楽園の島国ラルゴ

「聖槍・グングニル!!」


 悪だけに狙いを定め、俺は槍を穿うがった。

 光速となった聖槍はグスタフの顔面に命中。

 首を引き千切る勢いで吹き飛び、ヤツは海へぶっ飛んでいった。



「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!?」



 海が真っ二つに割れる・・・ほどの威力だった。

 もうグスタフの姿はない。

 水平線の彼方だ。



「……ふぅ。たいしたことなかったな。君、大丈夫か」



 俺は女の子の無事を確認した。

 うん、ケガはないな。



「お、お兄ちゃん。助けてくれてありがとう……」

「俺の方こそ怖い思いをさせて悪かったな」


 女の子を抱き上げ、家族の元へ返した。

 両親は何度も頭を下げて感謝をした。



「ありがとうございます。ありがとうございます!」

「おかげで娘が助かりました……」



「こちらもあんな輩がいるとは思わず……申し訳ない」



 俺がそう謝罪すると父親の方が頭を横に振った。



「とんでもない! あなたのような強い人が国の主ならば心強いです! それに、娘を助けて下さった英雄ですよ!!」


「いや、そんな」



 そんな時、屋敷の方から声が沸いていた。



「さっきの光は何だったんだ!?」「なんか花火みたいな……」「いや、もっと凄い光だったぞ」「いったい、何が起きた」「ん? あそこに家族連れが」「俺、さっき見たけど国の主様らしき男が子供を守ってたよ」「あの少年が!? 信じられねえ!」「てか、王様って少年なのかよ!!」「うそー、でも強いんだな」



 いつの間にか絶賛されるようになって、俺は照れた。

 立ち尽くしていると、スコルとハヴァマールが慌てて駆け寄ってきた。



「ラスティさん、さっきの光って!」

「兄上、まさかグングニルを!」



「あ、ああ……ニールセンの刺客が船に乗っていたんだ。俺を狙っていた」



 そう説明するとスコルは涙目に。

 まさか、俺の為に泣いてくれてる!?


 というハヴァマールも泣きそうに。

 そんな心配しなくとも。



「良かった……ご無事で」

「俺もまさか船に敵がいるとは思わなかった」


 スコルは、俺に抱きついてきて離れなかった。……そんなに心配を掛けてしまったか。


「むぅ、余も兄上に抱きつきたいのだ」

「ハヴァマールも来るか?」

「いいのか!? でも、お仕事が……」

「あ、そうか。すまん、後で」

「分かったのだ。今はその席をスコルに譲るのだ。ではでは!」


 ハヴァマールは仕事へ戻った。

 ああいう素直なところが好きだな。


「その、スコル。俺は大丈夫だ。……でも、しばらくこうしていたい」


 俺の胸に顔を埋めるスコルは、静かに頷く。

 たまにはこうして二人きりで抱き合うのも……良いな。



 * * *



 ――三日後。


 グスタフを撃退した事実が広がり、移住希望者は更なる希望を見出したようだ。その噂は国外にも伝わり、ラルゴがいつしか『楽園』と呼ばれるようになった。


 そんな楽園を求めて不法侵入する者が後を絶たない。


 俺は国を守るために島全体に高い壁・・・を築いた。


 どれくらい高いかと言えば、人が簡単に登れるようなものではない高さだ。


 けれど、全ての場所に壁を建てたわけではないから、完璧とは言えなかった。


 壁を建てられない場所には警告射撃をする『撃退兵器』を設置。


 俺はどんどん兵器を置いて防衛力を高めた。



 ――城内・大広間――


 あれから三日。

 俺はルドミラから報告を受けていた。



「――移住者は三千人を超えました。ラスティくん、家の方をそろそろ増築していただけませんか。また、雇用ですが今のところは農作業で三百名ほどを動かしています」


「随分と動いたな」


「冒険者も多く、ダンジョン攻略へ向かう者も多いですね」

「それは良いことだ。俺の作った島限定のダンジョンで楽しんでもらうのも一興だ。もしかしたら、レアアイテムとか出てくるかも」



 俺の知らないところで既にギルドも結成されていた。今は三組ほどあるらしく、どのギルドも洞窟にあるダンジョンへ潜っている。


 そんな中、マットが現れた。


「ラスティ、僕に学校の先生をやって欲しいって!?」

「よう、マット。そうなんだ、君の知恵は人々に恩恵をもたらす。これから、ニールセンが攻めてくる可能性が高いし、人々に自衛の為の魔法スキルを教えてあげて欲しい」


「それは名案だ! ただのんびり暮らすなんて退屈すぎる! では、僕は学校を開くよ。ラスティ、君の力で学校を作ってくれ!」


「いいよ。じゃあ、少し待っていてくれ」

「分かった。僕はエドゥに頼んで教科書でも作るよ!」


 走り去っていくマット。

 なんだか今までで一番生き生きとしているな。


 よし、国全体に手を加えていかないとな。

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