どう思っているの?

 食事を終えると、無駄に広いリビングで皆とくつろぐのが日課になっていた。俺は、今日の汗を流すために風呂へ行っていたので途中参加という形になった。


 リビングに入ろうとすると、スコルとハヴァマールの会話が聞こえた。どうやら、二人きりらしい。ちょっと珍しいな。


 アルフレッドもエドゥも自室へ戻ったのか。まあ強制参加ではないし、なんとなくダラ~とする時間なので構わないんだが。とりあえず、リビングへ入ろうとするとスコルの悩ましそうな声が響いた。



「最近、服がきつくて……特に胸の辺りが……」

「なんだ、スコルのおっぱいはまだ成長期なのか」



 ブッ~~~~~~!!


 二人ともなんの話をしているんだ!!


 こ、これが女子同士の会話ってヤツなのか。……ヤバイ、とんでもないタイミングで来てしまったぞ。このまま俺も自室へ戻ろうかな? いや、だけどスコルとハヴァマールが仲良く喋っているシーンも貴重だ。


 俺はなんとなく聞き耳を立ててみる事にした。



「そうなんですか? そう言われると重いんですよね。肩も凝るし……大変です」



 スコルは、自身の胸に両手で触れて深い溜息をつく。なんだか自慢にも聞こえてしまうが――事実、スコルの胸は豊満だ。形も大きさも芸術的……って、こんな覗き見して、何をまじまじ観察しているんだ俺は!



「ぐぬぬ……」



 そこそこのハヴァマールは、若干だが唇をんでいた。気にしていたのか。いや、ハヴァマールも普通にはあると思うけど――って、だから、俺は何を分析してるんだ! アホか!


 もういい、正々堂々と正面から「戻ったぞー!」と現れて会話に参加してやる。と、俺は意気込んでリビングに踏み入れようとしたのだが――



「ところで、ハヴァマールさん」

「な、なんだ。今から恋バナでもしようかという表情だな」

「その通りです! ハヴァマールさんは、ラスティさんの事をどう思っているんですか?」


 スコルは真剣マジな表情をハヴァマールに向けた。おいおい、そんな話をされたら余計にリビングに入れないじゃないか。……俺は足を止めた。てか、俺の話かよ。



「ど、どうって……兄上は、義理の兄だよ。だから、ぶっちゃけ恋人にしても問題ないわけだな。なんだったら、愛人でもいいな」


「だ、だめですっ!」

「だめ? なぜだ。兄上にも選ぶ権利がある。当然、この余にもな」


「……うぅ」



 反論できず言葉に詰まるスコルは、やや涙目になる。何がなんだか。



「では、逆に聞こう。スコルは、兄上が好きなのか?」



 そうハヴァマールに問われ、スコルは顔を真っ赤に染め上げていた。うつむき、煙さえ出していた。なんかスゴイ事になっとる!



「………………(ぷしゅぅ)」


「図星か。分かりやすいな。

 兄上のどこがいいんだか。あのカッコいい容姿か? 確かに兄上の外見は常軌を逸しているな。いわゆる眉目秀麗イケメンの部類。この余ですら、たまにドキドキしてしまうよ」



 そうなのか。ハヴァマールはいつも冷静に見えるけどなぁ。でも、顔を褒められるのは悪い気はしないけど、あんまり気にした事はないな。



「顔とか関係ないんです。ラスティさんは、その……優しいし、わたしを守ってくれるし、たまに“ぎゅっ”と抱きしめてくれるから、もう幸せ過ぎて……頭がどうかなっちゃいそうなんです」


「ほー、スコルは顔よりも性格重視っと。というか、すっかり惚気のろけとるな」


「それに、あの美味しそうな鎖骨のラインですよ! わたし、ああいう綺麗な鎖骨をしている方が特にタイプなんですっ。それにそれに、わたしの事をいやらしい目で見ないし、ボロディンだとそういう男性が多くて嫌だったんですよ~」


 あわわ……。スコルの勢いが止まらない。聞き手のハヴァマールも茫然ぼうぜんとしていた。しばらく会話は続きそうだな。


 俺はこっそり自室へ戻った。

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