勇者の手紙
夜になり、俺は庭でワークテーブルに向かって調理器具やら椅子、テーブルなどを作っていた。集中していると空から何かが羽ばたいて――って、なんぞぉ!?
「うわぁ、鳥ぃ?」
目の前には『フクロウ』がいた。
不思議な鳴き声を発し、俺を視認すると目をピカッと光らせた。……うお、まぶしい!! 無駄にまぶしすぎるだろ。目が潰れるわッ。
『ホ~ホゥ!』
「ほ~ほぅ、じゃねぇよ。なんだよ、お前。俺の作業の邪魔するんじゃ……ん?」
コイツ、足に何か括りつけてられているな。
気になって俺はその結ばれた紙(?)を解く。それは『手紙』だった。しかも、宛名が『ラスティ・ヴァーミリオン』と俺の名が書かれていた。
えっ、俺ぇ?
なぜ俺の名前が手紙に書かれているんだ。てか、誰が送った?
差出人は――
『ホホホ、ホホー!』
フクロウが“読みやがれ”と言わんばかりに翼で威嚇っていうか、促してきた。このフクロウ、ただの鳥じゃないな。
「これを読めってか?」
『ソウダ、ヨメ』
「って、喋れるんかーい!!」
『ホンノ、スコシダガナ。ハヤクヨメ、ニンゲン』
なんか偉そうだな。
まあ、喋る鳥くらいいるか。
一部の鳥は頭が良いし、声も発する。
「まあいい……どれどれ」
手紙を確認する。目を通していくと、書かれている内容に俺は驚いた。こ……これは『ドヴォルザーク帝国』の内情か。しかも国だけじゃない……城での出来事を事細かく。どうして、こんな内容を。
◆◆◆◇◇◇
「騎士団長ルドミラ」
ドヴォルザーク帝国の情勢は急変し、未知の病気が蔓延した。今や、国は対応に追われて大混乱。動ける者が日に日に減り、経済も衰退していく一方だった。民からの不満も多く募っている。このままでは帝国は……。
「おい、騎士団長ルドミラ!!」
国を憂い、長考していると目の前で第二皇子のブラームスが自分を無視するなと
第三皇子ラスティ・ヴァーミリオン様が追放され、三日目。唐突な経済衰退に焦りを隠せない帝室は、早くもラスティを捜索せよと気を変えた。そんな命令が私に下る。
皇帝陛下がラスティ様を強制追放テレポートをしたという砂漠へ向かったが、そこに第三皇子の姿はなかった。あれから三日も経ったのだ。既にどこか別の街へ辿りつたか、それとも諦めて
しかし、死の痕跡もなければ、そのような気配もなかった。なら、どこへ行った……?
――ある日、仲間の『テオドール』がラスティ様の居場所を突き止めた。テオドールはテイムマスター。だから、モンスター操る異能があった。テオドールのペットにより、ラスティ様の居場所を特定完了。
どうやら、帝国領海外の『無人島』で存命だと判明した。私はこの事実を直ぐに皇帝陛下に報告。陛下は、まず聖騎士ヨハネスに命令を下した。
だが、行方不明となった。彼の所在は今も分からないままだ。
次に、陛下は私に船を出し、向かうように命令したが――第一皇子のワーグナー様が名乗り出た。彼が副団長のエドゥアルド連れて行くと言ったのだ。
最近、第一皇子とエドゥは婚約を交わしたと聞いていた。本人は“たまには激熱な恋もしてみたいじゃ~ん★”とか言って、第一皇子と第三皇子の因縁に便乗し、勝った方の嫁となるとワーグナー様を煽りまくっていた。
……やれやれ、エドゥめ。この数百年、まともな恋をしていないからと、調子に乗りすぎだ。
後日、戦艦が帝国を出て行った。しかし、半日もせずに帰還した。中にはエドゥの姿はなく、ボロボロの雑巾と成り果てたワーグナー様が単独で戻ってきた。第一皇子は、エドゥのテレポートで飛ばされ、帝国の噴水の中に落ちていた。
それを見た陛下は――
「ワーグナー、なんて有様だ……酷い顔をしているぞ」
変わり果てた息子に対し、陛下は怪訝な顔を向けていた。自信を喪失し、別人のようだった。島でいったい、何があった。というか、エドゥは何故戻っていない?
「……お、親父。すまねえ、あのカスラスティに負けちまった……。思い出しただけで……くそおおおおおおお、悔しい!! 悔しい!! あの雑魚になんで俺が敗北しなければならない!! 俺は『氷帝』だぞ!!!」
「それで、副団長のエドゥアルドはどうした。婚約したのではなかったのか」
「知らねえよ! あいつ、俺からラスティに乗り換えやがったんだ!」
その情けない光景が衛兵には
「おい、お前……今笑ったな?」
「い、いえ、とんでもございません。私はただ……」
「俺を笑うんじゃねえええええッ!!」
とうとうブチギレたワーグナー様は、衛兵五人を一斉に凍結状態にした。これでは、完全な八つ当たりだ。
こんな状態では、帝国はどんどん悪くなっていく一方だ。最近では、
だが、私は戦争反対だ。
この帝国の騎士団長ではあるけれど、それは
私は、手紙を書く事にした。
無人島にいるラスティ様とエドゥアルドに向けて。きっと、この手紙を読んで驚いていられる頃だろう。私は近々、そちらへ向かう。
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『――――勇者ルドミラより』
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