルカも……」


「ラスティ様、自分も見参しました」

「エドゥ……」


「ラスティくん、私をお忘れか!」

「ルドミラ、お前は丸裸じゃないか!!」


「私も参りましたー」

「トレニアさんも!?」



 ――ちなみに、テオドールは縛られているらしい。可哀想に。



 女子全員が俺を取り囲んだ。



「って、なんでみんないるんだよおおおおおおおおお……」


「いいではありませんか、ラスティ様ぁん」



 べったりと俺の体にくっついてくるストレルカ。


「ちょ、ストレルカ! 君、そんなエロキャラだっけ!?」

「もう戦争が起きていますから、いつ何が起こるか分かりません。なので、ラスティ様の子供とか」


「んなッ!!」



 どうやら、他のみんなも同じ意見のようで……俺に襲い掛かってきた。



 あ……あ、ああああああああああああああああ……!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る