【 涙ポロリ 】


 気付くと、タカヒロ君とテーブルを挟んで、朝食を取っていた。

 いつもの朝と同じ……。


 いや、どこか彼の様子が変だ。


 急に、食事の手が止まる。


「母さん、話がある……」

「えっ? 何? 貴大……」


 何か下を向き、少し暗い表情。


「実は……、もう、母さんとは……」

「えっ……?」


「もう、母さんとは普通の親子でいたいんだ」

「えっ? 急にどうしたの……?」


「俺、実は……、好きな子ができた」

「えっ……? す、好きな子……?」


「ああ、だからもう、母さんとは普通の親子の関係に戻りたい……」


 衝撃的な言葉だった……。


 あんなに愛し合っていたと思っていたのに、急にタカヒロ君に好きな子ができたなんて……。


 何のために、最後の涙味のポップコーンを食べたと思っているの……。


「そ、そんな……」


「母さん、ごめんよ。大好きになった子ができたんだ。今日、俺、その子に告白するつもりなんだ。だから、もう母さんとは昔のように仲のいい親子に戻りたいんだ。ごめん……」


 ショックだった。

 涙味のポップコーンを食べれば、ずっと、ずっと一生、彼と恋をしていられると思っていたのに……。


 私の瞳からは、悲しみ色の涙がポトリ、ポトリと手の甲に零れていた……。



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