【 奪われる 】


 もうすぐ、私の唇は彼に奪われる……。


 もうすぐ……、


 奪われる……。


 奪われる……?


(あれっ? 全然、来ない……。何で……? キスをらしちゃうパターン……?)


 私は薄目を開けてみた……。


「えっ……? ここはどこ……? タカヒロ君は……?」


 完全に目を開けて、周りをキョロキョロと確認する。

 タカヒロ君は目の前から消えている。


 すると、そこは、


 見慣れた自分の部屋……。


「ああーーっ! 戻ってるーーっ!」


 何と、ポップコーンの効き目が切れて、1時間後の自分の部屋へ戻って来ていたのだ。


「もうせっかくいいところだったのにーーっ!」


 でも、あの占い師が言っていたように、このポップコーンには、恋を成就する力が確かにあるようだ。

 ただ……、


 ただ、ただ、ただ、ただ、タカヒロ君の恋のお相手は、実のお母さん『静香おばさん』だった……。


「タ、タカヒロ君は、マザコンだったぁーーっ!?」



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