【 ペチャパイ 】


「よう、ペチャパイ美玖」

「バカタレ! ペチャパイちゃうわ!」


「美玖は、ペチャパイだろ?」

「ペチャパイ、ペチャパイ言うな! ちょっとずつ大きくなっとるわ!」


 一緒に図書館へ行くというのに、彼は朝からこんな調子。


「じゃあ、俺の母さんみたいに大きくなってみろ」

「静香おばさんは、普通の人より特別大きいのよ! それと比べるな!」


 私はプクッと頬を膨らませ、唇をとがらせた。


(絶対に、タカヒロ君を振り向かせてみせる!)


 そう、心に誓った。



 ――夕方まで、彼と一緒に図書館にいたが、結局、席はソーシャルディスタンスでずっと離れたままだった。

 帰りも一緒に帰ったが、またペチャパイの話だ……。


 彼と別れて、それぞれの家へと戻った。


『パタン』

「はぁ~……」


 大好きなのに、どうしても素直に告白できない……。

 自分の部屋へ戻ると、机の上のポップコーンが目に留まる。


 このポップコーンでまた、タカヒロ君と恋をしたい……。

 そんな誘惑にかられる……。


「1回に3つまで食べていいんだよね。ということは、MAX3時間タカヒロ君と恋ができる……」


 誘惑に負けて、紙コップからポップコーンを3つ取り出して、手の平に乗せた。

 そして、それを勢い良く口の中へ。


「モグモグモグ……」


 すると、また意識が遠のいて行った……。



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