神聖王国の刺客たち
お城の地下はすっかり悪者だらけだ。
どうにかしないとなぁ……特に体を乗っ取られているテオドールを。
だけど解決策は浮かばないまま、時間は過ぎていった。
「兄上、材料の石は十分に溜まったのではないか?」
ハヴァマールの言う通り、ゲイルチュールで石をかなり集めた。二人の手伝いもあって、重量オーバーになり掛けるほどの数を入手。
石:7498個
集めすぎたくらいなので半分以上を『倉庫』へ保管した。
それから、洞窟方面へ向かいルドミラ達と合流を果たす。向こうチームも『土』をかなり集めてくれた。
土:5991個
これは驚いた。
ゲイルチュールもなしに『土』をここまで掻き集めるとは。誰の仕業かと聞くと、ルドミラだった。
「凄いな、ルドミラ。土を採集するスキルがあったのか」
「穴掘りスキルは、剣士系の職業なら基本中の基本ですからね。ラスティくんのゲイルチュールには及ばないですが。それと、エドゥとストレルカお嬢様もやってくれました」
どうやら、エドゥは大魔法で土を削り取ったようだな。ストレルカは、エドゥの補助をしていたようだ。
これで『石』と『土』の収集は完了した。
「ご苦労だった。木材に関しては明日にしようと思う。今日はもう日が落ちるし、お城へ戻ろう」
みんなと共に城を目指した。
来た道を引き返し、何のトラブルもなく到着。
「では、わたしはお夕食の準備を進めてきますね」
「分かった、スコル。手伝えることがあれば何でも言ってくれ」
「ラスティさん……! はい、その時はぜひお願いします」
ぶんぶんと頭を下げてスコルは厨房へ向かっていく。
「スコルさんのお手伝いをして参りますね、ラスティ様」
「おう、分かった」
ストレルカもついて行った。
一方、ルドミラは「では、私は風呂へ」と丁寧にお辞儀をした。エドゥも「あ、ルドミラちゃん。わたしもご一緒します」と言って向かっていく。
「ハヴァマールはどうする?」
「余は兄上と過ごすのだ」
「俺とか。まあいいか、地下牢にいるテオドールの様子を見に行こうと思ってな」
「なるほど。ニールセンの情報を引き出しに?」
「ああ、少しでも“敵国”の情報は必要だ。これから攻めてくる可能性が高そうだから」
俺は、ハヴァマールを連れ――地下牢へ向かった。
お城の北側にある通路を歩いていく。
地下牢前には『アクアナイト』が見張り番をしている。これは、ストレルカの召喚した水の精霊騎士。
かなり強く、侵入者を排除してくれる優れた精霊。
しかも体が“水”だから倒されにくい特性を持つ。
地下牢を通してもらい、俺は階段を降りていく。
牢の中には、テオドールに乗り移った『ヤスツナ』と獣人ドム。それと先ほど捕縛した四人衆がいた。
随分と客人が増えたな。
獣人ドムとさっきの四人は“わーわー”騒いでいるけど今は無視だ。
「おい、ヤスツナ」
「なんだ、ラスティ。俺を追い出そうとしても無駄だぜ! こいつの体は今は俺のものなんだ。今は完全に掌握しつつある」
「なんだと……テオドールの意思はどうなる!」
「そうだな、完全に入れ変わればテオドールとかいうヤツの魂は消滅するだろう。――つまり、死ぬってことさ」
「貴様……」
「フハハハ! それが嫌なら俺ここから出せ、ラスティ!」
「出すワケないだろ。テオドールを返して貰うまではこのままだ」
「じゃあ無理な相談だな」
以降、ヤスツナはニヤニヤと笑うだけ。
参ったな……早くしないとテオドールが大変だ。彼の戦力も必要だし、このままでは開国に支障が出ないこともない。
ひとまず、俺は次に獣人ドムの方へ。
歩み寄っていくと、ハヴァマールは嫌そうにしていた。
「ハヴァマール、お前は待ってくれていいぞ」
「だ、大丈夫なのだ。兄上についていく」
「そんな無理しないでも。……まあいいか、俺が守るし」
「うん。兄上がいるから怖くないのだ」
尻尾は不安気だけど、期待の眼差し。妹にそこまで頼られるからには期待に応えないとな。兄として。
俺はドムを睨む。
ヤツもまた俺を睨む。
「……ラスティ。お前の目の前で妹を喰ってやりたかった。プニプニのコリコリで美味そうだよなァ!?」
じゅるりと舌なめずりするドム。
俺はカチンときた。
「あ? 死にてぇのか、このオオカミ野郎」
「いいぜ、ここで殺し合おうぜ。今度こそ決着をつけてやる。お前を殺す前に、お前の仲間の女共を皆喰ってやる。俺の腹の中に入れてやるんだ」
いつも温和の俺もさすがにブチギレ。格子の中に片腕を突っ込み、ドムの首を絞めた。強く強く、殺すつもりで。
「ドム!!」
「……ごぉ!? ……はは。ラスティ、お前がこれほど短気だったとはな。それではあのお方……ニールセン様には勝てんぞ!! あのお方こそ世界の王に相応しい!!」
「黙れ」
アイテムボックスから、ロープを取り出しドムの口をグルグルに縛って突き飛ばした。
「……ブゴォ!!!」
転がって頭を壁に強く打ちつけた。
ヤツにもう用はない。
さて、あとは四人組だが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます