島国ラルゴ誕生

「これで国になったぞ、ルドミラ」

「おぉ! ついに島が国になったのですね。おめでとうございます、ラスティくん」

「いや、みんなのおかげさ」


 俺ひとりの力ではここまでは来れなかった。みんなが手伝ってくれたからこそ、今があるんだ。


「とりあえず、ダンジョンの開発はまた後日にしようと思う」

「分かりました。では、戻ってみんなに報告ですね」

「そうしよう」


 洞窟をいったん後にして、再び城を目指す。帰りもモンスターに警戒しながら向かった。



 * * *



 城へ戻ると城門前にテオドールが立っていた。


「ただいまテオドール。こんなところに突っ立ってどうしたんだ?」

「おかえり、ラスティ。それとルドミラ。……いやぁ、それが話すと少々長いのだが、簡単に状況を説明しよう」


「ふむ?」


「君たちが洞窟ダンジョンへ行った後さ。あの死んだはずの執事アルフレッド氏が目を覚ましてね……」


「な、なんだって!?」

「また暴れたのさ。けど、エドゥと私が対処したのでね、大事には至らなかった」



 そうだったのか……出掛けて直ぐに暴走したか。完全に油断していたな。でも、なんとか対処してくれたようだし……良かった。



「みんなケガはないか?」

「ああ、全員無事だ。アルフレッド氏は再び眠らせたよ」


「そうだったか。すまない」

「なぜ謝る。アルフレッド氏は、君の大切な人なんだろ?」

「ああ……そうなんだ、テオドール」

「礼ならエドゥにしてくれ」

「分かった」


 そのまま城内へ向かった。

 中は少し戦闘でもあったのか、あちらこちら破損していた。……アルフレッドの奴、暴れたのか。


 なんとかしないとなぁ。


 そのまま大広間へ向かうと、みんな待っていた。


 スコル、ハヴァマール、ストレルカ、エドゥ、そしてマットの姿があったんだ。良かった、みんな無事だ。



「おかりなさい、ラスティさん!」「兄上、待ったぞぉ~!」「ラスティ様、ご無事で何よりです」「お待ちしておりましたよ、ラスティ様」



 みんな不安気で、けれど安堵していた。

 心配させちゃったな。



「みんな、テオドールから事情は聞いている。アルフレッドが意識を取り戻したそうだな。その件については――」

「あの、ラスティ様」


 静かに手を挙げるエドゥ。


「どうした、エドゥ」

「その件ですけど、アルフレッドさんは次回には記憶が戻るかと思います」

「へ? なぜ分かる?」


「賢者の力は精神に影響を与えるものが多いのです。例えば、相手の精神を操ったり、崩壊させたりなど……ソウルスキルとはそういうものなのです」


「説得力がある……なるほどな。ちなみに、どんなスキルなんだ?」


「ソウルケアという、魂や心を癒す力です。良い夢を見せたり、幸福感を与えます。良い記憶を掘り起こしたりなども可能なんです」


 そんなスキルがあったとはな。

 さすが大賢者か。

 そんな中、マットが興味深そうにしていた。


「ソウルスキルを扱える女の子がいるとはね。研究者としては興味深いよ」

「ああ、そうだった。みんなに紹介が遅れたな。この男性は『マット』と言って、昨晩海に打ち上がったところを助けたんだ」


 マットは立ち上がって丁寧に頭を下げた。


「みなさま、僕はマット。ラミエルという滅んだ街の教授だった。これからは島の住人でいいのかな」


「ああ、いいよ。マットにはテオドールを直してもらった礼がある」



 俺はテオドールの背中を押した。



「なんと、貴方が私を助けて下さったですね。私はテオドール……情けないことに体を乗っ取られてしまいまして、助かりました」

「いえ、僕は当然のことをしたまでです」



 マットの紳士的な対応にみんな感心していた。とりあえず、悪い人でなくて良かった。


「さて、みんな聞いてくれ。島のことなんだが……ついに開国した」



 スコルが「おお、ついになんですね!!」と喜ぶ。隣の席のハヴァマールは「さすがなのだ! 兄上ならやると思っていた」と爽やかに笑う。



「これでラスティ様は、一国の主様なのですね」

「その通りだ、ストレルカ。君の力がこれから必要になる。船を頼む」

「喜んで」



 今日『島国ラルゴ』が誕生した。

 俺はこの事実を周辺諸国に喧伝し、すみやかに“建国”を宣言した。

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