改造されたダンジョン

 洞窟内に入り、奥まで来た。

 例のダンジョンへの出入り口である『階段』を見つけた。その場所を不思議そうに見つめるエドゥアルド。なにか観察しているようだな。


「なぜ首を傾げているんだ。このダンジョンは、大賢者であるエドゥアルドが作ったものだろう?」


 大賢者にはそういう、彼女風に言えば“異能”があるという。しかし、この反応は微妙だぞ。


「その通りです。これは“ランダムダンジョン”であり、わたしが作成したもの。ですが、少々仕様が変わっているようですね」

「そうなのか。どこに違和感がある?」


「先程、ナックルコボルトが地上に出ておりましたね。もしかして、以前にも?」



 そうだ、グリンブルスティやグリューンゴブリン、エクスキューショナーが該当する。ヤツ等は、洞窟内から出現し俺達を襲ってきた。でも、それは自然的な事だと思っていたが、どうやら少し違うようだな。俺は、その過去の出来事をエドゥアルドに伝えた。


「――で、スライムとも戦った」

「なるほど、このダンジョンから抜け出したモンスターが島に棲みついてしまったようですね。それと稀にモンスターが他の大陸にも流れ着いたのでしょう」


「そんな事が?」

「泳げるモンスターも多数存在しますし、飛翔系なら余裕です」



 鳥か竜系だろうな。俺は今のところ遭遇した事はないけど、ダンジョン内には沢山いるんだろう。そして、そんなモンスター達は世界で跋扈ばっこしている……と。



「ということは、世界中のモンスター被害の原因って賢者なのか?」



 訊ねると、エドゥアルドは首を横に振って否定した。どうやら違うらしい。



「それが違和感の正体です。通常、大賢者の作るダンジョンは、モンスターの方は出入り不可能なのです。だから特殊な結界に阻まれ、外界へ出られるはずがない……」


「でも、出てるしな」


「恐らくですが、誰かが“改造”したのかもしれません。それを証拠に不老不死・・・・の象徴である“エインヘリャル”のマークが刻まれております」



 エインヘリャル……だと。それは以前、ハヴァマールが教えてくれたヤツか。聖魔伝説の争乱となったキッカケ。アイツが魔王にされてしまった原因か。


 階段の前にはよく見ると【Ψ】のマークが刻まれていた。なんだこれ……三叉槍さんさそう


「これは……」

「それこそ、エインヘリャルの紋様ですね。わたしの下腹部にも同じものがあります」

「か、下腹部?」


 つい、エドゥアルドのへその辺りを凝視してしま――って、そこぉ!? それって……まさか、聞いた事があるけど“淫紋いんもん”ってヤツでは。エロ本の知識だけど! 俺は健全な男子、それくらいは読んでいたさ。でも、まさかこんな所でそんな無駄知識トリビアが役立つとはな。


 いやだけど、やっぱりエドゥアルドは『エインヘリャル』を持っていたんだ。しかも下腹部に……。不老不死のアイテム――これは本物かも。


 しかし、疑念が尽きない。

 エインヘリャルは、アイテムであるとハヴァマールは言っていた気がする。なのに、このマークは?


「教えてくれ、エドゥアルド。この階段の前にある紋様はなんだ? 君はなぜ、同じマークを下腹部に刻んでいるんだ?」


 どうしても知りたかった俺は、エドゥアルドに問い詰める。でも、なるべく怖がらせないように丁寧に聞いた。すると、エドゥアルドは服を脱ぎだし――てぇッ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る