豪華な料理と怪しい獣人の男

 食事へ向かうと、別のテーブルに沢山の料理が並べられていた。客たちは、そこから料理をお皿に移して運んでいるようだった。なんだか変わったレストランだ。


「ラスティさん、好きな料理を選んでいいみたいですよ。食べ放題なんですって」

「マジか。凄い種類だぞ。バスタードラゴンのステーキとかデビルクラーケンの刺身。希少鳥モンスターのウコッケイの焼き卵とかすげぇ豪華だ」


 他にも高級フルーツとかデザートがズラリ。これ、全部好きに取っていいのか。



「これはバイキングというのですよ、ラスティ様」

「へえ、知らなかったな。これも料金に含まれているんだ?」

「はい、なのでお腹いっぱい食べていいんです!」

「おぉっ!」



 お皿を手に取り、さっそく料理をトングで取っていく。肉も野菜もあれもこれもお皿に盛りつけていく。


 必要な分だけ取り終え、空いているテーブル席へ座った。スコルとストレルカも好きな料理を選んで持ってきた。



「スコルの方は……へぇ、なんだかフルーツとデザートが多いな」

「異国の国でしか採れない高級オレンジ、ボロディン産のピーチ、帝国のとある伯爵家が作ったラズベリー、あとこの宝石のようなシャイニングマスカット!」


 マロンとかアイスクリームもあるし、なんだか色彩豊かだな。美味そう。エルフって、フルーツ系が好きなのかな。そういえば、島ではよくラズベリーを食っていたな。まあ、あれは甘酸っぱくて美味いんだけどね。栄養価も高いし、なんだったら回復力もある。


 うん、健康的でいいな。


「ストレルカの方は、ステーキと野菜だけか」

「は、はい。御存知の通り、わたくしは小食なんです。ほら、水属性ですし」


「水属性が何か関係あったっけ」


「ええ、水分が多いんです、わたくし。……なので、少しダイエットをしておかないと太っていく一方で、うう」


 乙女の悩みだな。これは、あまり突っ込んでいい話ではなさそうだな。



「よし、乾杯くらいはしようか」



 グラスにはワインではなく――グレープジュースを注いでおいた。さすがに酔うわけにはいかない。ストレルカは酔わないけど、スコルが大暴走するからな。過去、一度だけ酷い目に遭った。もうあれは勘弁だ!



「「「かんぱいっ!!!」」」



 グレープジュースを飲み、喉を潤す。ただのジュースだけど美味い。この一杯の為に生きている~! ジュースだけどっ。


 俺は大好きな卵焼きを食べまくった。これは、止められない、やめられない。美味すぎる食事を進め――和気藹々わきあいあいとした空気が流れていく。



 * * *



 食事を終え、部屋へ戻ろうと廊下歩いていた帰りだった。奥の方から俺を見つめる獣人いた。あれはウルフ系か。背は高く、筋肉質。よく鍛えられているな。


 そいつは、俺の方へ歩み寄ってくるとにらみつけてきた。


「なんだ、お前」

「ワシは、神聖王国ガブリエルからやって来た『ドム』ってモンだ。てめぇがラスティか!」


「だったらなんだ」


「死ねえええええええッ!!」



 いきなり噛みついてこようとする獣人のドム。って、コイツはいきなり! もちろん、俺はゲイルチュールで応戦。防御した。


 鋭い牙をゲイルチュールで受け止めているが、凄い力だ。


「ラスティさん!!」

「ラスティ様……」


「スコル、ストレルカはそこにいてくれ。で、ドムだっけ……お前、俺を殺しに来たのか」


 牙を受け止めた状態で俺は訊ねた。



「そうだとも、あるお方に依頼されて貴様を殺しにきた。それが取引の条件だったからなァ!!」



 今度は鋭い爪が飛んでくる。

 コイツ!!


 そうか、恐らくこの獣人の男は帝国と取引をしたな。そうでなければ俺を殺すなんて事態にはならない。だとすれば……クソ兄貴共の仕業か?


 なんにせよ、コイツから聞き出す必要がありそうだな。

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