エルフの国へ

「――おかえりなさいませ、ラスティ様」

「あ、ああ……ただいま、アルフレッド」


 アルフレッドは、俺とスコルを交互に身て困惑する。それもそのはずだ。スコルがピッタリくっ付いて離れないからだ。よっぽど寂しかったらしい。


 少し離れた場所でハヴァマールも微妙な顔を浮かべていた。



「やれやれ、兄上。やはり、スコルを連れて行くべきだったのではないか」

「そうだな。次回は倒れても目が覚めるまで待とうと思うよ」



 ここまで不安がらせてしまうとは思わなかった。スコルを見ると、目尻にはわずかに涙。こう、子供のような視線を向けられると俺は弱い……。


「本当にごめん、スコル」

「い、いえ……ちょっと寂しかっただけです。わたしの方こそ我儘わがままでごめんなさい」



 無理している顔ー!

 そんな切なそうにされるとなぁ。

 ここは何か話題を……そうだ!



「そ、そういえば、ストレルカが船を出してくれる事になった。これでエルフの国『ボロディン』へ行けるぞ!」


「えっ、決まったんですね!?」

「ああ、交渉成立だ。近々出発しようと思う」



 スコルは感激して、もっと密着してきた。小さな頭を俺の胸に寄せて……くぅぅっ! 耐えろ俺ぇ!


 既にドキドキしているけど、もっとドキドキしてきた。と、とにかくスコルの機嫌が良くなって良かった。



「ついにか、兄上。ボロディンへ行くのだな」

「目的は以前にも言った通り、農業の為だ」

「分かった。余もついていこうかな」

「もちろんだ。留守番はアルフレッドに頼む。構わないな」



 胸に手を当て、深々と頭を下げるアルフレッドは「お任せくだされ」と自信有り気に言った。



 ――となると、あとはエドゥか。


 視線を向けるとエドゥは淡白な表情で首を横に振った。



「……いえ、自分は留守番にしておこうと思います」

「何故だ。エドゥが居てくれた方が助かるけどな」

「ちょっとこの島をマッピングといいますか――見て回りたいのです。特にダンジョンを改めて確認したのですよ。あの『エインヘリャル』の紋様も気になりますし」


「調査したいって事か」

「はい。その結果もちゃんと報告しますので」



 島のマッピングか。つまり、マップを作るって事だ。そんな風に考えた事もなかった。確かに大賢者であるエドゥに回って貰う方がいいのかも。それに、アルフレッドひとりでは心配だ。二手に別れよう。


「分かった。エドゥを信じるよ」

「…………ラスティ様。……はい」


 エドゥは、妙に嬉しそうに頷く。

 まあ、本人が納得しているのならいいか。



「よし、準備もあるから二日後には出発する。スコル、ハヴァマールよろしく頼む」


「はいっ、ラスティさん。楽しい旅にしましょうねっ」

「たまには島以外へ行くのもいいだろう。兄上に付き合う」


 二人ともノリノリだった。

 これでやっと大まかな方針が決まった。二日後、ストレルカの船に乗り、エルフの国『ボロディン』へ向かう――!

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