侵入者、現る

 ダンジョンのことを皆に説明する。


「ダ、ダンジョンですか!」

「そうだ、ルドミラ。俺は今からダンジョンを作る。その為には材料となる『木材』、『石』、『土』が大量に必要なんだ」


「なるほど。では、開国の為に私達もお手伝いいたしましょう」


 乗り気のルドミラ。エドゥやハヴァマール、ストレルカもうなずく。


「兄上、余も手伝うのだ!」

「分かったよ、ハヴァマール。エドゥとストレルカもいいんだな?」



 エドゥとストレルカは「お任せください」と微笑む。ありがたい。人手が多い方が材料の収集も速いし大量だ。


 俺、スコル、ハヴァマールのチーム。ルドミラ、エドゥ、ストレルカの三人チームで別れ、材料集めを開始した。



「それにしても、兄上」

「どうした、ハヴァマール」

「ダンジョンを作るとは意外だったのだ。そんな能力をいつの間に身につけていたのだ?」


「おいおい、ハヴァマールがくれた能力じゃないか」

「へ?」


 俺は、無人島開発スキルに『ダンジョン開発』の項目が追加されていることを説明した。するとハヴァマールはどんどん顔色を青くした。


 そんなの「知らない」と言わんばかりに震えたのだ。



「え、知らないのか?」

「し、知るワケないのだ。そんな追加効果なんて……うむむ、父上・オーディンは隠し事が大好きだったからな。余に秘密にしていた情報もあったのだろうな」


「そういうことか。とにかく材料を集めて開発を進めよう」

「分かったのだ」


 俺は、スコルとハヴァマールを連れて『石』集めへ向かった。



 * * *



 石集めといえば、かつてストレルカの船が停泊していた場所がいい。あそこは崖になっていて、大岩も多い。石なら余裕で転がっている。


 場所へ向かうと、スコルが声を上げた。


「ラスティさん、あれ!」

「どうした、スコル。って……え?」


 海岸には、一隻の船が泊まっていた。

 明らかにうちの船ではない。



「兄上、あれは冒険者の船なのだ。侵入者かも」



 まさか、神聖王国ガブリエルか?

 急いで船の方まで向かうが、人の気配はなかった。すでに上陸済みとはな。しかも、こっちには防衛設備をそれほど設置していなかった。


 くそ、不法侵入されるとは。


 周囲を回ってみるが、見つからない。

 どこへ向かったんだ?


 途中、泥になっている道へ入りかけて俺は気づいた。そこには複数の足跡があったんだ。森の方へ続いている。



「この足跡、二人――いや、三人はいるぞ」

「え……そんなにいるんですか」

「まあ、船で来たくらいだ。一人ってことはないよな」


 スコルは不安気な顔をしていた。

 ハヴァマールも気持ち悪がって震えていた。


「あ、兄上……ちょっと怖いのだ」

「ああ、直ぐに見つけて送還する。ここはもう俺の島だからな」


 ゲイルチュールを構えながら、森の中へ進んでいく。背後にはスコルとハヴァマールがついてくる。守りながら歩かないとだから、慎重に行かないと。


 植物を掻き分けて前進すると、人の気配があった。


 俺は、背後の二人の動きを止めて――息を潜めた。



『この島すげぇな。めちゃくちゃ広い』『そうだな、こんな島があるとは思わなかった』『移民募集で明らかになったフロンティアか』



 男が三人か。


 一人目、太っちょの剣士っぽい。

 二人目、痩せ型の宣教師かな。

 三人目、魔法使いかな?



 見た目は悪いけど、それなりのレベルはありそうな相手だ。下手に飛び出るとやられるかもしれない。


 だが、これ以上の進入を許すこともできない。



『なあ、この島を俺たちのものにしようぜ!』『いいねえ、先住人がいるっぽいけど……まあ、男なら殺して女は生かして嫁にすればいいんじゃね』『そういえば、さっき洞窟の方で女を見かけた気がする。とびっきりな美人ばかりだった』



 ルドミラたちの事だ!

 くそ、このままでは襲われるのも時間の問題というわけか。それだけは絶対にさせない。


 飛び出ようと思ったその時、背後に気配を感じた。



「きゃ!!」

「あ、兄上!!」



 振り向くと、スコルとハヴァマールが人質に取られてしまっていた。しまった、四人目・・・がいたのかよ。



「へっへへ。こういう時は狙われやすいからな、四人目を見張りにするんだぜ」

「くそっ!」



 さっきの三人もこちらに気づいてやってきた。



「なにがあった、ブロー」「ん? ガキじゃないか。お、でも女の子もいるじゃん」「おいおい、エルフと銀髪の女かぁ! こりゃいい」



「スコルとハヴァマールに触れるんじゃねええええッ!!!」



 ゲイルチュールを投げ飛ばし、四人目の男にヒットさせた。



「――へっ、こんなモン! って、重ぉぉぉおおお!!」



 男はゲイルチュールの柄を掴もうとしたが、一緒に吹き飛んでいった。そりゃそうだ、その武器の重量は3000もあるんだぞ。

 通常のアイテムが『1』なので、あの武器がいかに重いか分かる。普通の冒険者ではまず持てない。



 スコルとハヴァマールを救出したが、三人に囲まれた。



「小僧!! よくも、ブローを!」「てめぇは何者だ!」「このガキを殺して女を奪うしかねぇよな!」



「俺のはこの島の主だ! 勝手な真似は許さん」



 武器を拾っている暇はない。

 ならば『無人島開発スキル』を行使する。

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