【 残り1つ 】


 それからまもなく、あのポップコーンが残り1つとなっていた……。


(もう、これで最後だ……)


 私は迷っていた。

 何を?


 あの注意事項の言葉。


・ポップコーンに決して涙を零さないこと。それを食べると、二度と元に戻らなくなるので、注意すること。


 そう、私は最後の1つに涙を零して食べるかどうかを迷っていたんだ。


 そうすれば、彼とこれからもずっと恋することができる……。

 でも、それは同時に、私が静香おばさんのままになるということ……。


 これをすれば、この先もう二度と美玖には戻れない……。


 でも、彼のことを愛している。

 ずっとこれからも、その思いは変わらない。

 そして、彼も私を愛してくれる。


 彼と離れたくない。

 ずっと一緒に暮らしたい。


 私が静香おばさんになれば、これからもずっと一緒に愛し合える……。



 ――どれくらい悩んだだろう……。

 気付けばもう朝になっていた。


 私の気持ちはもう決まった。


 私は……



 静香おばさんになる……。



 頬を伝う涙が、私の持っていた最後のポップコーンの上にポトリと零れ落ちた……。



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