【 エピローグ: 忘れさせてよ、涙味ポップコーン 】


 タカヒロ君は、その後、無言のまま学校へと出かけていった。


 私一人、家に残して……。


 恋が成就すると思っていた。

 でも、彼は私の元から去って行った。


 これは必然だったのだろうか。


 涙が止まらない……。

 こんなにも涙ってしょっぱいんだと、今更ながらに思う。


 そのまま、床に崩れ落ち、顔を伏せて声を出して泣いた……。

 私は、決して選択してはいけないことをしたんだと思う。


 だから……


 さようなら……。



 タカヒロ君……。




 ……。


「美玖、俺、お前のことが好きだ。俺と付き合ってくれないか」


「えっ……? 何? タカヒロ君……?」


 目の前には、なぜか彼の姿が……。


(あれっ? 私、彼の家にいたのに、どうして学校の中庭にいるの……?)


「俺、やっぱり、美玖じゃなきゃダメだ。俺、美玖のことが大好きなんだ! 俺じゃダメかな……?」


(そんな……、どういうことなの……? 私、彼に告白されてる……。どうして……?)


「俺じゃダメかな……?」


「ううん、ダメじゃないよ……。ダメなんて絶対ない……。私も、私もタカヒロ君のことがずっとずっと、大好きだったよ……」


 どうしてだか、私は彼に告白されていた。

 彼の家にいたはずなのに……。

 静香おばさんだったはずなのに……。



 彼はやさしく私のことを抱き寄せてくれた。

 いつもと違う。乱暴じゃなく、とてもやさしく。


 そして、強く強く抱きしめてくれる。


「ありがとう。でも、お前、少し胸大きくなったんじゃねぇ?」

「ええーっ、そうかな?」


 私は涙目になりながら、クスッと笑い、彼にそう答えた。


 気付くと、胸ポケットに何やら紙が入っている。


「あれっ? 何だろう……?」


 その胸ポケットに入っている紙は、あの取り扱い説明書。

 取り出して開いてみると、裏にこう書かれている。



『最後の1つは、私が食べました。涙味のポップコーン、美味しかったです。ふたり幸せになってね。(静香)』



「おばさん、1つ隠し持ってたんだ……」



 何だか、今日の涙は一段と



 しょっぱい味がした……。




(了)



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忘れさせてよ、涙味ポップコーン 星野 未来@miraii♪ @Hoshino_Miraii

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