聖槍・グングニル

 アルフレッドから貰っておいた『たいまつ』を灯す。これで視界は良好。以前は落ち着いて洞窟内部を分析出来なかったけど、今はボスモンスターもいないし安心して調査できた。


 どうやら、きちんと『洞窟』のようで奥が深いようだった。グリンブルスティは、巣というより、ただ寝床にしていただけのようだな。



「ここで聞いておきたい。ハヴァマール、他にスキルは何が使えるんだ?」

「家事スキルは『裁縫』だな。攻撃スキル『槍』とか」

「それだ! 槍、その槍とはなんだ」


「仕方ない、お披露目といこうか」


 右手を掲げ、ハヴァマールは『槍』を召喚した。……って、召喚できるのかよ。しかも、なんだこの神々しい槍。


 白く光り、たいまつ不要の光量を放っていた。これなら、たいまつ要らないじゃん!



「これは『聖槍・グングニル』だ。余の魔力でみ、具現化する神器。世界では『魔槍』と蔑まれているがな」



 はぁと深い溜息を吐く妹。

 まてまて、どこが『魔槍』だよ。

 めっちゃピカピカ光ってるじゃん。


 だけど、これは凄い光だ。黄金に輝き、莫大なエネルギーを稲妻のようにまとわせている。



「それ、威力凄そうだな。詳細は見せてくれないのか」

「こればかりは見せられない。でも、何れは開示しよう」

「約束だぞ」

「うん」



 うんって……なんでそこだけ妙に素直にうなずくんだ。まあでも、いつかは明かしてくれると言うんだ。無理に問い詰める必要はないだろう。


 そうこうしていると、洞窟内部から怪しい気配が向かって来ていた。これは、モンスターだな。



「ハヴァマール、厳戒態勢だ」

「了解。兄上の指示に従う」



 俺は、ゲイルチュールを握る。

 闇の奥を睨み警戒する。

 さて……なにが出てくる?



『――ギィィィィィッ!!』



 うわッ、なんだこの金切り音。すげぇ鳴き声……やべぇモンスターの臭いがプンプンするぞ。またボスモンスターか?


 構えていると、奥から赤い目をした小型モンスターが出て来た。小人……? 子供のようなサイズ感で、だけど大きな剣らしき武器を持っていた。


「なんか強そうだぞ」

「兄上、あれは高難易度ダンジョンにしか生息しない『エクスキューショナー』というデス系モンスターだ。危険だぞ」


「デ、デス系!? なんだそれは!」


「恐らく、この洞窟のどこかがダンジョンに繋がっているんだ。その奥からヤツは現れたと推測して良い」



 つまりなんだ、迷い込んで出て来ちゃったのか。強敵モンスターが。やべぇだろ!! くそ、倒せるのかよ。


 心配していると、大きな剣を持つエクスキューショナーが向かってきた。早い……! 足の速さは尋常ではない。風のような速さで向かってくると、あの大剣を振るってきた。こ、これは……!


「ぐッ!! 重い!!」



 ゲイルチュールで受け止めるが、なんて重さ。手がビリビリしびれて今にも持っていかれそうだ。



「兄上!!」

「心配するな、ハヴァマール。なんとか防御は可能だ。だけど、敵の攻撃が重すぎる! あのバスタードソードのような大剣のせいだ」


「あの剣も『エクスキューショナー』だよ、兄上」

「なんだと?」


 武器のエクスキューショナーを握るエクスキューショナー!? なんてモンスターだよ。とにかく、なんとか撃破しないとな。

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