騎乗モンスター導入②
城の庭に連れ出された。
こんな場所でいったい何をする気だ?
「テオドール、騎乗モンスターが必要なんだけど」
「分かっているよ、ラスティ。今からラマ・パコスを召喚するんだ」
「え? 召喚なんて出来るの!?」
「テイマーとしての能力なのだが、ペットのラマ・パコスを二体所持している。開国記念だ、全てこの島に贈ろう」
アイテムボックスからだろうか、テオドールは“白い卵”を二つ取り出した。薄っすらと不思議な模様が入ってるな。
「それがラマ・パコスの卵ですか?」
スコルが興味深そうに卵を見つめた。
「そうだよ、スコル様。成獣のラマ・パコスが入ってる。これをテイマーの孵化スキルを使うと――」
手に赤い光を宿すテオドールは、卵を温めるようにしていた。その動作はほんの数秒。次に卵を地面へ投げた。
あんな雑な扱いでいいのか!?
けど、卵がピカピカと光ると、それはラマ・パコスになったんだ。
「おぉ! これがラマ・パコス」
そこには、馬のようなフォルムを持った――全身クリーム色のモコモコのモンスターがいた。
要はアルパカだけど。
「ラスティ、こっちの青いリボンの方が雄でフェンリルだ」
「へえ……って、アルパカにフェンリルはおかしいだろ! フェンリルは狼では」
「こまけぇこたぁ気にするな。こっちの赤いリボンが雌でハティだ」
「って、そっちも狼じゃないかっ」
「まあまあ落ち着けって。雄と雌のセットだから、子供が増えれば騎乗モンスターも増えるってわけだ」
「なるほど!」
当面は、フェンリルとハティを利用させてもらうか。
……それにしても、スコルが固まっているな。
「おーい、スコル。ぼうっとしてどうした」
「か……」
「か?」
「可愛いです!!!」
ラマ・パコスに釘付けのスコルは叫ぶ。そんなに気に入っちゃうとは思わなかったな。……うーん、でも可愛いかと言われると……?
強いて言えばブサカワかな。
「おぉ、スコル様は気に入っているようだね」
「はいっ! テオドールさん、この子達大事にしますね!」
「そうしてくれるとフェンリルもハティも喜ぶ」
テオドールの言う通りだ。
スコルが気に入っているし、良しとするか。
こうして、騎乗モンスター『ラマ・パコス』を二匹迎え入れた。
* * *
ラマ・パコスは機敏で長距離移動が得意のようだった。揺れも少なく、指示通りに動いてくれていた。ここまでスムーズに走ってくれるとは。
「うわぁ、こんなに早いんですね、ラスティさん」
「凄いスピードだ。森なんか余裕で避けてくれるし、衝突の危険性もなさそうだ」
俺の思っている以上にラマ・パコスは優秀だった。これはいい。この二匹は大切にしよう。
移動を続け、未開拓の地を目指す。
この島国ラルゴは広大だ。
俺たちの住んでいる場所は、ほんの一部に過ぎなかった。
移動して見れば、改めて島の雄大さに気づかされる。
「ここは手つかずだ」
「はい、なんだか初めの頃を思い出しますね」
「そうだった。スコルと二人きりで無人島を生き抜いていた頃があったよな」
「あの時はまだ何もなかったですよね。今ではあんなに家がたくさん。人も多くなりました」
「これからもっと多くなる。開発を進めよう」
「はいっ」
ラマ・パコスから降り、俺はゲイルチュールを取り出して森を伐採していく。空いた土地には家を建て――その繰り返し。
一軒、二軒……五軒、十軒と増やしていく。
夢中になって島開発していると、日が暮れ始めていた。
「……ふぅ、疲れた。すまん、スコル……支援魔法ばかりで」
「いいんです。ラスティさんをお支えするのがわたしの務めですから」
「ありがとう。少し休憩して帰ろう」
「分かりました」
草むらに腰掛けるとスコルが隣に座ってきた。こうして二人きりでゆっくりするのは、久しぶりかも。
俺は、スコルの肩に手を置いて手繰り寄せた。ぴくっと反応を示すスコルは、耳まで真っ赤にして
でも、スコルの可愛い顔が見てみたい。
「スコル、顔をよく見せて」
「……は、恥ずかしいです」
そう言いつつもスコルは顔を上げてくれ――そのまま俺に甘いキスをしてくれたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます