コボルトをぶっ倒せ

 ストレルカと握手を固く交わし、交渉は成立した。要請さえあれば、いつでも出発してくれる約束をしてくれて、俺は大満足。ストレルカが良い子で助かった。


「ストレルカ、今度なにかお礼をするね」

「礼など不要です。わたくしにとって、ラスティ様と過ごせる時間にこそに価値があるのですから、これからも贔屓ひいきにして下さいまし」



 頬を紅潮させ、モジモジとしながらストレルカは言った。上目遣いがたまらなく可愛い。ここまで言われたからには、俺もストレルカを大切にしたい。



「じゃあ、俺とエドゥアルドは、洞窟ダンジョンへ行ってくる」

「洞窟、ですか」


「うん、ちょっと力量を試すっていうか、ダンジョンの攻略もしてみようかなと」

「そうでしたか! では、わたくしも……」


「いや、そんなに長居するつもりはないし、ストレルカはまた今度にしよう」

「分かりました。少し残念ですが、ラスティ様がそうおっしゃるのなら、無理な同行は控えておきますね」



 素直で良い子!


 正直、またあのオーク群団とエンカウントしたら守れるか分からないし。いや、今なら大丈夫か? まあ、まずは自分の力がどれほど通用するか見極めてからだな。リスクは出来るだけ減らしてから挑みたい。物事は常に慎重に――と、アルフレッドの言葉を思い出したからな。



「じゃあ、また会おう。今日はありがとう、ストレルカ」

「はい、ラスティ様。家にもお邪魔させて頂きますね」

「いつでも来てよ、歓迎する」



 エドゥアルドもストレルカと挨拶を交わし、船を降りた。さて、これで気兼ねなく洞窟ダンジョンの攻略を進められる。ついでに材料も溜めていこう。



 ◆



 森を歩いていると、見た事もないモンスターに初遭遇した。


「あれはコボルトか?」

「そうですね。ですが、上位のコボルトのようです。調べてみましょう」



 モンスターに対し、手をかざすエドゥアルド。どうやら、何かのスキルを発動したようで、コボルトの詳細が判明した。これは、ハヴァマールと一緒の『モンスター分析スキル』か。



 [ナックルコボルト]

 [属性:無]

 [種族:動物]

 [詳細]

  両手にナックルダスターを装備しているコボルト。通常のコボルトとは異なり、拳で物理攻撃をしてくる。かなりの攻撃力を誇るので注意が必要だ。



「ナックルコボルトぉ?」

「らしいですね、ラスティ様。ぷち強いコボルトと思って下さい。――あっ、こちらに気づかれたようですし、どうされますか」

「ぷ、ぷち強いって……もちろん、襲ってくる以上は倒すさ!」



 アイテムボックスから、ゲイルチュールを取り出し俺は武器を構えた。ナックルコボルトは、どんどん接近してくる。しかも、三体も。洞窟ダンジョンから出てきたか。なら、治安維持の為にも倒すっきゃないよな!



 接近してくるナックルコボルトは、俺に拳を向けた。それを回避し、ゲイルチュールで一体目を叩く。“穂先ピック”が見事にクリーンヒット。コボルトを玉砕した。



『――ゥガアァァ!』



 残り二体。楽勝だなと油断していると、一体が凄まじいスピードで拳を放ってきた。――なッ、拳が飛んできた、だとぉ!?



「ラスティ様、今のは『カイザーナックル』という物理攻撃です。かわして下さい」



 エドゥアルドの言う通り、俺は姿勢を低くして避けた。あっぶねー、もうちょいでダメージを受けるところだった。

 ええい、もう面倒だ、こちらも反撃に出る。


 風属性を武器にまとわせ、ゲイルチュールを振り上げた。




「サンダーブレイク!!」




 地面をえぐるように雷撃が駆け抜けていく。魔法攻撃であるサンダーブレイクは、瞬間でナックルコボルトをビリビリにする。激しい稲妻が敵の全身を駆け巡り、丸焦げにした。


 やがて、ナックルコボルトは爆発四散。ドロップアイテムの『獣の毛×3』を入手。これは、服などに使えるようだな。この調子で先へ進んでいく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る